社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

在宅も外来も―親子3代の主治医へ

15.02.11
業種別【医業】
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地方で繁盛しているクリニックの院長に話を聞くと、「親子、親戚ぐるみで来てくれる患者さんが多い」という言葉をよく聞きます。

核家族化が進み、高齢者と同居している家族が減ってきたいまも、子供がスープの冷めない距離にいるケースはよくあります。
高齢の親が要介護状態になれば、近くに住む子供たちが社会資源を利用しながらみていくことになり、通院に付き添ったり、あるいは在宅医療スタッフを迎えるわけです。
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親の介護は、自身も中高年期にある子供にとって、肉体的にも精神的にもハードルの高い一大プロジェクトであり、自分を支えてくれる在宅医療のスタッフとは極めて強い信頼関係が生まれます。
どんなに散らかっていようと家の中の状態もすべて見られてしまうし、ときには愚痴を言ったり泣いたり怒ったりする自分を知っている在宅医療スタッフには、開き直って素の自分を見せるしかありません(というより、取り繕う余裕もないのが実際でしょう)。
一旦、信頼関係ができれば、何でも相談できる相手になるのです。

でも、どんなに医療スタッフが手を尽くしても、いつかは親は天寿を全うします。
そのとき、子供との関係も切れてしまうのは、クリニックにとってはあまりにももったいない話です。
在宅医療で培った患者・医師関係は、そのまま外来診療へ導入できるからです。
患者さんの息子や娘たちも「親によくしてくれたあの先生のクリニックに自分たちもかかりたい」と思うはず。
「家族間の口コミ」の影響力は半端ではありませんから、息子や娘をトリガーとして、さらにその子供たちが外来受診する可能性もあります。
すると、「親子3代の主治医」ということになります。

ただ、親子3代の主治医となるには、ひとつ条件があります。
それは、在宅と外来診療をバランスよくこなさなければならないということ。
院長一人のマンパワーでは提供できるケアに限りがあるし、へたをすれば燃え尽きかねません。

それを見越したかのように、厚労省のここ数年の地域医療まわりの診療報酬改定では、「機能強化型在宅療養支援診療所(在支診)」加算や、診療所の主治医機能を評価する「地域包括診療料」でいずれも「常勤医3人以上」の要件が設けられています。
医師3人体制で、外来も在宅医療もバランスよくやってほしい、というのが国の考える「地域の主治医像」のようです。
まあ、確かに「外来は〇〇医院だけど、在宅になったらまったく初めての△△診療所」とケアが分断されるのは不安なものですから、患者側としてはこれはウェルカム。
日常の健康管理から、いざ在宅医療が必要なときまで、一連の流れとしてケアが提供できる体制が、これからのかかりつけ医に求められています。



[プロフィール]
中保 裕子(なかほ・ゆうこ)
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。 
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