社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

仕事とプライベートで兼用するものは、どこまで経費にできる?

20.08.25
ビジネス【税務・会計】
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個人事業主の場合、事業にかかわる支出は経費として計上することができます。
ただし、仕事とプライベートで共用しているものにかかわる支出は、そのすべてを経費計上できるわけではありません。
代表的なのが、自宅を事務所としても使用している場合の家賃でしょう。
プライベートと一体化している支出に関しては、判断がむずかしいとされています。
今回はこのような支出に関する経費計上の考え方を解説していきます。
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事業用とプライベート用に分けづらい支出とは
 
個人にかかる税金の代表的なものに所得税があり、原則的には『所得(=収益-必要経費)』に所得税率をかけて算出します。
利益が少なければ税額も少なくなるため、一般的には計上できる経費が多いと利益が少なくなり節税に繋がります。

事業にかかわる支出の多くは、以下のように経費として計上することができます。

●給料賃金……従業員の給与や賃金など
●地代家賃……事務所や駐車場の賃料など
●消耗品費……事業に使用する文具やパソコン用品の購入費など(購入時の価格が10万円未満のもの)
●通信費……インターネットの接続料や携帯電話料金など
●広告宣伝費……Webサイトやチラシの制作料など

ただし、事業における支出と事業主のプライベートでの支出が一体化している場合は、必ずしも100%経費にできるわけではありません。
仕事とプライベートで共用するものの例としては、家賃や通信費、水道光熱費、事務用品やパソコン用品などの購入費、車のガソリン代、交際費など、さまざまな種類があります。
これらは、事業用とプライベート用の支出を分けて経費にする額を決める必要があります。
これを『家事按分』といいます。


事業に使用している割合を算出して計上する

たとえば、事業所と自宅が一体化している場合、その家賃については全てを経費にすることはできません。
この場合、家賃のうち事業に使用した分を計算して経費として計上します
自宅の半分を事業所として使っていれば家賃の50%を、4分の1を事業所として使っていれば家賃の25%を『地代家賃』として計上できるということになります。

そのためにも、可能な限り、自宅の中をプライベート用と事業所用の空間に分けておくことが望ましいといえます。
仕事相手を接客するための応接室を作ったら、そこは一切私生活では使用しないといったルールを作ったり、逆に自室には仕事を持ち込まないようにしたりなどの工夫をします。
そのうえで、実際に事業として使用している面積割合を計算すれば明解です。


プライベート用との区別がむずかしい場合

しかし、現実問題として、自宅をはっきりと事業用とプライベート用に分けることはむずかしいことも多いでしょう。
結局のところ、経費として計上する割合は事業主自身の判断になってきます。
先ほどの『地代家賃』であれば、一般的には家賃のうち50~60%は経費として認められるといわれていますが、ケースバイケースであり、必ずとはいえません。

大事なのは、税務調査で指摘された際に、共用している部分をどのように按分しているのか、数字的な『根拠』をもとにしっかりと説明できるようにしておくことです。
一般的には、自宅の面積のうち業務に使用している比率や使用時間などをもとに、根拠となる数字を割り出すことが多いようです。

また、電話代なども、プライベートと事業とで分けづらいものの一つです。
事業に使っている電話の電話代などは『通信費』として経費計上できますが、一人で事業を行っている場合などは、プライベートの携帯電話が仕事用を兼ねることが多々あります。
経費の根拠を示すという観点からは、仕事用と個人用は分けたいところですが、二つ持つことで支出が増えてしまっては、意味がありません。

事業とプライベートの電話が同じであれば、通信記録から、それぞれの通話時間を割り出し、その比率をもとにして、全体の何割を『通信費』として計上できるかを計算しておくとよいでしょう。

いずれにせよ、プライベートでも使用しているにもかかわらず、家賃や通信費などを100%経費計上することは認められません。
税務調査で指摘された場合に、「自宅をこのくらいの割合で事業に使用しているので、家賃の何割は経費計上している」と説明できるように、まずは実態を把握し、根拠となる数字を用意することが大切です。
それぞれの支出について、明確に事業用とプライベート用に分けられるものは分けて、分けるのが困難なものは工夫して割合を算出し、数字で根拠を示せるようにしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。