社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

2026年末まで延長!『住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは

24.06.04
業種別【不動産業(相続)】
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『住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは、親や祖父母などの直系尊属から住宅の購入や増改築のためのお金を受け取っても、一定額まで贈与税がかからない制度です。
贈与を受けた年の1月1日時点で、18歳以上の受贈者が対象です。
当初は2023年12月末までが適用期限とされていましたが、『令和6年度税制改正』により、2026年12月31日まで延長されることが決定しました。
今回は制度の概要や申請方法や、注意点について解説します。
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住宅購入時、親などからの贈与が非課税に

『住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは、住宅を購入、建築するための資金を親や祖父母などの直系尊属から贈与された場合に、贈与税が免除される仕組みです。
通常は親族間のやりとりであっても、財産が無償で渡された場合は「贈与」とみなされ、その年の1月1日から12月31日までの1年間に110万円を超える贈与を受けた場合には贈与税が課税されます。
この制度を活用することで、贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。
しかし、適用には一定の要件を満たす必要があるため、注意が必要です。

【受贈者の主な要件】
(1)贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
(2)贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
(3)贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であること。

【住宅の主な要件】
新築または取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

このほかにも要件が細かく規定されていますので、詳細は国税庁などのオフィシャルサイトを確認しましょう。
また、非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

親の住宅を相続する場合に注意することは?

住宅取得等資金の贈与税の非課税措置には、住宅購入のハードルが下がるメリットがあります。
ただし、将来的に親の住宅を遺産として相続することを考えている場合、いくつかの留意点があります。
まず、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置を活用していると、多くの場合、小規模宅地等の特例を使うことができません。
小規模宅地等の特例は、相続した宅地などの評価額を最大8割下げる軽減措置を受けられる節税効果の高いものですが、適用の要件に「相続開始時までに、持ち家に住んだことがないこと」が含まれています。
親からの資金援助を受けて住宅を購入している場合、ほとんどのケースで、この要件を満たすことができません。
住宅を取得した時にかかる税金も、相続のほうが基本的に有利です。
不動産取得税は相続の場合は非課税ですし、登録免許税についても、贈与より相続のほうの税率が低くなっています。

また、住宅取得等資金の贈与は、将来遺留分を算定する場合に、遺留分の基礎となる財産に含まれることとなるため注意が必要です。
住宅取得等資金の贈与は、相続時精算課税制度とも併用することができ、併用する場合には、60歳未満の直系尊属でも相続時精算課税制度の贈与者として認められるなど、それぞれの制度の非課税枠の利用が可能になるという利点もあります。
興味のある方は検討してみてはいかがでしょうか。

しかし、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置は基本的には有効な制度ですが、使用するための要件がとても細かいため、要件を充足できていないために税務署から非課税にならない旨を言い渡されるケースがよくあります。
その分野に詳しい専門家に相談してから決めることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。