社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

一部の相続人が財産を隠している……? そんな時の対応法とは

21.07.06
業種別【不動産業(相続)】
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相続の際に起こりがちなトラブルとして、亡くなった方と近いところで暮らしていた親族が遺産を隠しているのではないか、と疑われるケースがあります。
亡くなった方の財産の全容を、相続人全員が知っていれば問題はないのかもしれませんが、実情としては、離れて暮らしている親族のほうが、亡くなった方の財産管理については疎いものです。
今回は、そのような疑いをもった時にできることとして、相続財産の把握方法や調査について解説します。
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相続財産を把握するためにとれる手段

親族が亡くなった際、被相続人と同居していた相続人が、相続財産の詳細についてなかなか教えてくれないといったトラブルは、実はよく起きています。
自身が遠くに住んでいる相続人の立場だった場合、どうすれば被相続人の相続財産(遺産)を把握できるでしょうか。

この場合、まず、同居の相続人が相続税申告のために作成した遺産の目録から、相続財産の概要が判明することがあります
相続財産が相続税の基礎控除額を超える場合、相続開始から10カ月以内に相続税を申告する必要があり、この申告は、相続人全員で申告するのが原則であるためです。

一方、相続税が課税されるほどの財産ではなかった場合などは、上記のような資料が存在しないこともあります。
その場合は、被相続人と生前に同居していた、もしくは生前の財産管理をしていた相続人に対し、相続財産の内容がわかる資料等の開示を求めるのがよいでしょう。


意図的に財産を隠しているなら調査を

では、一部の相続人が意図的に相続財産を隠していた場合などに、それらを明らかにすることはできるでしょうか。

この場合、一定の範囲ではありますが、調査は可能です。
たとえば、預貯金については、金融機関名と支店名が判明していた場合、必要な手続きを経れば残高証明書や取引履歴等を取得することができます。
また、不動産については、市区町村に照会をかけて被相続人名義の不動産があるか否かを調査することができます(『名寄せ』といいます)。
最近では、民間企業のなかに、こうした名寄せ行為に近いサービスを行うところも増えていますので、それを利用するという方法もあるでしょう。

こうした調査で得た情報を精査することで、知られていなかった財産が新たに見つかるケースもあります。
ただし、これらの調査は、範囲を広げれば広げるほど費用もかかりますので、進め方についてはよく考えることが大切です。


財産の全容が不明なまま遺産分割手続きに至った場合

財産の全容が明らかにならないまま、裁判所での遺産分割手続きに入らなければならなくなるケースもあります。
その場合、裁判所から、相続財産をすべて明らかにするように相続人に促すことが多いので、その時点で資料が開示されることもあります。

それでもなお、特定の相続人が、頑として相続財産のすべてを開示しないという場合は、「遺産がもっとあるはずだ」として、法的に、裁判所を介した財産の照会手続きをとることができます(『調査嘱託』といいます)。
これは裁判所が積極的に動くわけではないため、相続人側が調査対象を特定する必要があります。

一部の相続人が財産を隠し、必要な情報を開示してくれないケースでは、相手方に開示を求めるとともに、裁判所の手続きに至る前に、適切な(または、調査にかけられる費用等を踏まえた有効な範囲での)調査・準備をすべきでしょう。
長い時間が経ってしまうと、最初にあったはずの財産が減ってしまっていたといった、別のトラブルが起きてしまう可能性もあります。
財産の全容について知りたい場合は、なるべく早く対策に動くほうが望ましいといえます。


※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。