社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

人材不足の打開策となるか? 介護業界の外国人雇用

18.11.07
業種別【介護業】
dummy
コンビニや外食産業などを中心に、ますます進んでいる外国人雇用。
介護の分野においてもそれは例外ではありません。
直面する人材不足の問題を解決すべく、近年、外国人の在留資格に『介護』が追加されました。
新しい法令により、介護業界はどのように変わっていくのでしょうか。
その影響や背景について考えてみましょう。
dummy
法改正で変わりゆく介護従事者の養成状況

2016年11月、政府は臨時国会において『出入国管理及び難民認定法(入管法)』の一部を改正し、外国人の在留資格に『介護』を新設、翌2017年9月に施行されました。
これにより、介護福祉士の資格を有する外国人が、国内で介護業務に従事できることになりました。
とはいえ、介護業界に外国からきた人材が十分に充当され、人手不足が解消できているかといえば、まだ十分とは言えないのが現状です。
『介護』の分野で在留しようとする場合、現行の制度では、介護福祉士を養成する日本国内の専門学校・大学などに通った留学生が卒業後、介護福祉士の資格を取得し、介護の仕事に就いて在留資格を得る必要があります。
介護福祉士の合格率は、約60~70%を推移しており、国家資格の中では比較的高いものです。
しかし『介護業における実務経験3年以上』、かつ『介護職員実務者研修の修了者』や介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業した方などでないと受験資格を満たせないため、受験段階で、すでに介護の実務と知識にある程度精通している方に対象が絞られています。
また、試験はすべて日本語で実施されるため、外国人の方々にとっては、いっそうハードルが高いものになっています。

それでも、日本で介護を学びたいという外国人は増えています。
経済連携協定(EPA)の枠組みで来日した外国人の中で、2018年度に一番合格者の多かったベトナム人の合格率は90%を超え、介護の知識だけではなく語学力においても一定以上のスキルを持っている方々が年々増えています。
このことから、介護の分野で戦力として期待できる外国人の人材は、少しずつ育ってきていると考えられます。


柔軟な受け入れ体制が 生き残るカギに

現行法で、外国籍の方が日本で介護福祉士になるための典型的な流れは、おおよそ以下のとおりです。

在留資格【留学】
外国人留学生として入国

介護福祉士養成施設で修学(2年以上)

介護福祉士の国家資格取得

在留資格【介護】
在留資格を『留学』から『介護』に変更

介護福祉士として業務従事

この『介護』の在留資格で日本に滞在している場合、在留状況に問題がなければ、在留期間の更新が可能であり、その更新回数に制限はありません。
また、『家族滞在』の在留資格で在留することも可能で、家族の生活も保障されるというメリットがあります。
しかし一方では、『留学』で来日し、養成施設での就学を経て介護福祉士の資格を取得するまでに時間がかかることや、一定以上のスキルを要するために人材が絶対的に不足していることなど、制度がまだまだ成熟していないゆえの問題点も、多数存在しています。

いずれにしても外国人労働者の活用は、介護業界の人材不足を解消するための必要不可欠な戦略となりつつあり、外国人雇用が介護業界の人材不足問題の打開策となる日も、そう遠くないかもしれません。
今のうちに介護業界での生き残りをかけ、時代の流れに合わせた柔軟な対応ができるよう、外国人雇用を含めた中長期的な雇用計画を検討されてはいかがでしょうか。