社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

子どもが急に飛び出してきて交通事故に! 過失割合はどうなる?

22.12.13
ビジネス【法律豆知識】
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交通事故は日々発生しています。
運転中、急に子どもが飛び出してきて車にぶつかり、ケガをさせてしまったといった事故は、誰にとっても起こりえます。
子どもが交通事故の当事者となる場合、成人が交通事故の当事者となる場合と比べて、どのような違いがあるのでしょうか。
今回は、子どもが当事者となった場合の交通事故について、その過失割合の考え方などについて解説します。
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子どもに責任を問うことは可能?

交通事故で子どもが当事者となった場合、そもそも、他方当事者は、子どもに対して責任を問うことはできるのでしょうか。
民法712条では、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と定められています。
これは、当事者となった子どもの責任能力の有無を基準とするということです。
したがって、事故の状況によっては、子どもにも責任があると判断される場合も少なくありません。
過去の判例からは、小学校を卒業する程度の年齢(12歳程度)になっていれば、責任能力があると判断されると考えられています。

では、子どもが交通事故の当事者となった場合、子ども自身に損害賠償請求をすることができるのでしょうか。
責任能力と同様に、小学校を卒業する程度の年齢(12歳程度)であれば、当該子どもに損害賠償請求をすることができるということになります。
ただし、未成年者の交通事故については、その両親などが対応することが多いと思われます。


児童であることが過失割合で考慮される

ここまで、損害賠償請求の前提について解説してきました。
では、事故の当事者が子どもであることによって、過失相殺において、何か考慮されることはあるのでしょうか。
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』における過失相殺の基準には、児童であることで過失割合が減少する、つまり当事者が児童であることは過失割合の考慮要素であると記載されています。
なお、ここでの児童とは、小学生までの子どものことを指します。
児童は、成人に比べて類型的に判断能力が低く、責任を問いづらいため、過失割合が減少する方向で考慮されるものと考えられます。


最低限の判断能力がない場合にはどうなるのか

ここまでは、主に、小学生程度の児童に焦点を当てて話をしてきました。
先ほども、児童は成人に比べて判断能力が低いなどと説明をしました。
では、判断能力そのものがないような幼児の場合には、どのように扱われるのでしょうか。
たとえば、2~3歳の子が急に車道に飛び出してきて交通事故が発生した場合はどうでしょうか。
幼児には、当然、判断能力はなく、物事の善悪や原因と結果のこともよく分かりません(この能力のことを『事理弁識能力』といいます)。
そのため、そもそも幼児には責任を問えず、過失割合の問題も起こらない(他方当事者がすべての責任を負いかねない)ということにもなりそうです。

しかし、このような結論は、明らかにバランスを欠くでしょう。
そこで、責任を問うことのできない子どもに対しては、原則として親権者などの法定の監督義務を負う者が責任を負うこととされています(民法714条本文)。
また、本来、子どもが負うべき過失については、被害者側の過失という考え方を使って、親権者などが負うこととしています。

事例によってさまざまですが、たとえば、本来、親が手をつないで歩いていなければならないような状況において、親が子どもの手を離したり、目を離していたりした際に交通事故が起こった場合、親の過失として責任を問い、自動車を運転していた側ではなく、子ども側の過失割合が増えることになります。
以上のことから、子どもを巻き込んだ交通事故を起こした場合には、その責任については当該子どもの責任能力の有無が判断基準となっていることがわかります。

結論を見てしまえば、当たり前と思われるかもしれません。
ただ、バランスの取れた結論になる過程を見てみると、法律上の条文や法的な考えが加わっています。
相手が子どもだからといって、必ずしも運転手側がすべての責任を負うわけではありません。
事故を起こさないことが一番ですが、子どもを巻き込んで事故を起こしてしまった場合にも、必要に応じて専門家に相談するなど、落ち着いて対応しましょう。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。