社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

社内不倫が理由の解雇や解任は認められる?!

24.07.09
ビジネス【法律豆知識】
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従業員や役員が不倫を行なっていた場合、不倫を理由として解雇や解任といった処分を下すことは可能なのでしょうか。
不倫はあくまで私生活上の問題であり、会社の業務に直接関係しているわけではないので、原則として、不倫を理由に処分を行うことはできないと考えられます。
しかし「会社の経営陣である」「会社に著しく損害を与える」など、状況によっては処分が認められるケースもありえます。
今回は、従業員や役員の不倫が発覚した際の対応方法について解説します。

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役員の場合、不倫が解任事由になることも

経営者が、問題のある従業員を解雇しようとしても、自由に辞めさせられるというものではなく、労働者保護の観点から厳しい制約が定められています。
労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇は認められないとされています。

一方、役員の場合、会社法第339条第1項で「いつでも、株主総会の決議によって解任することができる」と規定されており、条件を満たせば解任することが可能です。
しかし、続く第2項には「解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる」とあり、解任に際しては『正当な理由』の有無がポイントとなると考えられます。
『正当な理由』なく解任した場合、会社側は解任した役員から損害賠償を請求されてしまう可能性があるのです。
この『正当な理由』は、(1)職務執行上の法令・定款違反行為、(2)心身の故障、(3)職務への著しい不適任(経営能力の著しい欠如)などが該当すると考えられています。

では、役員が不倫行為を行なっていたことを理由に解任した場合、不倫は『正当な理由』として認められるのでしょうか。
役員は企業の経営を担う重要な立場にあり、その行動が会社の評判や信用に直結すると一般的には考えられています。
役員の不倫による会社のイメージダウンの可能性もあるものの、不倫行為自体は、あくまで私生活での行為であり個人的な問題であるため、不倫を『正当な理由』とするのはむずかしいと考えられています。
これまでの事例としては、不倫を行なった取締役などは、解任ではなく、辞任するというケースが多いようですが、なかには、取締役会で解任を決めたというケースもあり、企業のコンプライアンス意識が高まるなか、こういった判断は妥当といえるかもしれません。
なお、任期満了で終了する場合を「退任」、任期満了前に自身の意思で辞めることを「辞任」、任期途中で辞めさせることを「解任」といい、解任の判断の前に、自分から辞任するというケースが多いようです。

不倫行為を放置すると、企業の信用が失墜するリスクに加えて、社内の士気低下、モラルや生産性の低下といった職場環境の悪化につながる可能性もあります。
どういった処分を行うのか、会社の方針を決めておいたほうがよいでしょう。

状況によっては解雇となる可能性も

従業員が不倫行為を行なっていた場合、どうすればよいのでしょうか。
不倫行為のみを理由に役員を解任することがむずかしいのと同じく、不倫を理由とした従業員の懲戒解雇は基本的には認められないとする意見が多いようです。
不倫に限らず、懲戒解雇とするためには、対象従業員の行為が会社の規律や秩序を著しく乱し、企業に対して重大な損害を与えたという客観的な証明が必要になります。
何をもってこれらに該当するかは人によって解釈が分かれ、また証明がむずかしいことから、不倫行為を理由とした解雇は不当と判断される可能性が高いでしょう。
実際、過去の判例でも、不倫行為を理由に解雇を言い渡されたが、不倫をしたという事実だけでは企業運営に具体的な影響があったとはいえないとして、解雇は無効と判断された事例があります。

ただし、不倫行為による影響が重大な場合や採用などへの具体的な影響があったと判断された場合、不倫行為を理由とした懲戒解雇が正当と判断された例もあるため、必ずしも不当解雇になるとはいえません。
最近では不倫行為がハラスメント行為に該当すると判断される可能性もあるため、その場合はハラスメント行為の程度に応じた懲戒処分が下されることになります。
不倫行為を理由とした解雇が認められない場合でも、放置することは前述の通り職場環境の悪化につながる可能性があるため、会社としてはなんらかの対応が求められるケースが多いでしょう。

対処方法としては、戒告や譴責処分などの懲戒処分を下したうえで、配置転換や退職勧告が考えられます。
いずれにしても、噂や推測だけで処分を決定するのではなく、関係者への事実確認や就業規則に基づき、適切な処分を検討することが必要です。
また、再発防止のために、職場の風紀や規律を再確認し、社員に対して倫理教育やハラスメント防止の研修を実施することも効果的でしょう。

不倫はプライベートの問題ではありますが、会社の業務に与えた影響範囲によっては、解雇にはならずとも、始末書提出や減給などの懲戒処分を受ける可能性があります。
過去には実際に当事者が解雇になった判例もあります。
コンプライアンス上、適切な行為でないことはもちろん、生産性の低下など周囲の業務への悪影響も懸念されるので、注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。