社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

2019年4月からスタート! 介護事業所に必要な『働き方改革』とは?

19.02.04
業種別【介護業】
dummy
2019年4月から『働き方改革』に関する法律が順次スタートしていきます。
介護業界も『働き方改革』の例外ではなく、何らかの対策の必要性に迫られています。
そこで、『働き方改革』の代表的な施策とともに、介護業界が実施している対応策を紹介。
参考にしながら、今後、行っていくべき取り組みについて、考えていきましょう。
dummy
『働き方改革』の代表的な施策

『働き方改革』に関する法律は、中小企業は一部の項目について施行時期の猶予措置はありますが、基本的にすべての業種が対象となっているため、介護業界においても早急に取り組む必要があります。

実際に介護業界を取り巻く問題として、介護保険法の施行時から人材不足介護労働者に対する低待遇などを解消する必要に迫られています。

介護事業者向け経営支援サービス『カイポケ』が2018年に行った『介護現場における働き方改革に関する実態調査』によれば、すでに何らかの『働き方改革』に関する取り組みを行っているという介護事業所は66.4%にのぼり、労働環境を改善する必要性を実感している介護事業所が非常に多いことがわかります。

では、具体的に『働き方改革』の代表的な施策を見てみましょう。

(1)残業時間の上限規制(大企業:2019年4月~、中小企業:2020年4月~)
原則として、時間外労働の上限が月45時間年360時間となる。
臨時的な特別の事情がある場合でも、労使協定は年720時間を上限とし、『休日労働も含めて、連続する2カ月ないし6カ月平均で月80時間以内』、『休日労働も含めて、単月で100時間未満』、『原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は年6回まで』となる。上限を超えた場合は、罰則として、雇用主に半年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる。

(2)有給休暇取得の義務化(2019年4月~)
年間10日以上の有給休暇がある労働者について、年間5日以上の有給休暇を取得することが、企業に対して義務づけられる。違反した場合は、罰則として30万円以下の罰金が科せられる。

(3)高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月~)
高度の専門的知識を必要とする業務に従事し、職務の範囲が明確で一定の年収(年収1,075万円以上を想定)を有する労働者を労働時間の規制(労働時間、休日、深夜の割増賃金など)から外す仕組み。

(4)産業医・産業保健機能の強化(2019年4月~)
企業から産業医に対して健康管理に必要な情報提供を義務づけられる。企業は、長時間労働者の状況や、従業員の業務の状況など、産業医が従業員の健康管理を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない。

(5)同一労働同一賃金(大企業:2020年4月~、中小企業:2021年4月~)
正社員などの正規雇用スタッフとパートタイマーなどの非正規雇用スタッフの間で職務内容が同一であるにもかかわらず賃金格差が生まれている場合、雇用形態や名称に関係なく、同一の労働をした際は同一の給与・賃金を支給しなければならない。

(6)中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止(2023年4月~)
月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率(50%)の導入について、中小企業に対する猶予が廃止される。

この中でも特に(1)労働時間の上限規制と(2)有給休暇の取得義務化は人材不足が顕著な介護事業所においては、切迫した問題としてとらえられています。


介護業界における『働き方改革』の対応策

介護業界における対応策としては、『短時間正社員』、『夜勤なし正社員』、『夜勤専従社員』など各々のライフスタイルに合わせた多様な勤務体制を設ける事業所が増えており、採用の多様性と共に現在のスタッフの夜勤などの業務負担を軽減し、離職を予防することにつながると考えられています。

また、送迎や清掃など介護業務以外の業務を専門業者に依頼したり、クラウドシステムなどのICTツールを導入したりすることにより、時間削減につながっているという事例もあります。


このように事業所ごとにそれぞれの直面する問題に合わせて様々な取り組みが行われています。
これらの改善事例を参考に自社の施設で最適な『働き方改革』を検討されてはいかがでしょうか。