社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

同族会社が行うべき効果的な相続税対策とは?

19.06.04
業種別【不動産業(相続)】
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同族経営の会社にとって、相続税は大きな問題の一つ。
代表取締役の遺産を相続する際には、会社の『株』を相続することになります。
しかし、売れない株を相続しただけなのに、多額の相続税が発生することがあります。
今回は、同族経営会社の株式等の遺産相続をすることになったときのための節税対策をお伝えします。
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三つの区分で変わる株価の評価方法 

同族会社は株式を公開していないため、株式の時価が明確ではありませんが、相続の際には、相続税を計算するために金額を明確にする必要があります。
このとき用いられるのが、国が定めている『相続税評価額』という基準です。
これは実際に株式が売買できる金額ではなく、あくまで相続税や贈与税を計算するための評価額となります。 

上場していない株式等の相続税評価額の算出方法には『原則的評価方式』『特例的評価方式』という二つの方式があります。
同族会社の株式等を取得した株主が支配株主の場合は『原則的評価方式』で評価し、株式等を取得した株主が少数株主の場合は『特例的評価方式』で求めることになります。 
支配株主は、経営参加等を目的としてその会社の株式等を所有している株主をいい、少数株主とは、配当金等の取得を目的としてその会社の株式等を所有している株主をいい、それぞれその株式等の所有目的が異なるため、それぞれに適した評価が必要になります。 
その評価会社に同族株主がいる会社かどうか、株式等を取得した株主が同族株主かどうかなど、一定の基準によりどちらの評価方法で算出するか判定します。 

『原則的評価方式』では、売上や従業員数、総資産価額を参考に、その会社を大会社、中会社、小会社の三つのランクに分けていきます。 

大会社の株は、類似業種の株価を参考にする『類似業種比準価額方式』という方式で評価をしますが、小会社の株は、原則として『純資産価額方式』という方式で評価をします。
また中会社は、この二つの評価方法を併用します。 
『純資産価額方式』とは、その名の通り、会社の純資産価額で評価する方式です。
課税時期に会社を解散すると仮定し、1株当たりの純資産価額で評価します。
算出の仕方は、まず会社の総資産や総負債を相続税上の評価額に直し、相続税上の総資産から負債と評価差額に対する法人税を差し引いた、純資産価額を出します。
この純資産価額を株式の数で割ったものが1株の評価額となります。 

類似業種比準価額は類似業種の上場会社の株価を基に算出するため、一般的に純資産価額方式より評価額が低くなります。
会社区分を大会社へ近づけることも対策の一つです。 


相続税評価額を低く抑えるための対策 

では、どのようにすれば同族会社の相続税を節税することができるのでしょうか? 
基本的には、評価額を低くするための対策を講じるのが重要なポイントになってきます。 
その一つとして、株式を『配当還元方式』の使える人に贈与・遺贈する方法があります。 

『配当還元方式』とは『純資産価額方式』のように総資産から評価を算出するのではなく、“仮に株主に配当するとしたらいくらになるのか”という『配当金』から評価を算出するもので、一般的に評価額は低くなります。
これが使えるのは“配当金だけが目的で株式を所持している株主(少数株主)”に限定されます。
そのため、経営者が経営権のない『配当還元方式』の使える従業員などに株式を贈与・遺贈し、持ち株を減らすことで節税が可能となります。 
ただし、少数株主が所有する株式等が多くなることで、経営面に支障をきたすことも考えられますので注意が必要です。 

また、従業員持株会を活用して従業員に株式を発行し、株式数を増やすことで1株当たりの単価を下げる方法や、含み損を計上して利益を減少させる方法なども考えられます。 

さらに、非上場会社の株式等の贈与・相続について、一定の要件を満たす場合に贈与税・相続税の納税猶予や免除が受けられるという、中小企業に配慮された事業承継税制という制度があります。
2018年度の改正では10年間の期間措置として特例事業承継税制が制定され、期間限定で条件等が緩和されています。 

相続については、早期からの対策が肝心です。
同族会社の株式評価に影響する資産の時価に気を配り、株式等の評価額を把握することが大切です。 
会社経営とのバランスを考えながら、過度な利益圧縮にならないように留意しながら、計画的に準備・対策していきましょう。 


※本記事の記載内容は、2019年6月現在の法令・情報等に基づいています。