試用期間を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐ!
試用期間は、どれくらいの期間にしたらいい?
試用期間の長さに関して、法律上の明確な定めはありませんが労働者の適性を判断するために必要な期間として、判例では、「ブラザー工業事件 名古屋地裁昭和59年3月23日判決」において、合理的範囲を越えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、無効であるとされています。どれぐらいの期間であれば、公序良俗に反していないのか?労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行うことができるのか?という観点で試用期間の長さの妥当性が決まってきます。
一般的には、試用期間を3ヵ月以内で定めている会社が多く、就業規則で試用期間の延長を定めたとしても、もともとの試用期間と合わせて6ヵ月以内とするのが妥当なところで、1年を超えてくると公序良俗に反すると判断される可能性が高くなります。また、試用期間の延長については、該当労働者の同意を得ることとし、繰り返しの延長は認められておらず配慮が必要です。
試用期間中だから簡単に解雇できる?
試用期間中であれば、解雇が正当な理由であると判断される基準は正社員と比べると緩やかですが企業と労働者の労働契約は存在しており、企業側は雇用継続や本採用に向けた努力をしなければなりません。試用期間中は、解約権留保付労働契約に該当し、解約権が留保されている状態で企業側は、解雇する権利が残っていますが実際に解雇をする場合には、社会通念上、解雇に相当する「理由」が必要となります。
過去の判例においては、勤務態度が極めて悪い場合、正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返す場合、本人の履歴に重大な虚偽の事実があった場合、法律に違反する行為があった場合等の事例があります。
試用期間に解雇をする場合の注意
入社日から14日以内と14日以降では、解雇の手続きが変わり、労働基準法第20条と同法21条に定められている規定に従わなければなりません。21条では、試用期間開始から14日以内であれば社会通念上、解雇に相当する理由がある場合は解雇予告なしに解雇が可能であり、解雇予告手当を支払う必要はないと定められています。しかし、逆に言うと14日を超えると企業側は、通常解雇と同様の手続きを行わなければなりません。20条では、労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に解雇予告をしなければならないと定めており、30日前の解雇予告をしなかった場合に解雇までの不足日数分の平均賃金の支払い義務(解雇予告手当)が発生します。
試用期間を設けることは、企業側にとっては雇用のミスマッチが生じるリスクを軽減し、トラブルを防ぐために有効です。自社の就業規則や労働契約書の中に試用期間、試用期間の延長、試用期間中の解雇等が明記されているか一度ご確認ください。