社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

長時間労働の是正に対して、企業側がすべきこととは?

18.11.13
ビジネス【労働法】
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2018年6月29日、参院本会議で『働き方改革関連法案』が可決・成立。2019年4月1日より順次施行されます。 
この法案は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法の8つの労働法の改正をまとめた総称のことで、主に“高度プロフェッショナル制度(※1)”の創設、“残業時間の上限規制”の導入、“同一労働同一賃金”の3つが柱とされています。 
ここでは、多くの企業やそこで働く人に影響を与えるであろう“残業時間の上限規制”と“同一労働同一賃金”に軸を置きながら、雇用主側が行うべき対策をご紹介します。
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“長時間労働の是正”は企業にも従業員にも厳しい!?

今回の法案で注目を集めていたのが“長時間労働の是正”です。月45時間、年360時間を原則とした時間外労働の上限規制が導入されました。
また、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、2~6カ月間の月平均80時間(休日労働含む)を限度にすることが明示されました。

上限規制を超過した場合には新たに罰則の対象になります。
行政指導や企業名公表、場合によっては刑事罰を受ける可能性もあります。
過労死事案が発生すると、企業の人材採用に影響を与えるほか、マスコミからの社会的非難、株主からの追及があることが予想され、企業にとって大きなリスクとなり得ます。

さらに企業としては、長時間労働の抑制に伴う従業員の時間外手当の減少にも配慮する必要があります。
時間外手当が減少すれば、それを見込んで生活設計をしていた従業員には大打撃です。
よって、従来の“労働時間の長さを基準とした賃金の支給”ではなく、“成果をもとにした賃金制度”にしたり、浮いた人件費を従業員に分配したりするなど、制度設計の構築が早急に必要となるでしょう。


労働生産性が認められる労働者は、是正の例外

長時間労働の抑制と生産性の向上を両立させるには、従業員が働きやすい環境を整えることが大切です。
昨今、ワークライフバランスが浸透し、在宅勤務をはじめとするテレワークや、裁量労働制が増えていますが、労働時間管理については、まだ明確な対応策は掲げられていません。
また、新たに創設された高度プロフェッショナル制度が適用となる方たちについても同様です。
今後の課題として、このような生産性を求められる労働者などの労働時間管理の整備が挙げられます。


社員の雇用条件を見直す必要性あり

働き方改革関連法案では、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を目的とした規制が行われるため、パートやアルバイトなどの非正規雇用についての対応も求められます。
たとえば、2013年4月1日に施行された改正労働契約法。では、本人が希望すれば同日以降開始された有期労働契約を、5年を超えて更新すると無期契約に転換します。
それにより、賃金等の待遇がアップすることが考えられます。
しかし、今般の同一労働同一賃金が施行されると、職務内容と人材活用の仕組み等が同一であれば、有期の非正規雇用者と無期契約社員との間で賃金に差を設けることができなくなりますので、見直しが必要になります。

同一労働同一賃金の検討においては、職務や職責の内容を明確にする必要があります。
今後は、長時間労働が抑制され、多様な労働力を活用することが大きな課題となります。
加えて、雇用形態の相違による賃金格差にも配慮しなければなりません。
従来の画一的な雇用契約ではなく、個別に契約を締結するケースの増加も予想されるので、これまで以上に柔軟な対応がとれるような体制を整えておきましょう。

※1 高度な専門知識(経営コンサルタントや証券アナリストなどを想定)をもつ高収入労働者(年収1,075万円以上を想定)を対象に、労働時間管理の対象からはずすという制度