社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

施設の批判をネット上に書き込んだ職員を解雇できるか?

14.08.10
業種別【介護業】
dummy
Q:当施設の職員が、自分のブログに施設の批判や、
上司への中傷を数回にわたって書き込んでいたことが
判明しました。

本人に問いただしたところ事実を認めたのですが
「自分のブログに書いただけなので何を書こうが
自由ではないか」と反論しています。
このようなことをされると施設の評判も悪くなるので、
解雇したいのですが問題ありませんか?
dummy
介護事業最前線

A:Facebookやブログの普及により、
様々な情報が簡単に発信できる時代になりました。
最近では、ネットを利用し、会社に対する批判や
誹謗中傷する人も目立つようになっています。
この様な批判・誹謗中傷により、会社の信用が
失われる可能性も高くなるため、特に介護事業では
利用者やその家族などに悪い印象を与えてしまうことに
もなりかねないでしょう。

しかし、ブログ上などでの批判や誹謗中傷の行為が、
解雇事由に該当するかどうかは慎重な判断が必要です。
ブログに書かれた批判の内容、上司への誹謗中傷の程度、
その内容が事実なのかどうか、そしてそれによって施設が
失った社会的信用の程度などを総合的に判断し、
どのような懲戒処分をするのが妥当であるかを
検討しなければなりません。

労働者の勤務時間以外については施設が拘束することはできないため、
基本的には何を行おうが個人の自由となります。
その一方、労働者は労働契約と共に誠実に労務を提供するという義務も
負っていますので、施設の機密情報や個人情報を漏らしたり、
イメージを損なう誹謗中傷を行う等、施設の利益に反する行為は許されません。

ご質問のケースでは、ブログで書かれた内容が事実である場合や
書かれた内容が極めて軽微な場合は、その行為により施設の運営に
支障をきたすような相当重大な事実が認められなければ、
「減給」や「出勤停止」程度の懲戒処分は行えても、
「解雇」処分を行うのは難しいでしょう。

また、懲戒処分を行う場合でも、「どのような行為が懲戒処分に値するか」、
「外部流出を禁止する個人情報・機密情報の範囲は具体的にどの程度か」
等について就業規則等で明確に明示しておかなければなりません。

今回は解雇以外の懲戒処分にとどめ、今後このような行為を行わないという
誓約書を取ってはいかがでしょう。
それにもかかわらず繰り返す場合は「解雇」処分を検討してはどうでしょうか。

◆今後の防止対策◆
・就業規則に遵守すべき機密情報を明確に規定し、ブログ等への機密情報に
係わる書き込みや施設・上司への誹謗中傷を禁止する。
・入社時及び退職時に機密情報保護誓約書を交わし、情報漏洩等の防止を意識づける。
・従業員に対して、定期的に機密情報等の取り扱いについての教育を徹底する。

[プロフィール]
田中 靖浩(たなか・やすひろ)
牧江・田中社会保険労務士法人所長・特定社会保険労務士。
創業から35年以上の歴史を誇る牧江・田中社会保険労務士法人、所長。これまで労務管理を支援してきた企業は1000社以上。現在、500社ほどの企業を顧問先として抱え、社会保険に関する事務のアウトソーシング、企業防衛型就業規則の作成と社内規則の整備、助成金申請などを受託。