『花燃ゆ』
まずは、このくだりを、「ゆっくり」そして「じっくり」と読んでいただければと思います・・・■ 人にはそれぞれに、相応しい春夏秋冬が・・・ 今日、私が死を覚悟して平穏な心境でいられるのは、春夏秋冬の四季の循環について悟ることがあるからである。 つまり、農事では春に種をまき、夏に稲を植え、秋に刈り取り、冬にそれを貯蔵する。 秋、冬になると、農民たちは、その年の労働による収穫を喜び、酒をつくり、甘酒をつくって、村々に歓声が満ち溢れる。 未だかつて、この収穫期を迎えて、その年の労働が終わったのを悲しむ者がいるのを、私は聞いたことがない。 私は、現在31歳。いまだ事を成就させることなく、死のうとしている。 例えれば、いまだ実らず収穫せぬままに似ているから、そういう意味では生を惜しむべきではないかもしれない。 だが、自分自身についていえば、私なりの花が咲き、実りを迎えたときなのだと思う。 そう考えると、必ずしも悲しむべきことではない。 なぜなら、人の寿命はそれぞれ違い、定まりがない。 農事は四季を巡って営まれるが、人の寿命はそのようなものではないのだ。 (つづく)