社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

会社設立直後は消費税が免除される? その条件とは

24.05.28
ビジネス【税務・会計】
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消費税を納める義務のある事業者を消費税の課税事業者と呼び、消費税の納税が免除されている事業者のことを免税事業者と呼びます。
会社を設立した直後であれば、一定の条件を満たすことで、免税事業者になることができます。
また、条件によっては、事業開始から2期目も消費税の免税を適用させることが可能です。
会社を設立するのであれば、理解しておきたい消費税の免税について解説します。
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消費税の『事業者免税点制度』とは

新しく会社を設立する際には、法人税や法人住民税、法人事業税などとあわせて、消費税についても気にしておかなければいけません。
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課される税金のことで、基本的には顧客から預かった消費税から、仕入れや経費などで支払った消費税を差し引いた分を課税事業者が納税するという仕組みです。

会社を設立する際には、きちんと消費税を納税できるように、普段から資金繰りを考えていかなければいけません。
ただし、一定の条件に当てはまる事業者は、対象となる期間の消費税の納税が免除されます。
これは消費税の『事業者免税点制度』といい、小規模事業者の税務にかかるコストや事務負担を配慮して設けられた特例措置です。
それぞれ適用される条件について説明していきます。

資本金が1,000万円未満の事業者の場合

消費税の納税義務は、基準期間と特定期間の課税売上高などで判断します。
新たに設立された法人は基準期間がないため、原則として納税義務はありません。
資本金とは、会社を運営するうえでの資金のことで、経営者の資金のほか、株主や投資家から調達した資金も含まれます。
新しく会社を設立した際に、この資本金が1,000万円未満の場合は、事業開始の1期目に関しては消費税の納税が免除されます。
2期目についても、一定の要件を満たすと消費税の納税が免除されます。
なお、資本金が1,000万円未満であっても特定新規設立法人(親会社などが50%超の株式を保有し、かつ親会社などの基準期間相当の課税売上が5億円を超えている法人)に該当する場合は、納税義務が免除されません。
一方、資本金が1,000万円以上の場合には、設立1期目から消費税の納税義務が生じるので留意しておきましょう。

また、資本金の判定は、期の頭である事業年度の開始日に行われるため、たとえば資本金800万円の会社が1期目の途中で200万円を増資して資本金を1,000万円にした場合は、2期目から課税事業者となります。

2006年5月に施行された新会社法によって、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。
しかし、資本金は会社の規模や経営体力の指標となるため、多いほうが融資の際などに信用を得やすくなります。
免税事業者でありつつ、事業の優位性を確保するのであれば、資本準備金を活用するという方法もあります。
会社法第445条2項では、資本金の額の2分の1を超えない金額までは資本準備金として、資本金に計上しなくてよいことが認められています。
資本金を1,000万円未満にし、資本金の2分の1の金額を超えない範囲でそれ以外の資金を資本準備金としておくことで、会社としての体力を維持しながら、免税事業者でいることができます。
資本準備金は資本金よりも赤字の際に取り崩しが容易なのもメリットの一つです。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合

会社の設立後も、一定の条件を満たせば、消費税が免税されます。
その条件の基準となるのが、基準期間と特定期間の課税売上高です。
基準期間とは、法人における前々事業年度のことで、基本的には2年前の事業年度が該当します。
この基準期間の課税売上高が1,000万円を超えなければ、消費税の納税義務は発生しません。
なお、基準期間が1年でない法人の場合は、1年相当に換算した金額で判定することになっていますので、注意が必要です。
新しく会社を設立した場合は、基準期間が存在しないので、資本金が1,000万円未満などの要件はあるものの、原則として2期目までは消費税の納税が免除されることになります。

しかし、新しく設立した会社でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、2期目は課税事業者になります。
特定期間とは、その事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間のことを指します。
たとえば、2023年4月1日に決算日が3月末の会社を設立した場合、2024年4月1日の時点で前事業年度は2023年4月1日から2024年3月31日までになり、特定期間は2023年4月1日から2023年9月30日までの6カ月になります。
なお、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、従業員に支払う給料支給額の合計が1,000万円以下であれば、2期目も免税事業者となります。
特定期間における納税義務の判定を、課税売上高か給料支給額の合計のいずれにするかは納税者の任意で選択できます。
ただし、特定期間の課税売上高と給料支給額の合計が、ともに1,000万円を超えている場合は原則として課税事業者となるので留意する必要があります。

新たに設立された法人の場合、資本金が1,000万円未満、基準期間と特定期間の課税売上高が1,000万円以下といった条件を満たしていれば、第1期と第2期の消費税の納税義務は生じません。
しかし、2023年10月1日からインボイス制度がスタートしたことで、会社を設立したばかりでも課税事業者になっておいたほうがよいケースも出てきました。
免税事業者のままだと適格請求書が発行できず、課税事業者である取引先や顧客は仕入税額控除を受けることができなくなります。
特に事業の拡大や販路の開拓が重要になる会社設立の初期は、免税事業者であることが不利に働く可能性もあります。
こうした実情も踏まえながら、課税事業者と免税事業者のどちらで事業を行うのか、会社を設立する前に、よく考えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。