社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

10月から『ステマ規制』スタート! マーケティング分野での注意点

23.08.29
ビジネス【マーケティング】
dummy
『景品表示法』は、正式名称を『不当景品類及び不当表示防止法』といい、商品やサービスの内容や品質などを偽って表示する行為を禁止し、消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスを選べる環境を守るための法律です。
2023年3月28日、消費者庁は景品表示法の定める禁止行為に、ステルスマーケティング、いわゆる『ステマ』を追加しました。
このステマに対する規制は、2023年10月1日から施行されます。
宣伝やプロモーションなどの手法によっては、ステマと判断される恐れもあるので、景品表示法に違反しないよう、ステマ規制について理解しておきましょう。
dummy

ステマが合理的な商品の選択を阻害する

これまで企業が行ってきたステマには、主に2つの種類があります。
一つは、口コミサイトやECサイトに、一般消費者になりすまして自社商品に対する高評価のレビューを書き込んだり、逆に競合他社の商品に対する低評価レビューを書き込んだりする『なりすまし型』です。
もう一つは、インフルエンサーや著名人など、影響力のある第三者に報酬を支払い、自社商品の宣伝であることを隠して、情報を発信してもらう『利益提供型』です。

なりすまし型では、グルメサイトに評価や口コミなどを書き込む代行業者に、飲食店が対価を支払い、口コミの内容を操作していた事件が有名です。
利益提供型では、企業(オークションサイト運営者)から依頼された芸能人が宣伝であることを隠して、SNSにオークションサイトに関する投稿を行った事件がよく知られています。
特に、2012年に起きた後者の事件は、多くの芸能人が関わっていたことから『ステマ』がその年の新語・流行語大賞にもノミネートされるほど話題となりました。

ステマは、消費者による合理的な商品の選択を阻害する行為です。
通常、事業者による広告表示であれば、消費者はその内容について、ある程度の誇張表現が含まれると考え、商品を選ぶ際にそのことを考慮に入れます。
しかし、本来は事業者の広告表示であるにも関わらず、第三者を装う者が商品を取り上げると、消費者はその商品について正しく判断・選択することができなくなります。

同じ商品を宣伝する場合でも、企業が広告として宣伝するケースと、インフルエンサーが企業からの依頼を隠したまま「自分のおすすめ商品」としてSNSなどで発信するケースでは、消費者は後者を信用しがちです。
実際に、消費者庁の報告書によれば、「広告であることを明示しないことで、売上が20%増加した」「ステマによって、大手ECサイトにおける売上ランキングが20位ほど上昇した」などの結果が出ています。
高い宣伝効果があるステマは、これまでもさまざまな企業によって行われてきましたが、日本にはステマを規制する法律がありませんでした。
ちなみにOECD(経済協力開発機構)加盟国の名目GDP上位9カ国のなかで、ステマ規制がないのは日本だけでした。

ステマを規制するには、その広告表示が景品表示法における不当表示の『優良誤認表示』や『有利誤認表示』に該当する必要があります。
該当しなければ、ステマであっても不当表示には当たらないとされていたのです。

日本で初めてステマに関する規制が誕生

このような状況を受け、消費者庁ではステマを規制する必要があると判断し、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を景品表示法の不当表示に追加しました。
ステマが不当表示に指定されたことで、企業側はこれまで以上に広告表示について慎重になる必要があります。

インフルエンサーや著名人にSNSで宣伝を依頼する場合などは、投稿に「広告」や「PR」と表示してもらうだけではなく、広告であることが不明瞭な方法で記載されないように注意しなければいけません。
その際、周りの文字と比べて、広告やPRの文字を必要以上に小さくしたり、文章の末尾に配置してわかりづらくしたりすると、ステマと判断されてしまう可能性があります。

動画による商品のプロモーションも同様に、第三者が動画で商品を宣伝する場合にも、動画内に広告であることがわかるような配慮をしておかねばなりません。
広告という文字が小さかったり冒頭に一瞬表示されたりするだけで、消費者が認識しにくい場合は、ステマと見なされる可能性があります。

もし、景品表示法に違反すると、消費者庁や都道府県による措置命令が出され、広告表示の停止や再発防止が命じられます。
措置命令が出された場合は、消費者庁や都道府県などのWebサイトで公表されるため、企業イメージの低下につながりかねません。
また、措置命令に従わない場合は、刑事罰として、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。

ステマは、これまでのような顧客離れや信頼感の低下、ネット炎上などのほかに、景品表示法違反になるリスクも加わることになります。
ステマ規制が施行される今年10月1日までに、自社で行っているPRや広告がステマ規制に抵触していないかどうか確認し、誤解をされないようなマーケティング活動を行うよう努めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。