社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

「地域包括診療料」を算定するには?

17.09.08
業種別【医業】
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厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を確立し、“ときどき入院、ほぼ在宅”という社会を目指しています。

病院に対しては地域医療構想による病床機能の再編を進めており、「急性期病床」⇒「回復期病床」⇒「慢性期病床あるいは在宅医療」という流れをつくろうとしています。

一方、受け皿となる「在宅医療」の整備も必須です。

国は複数疾患を併発しやすい高齢者の包括的な診療を進めるため、かかりつけ医や主治医機能の強化に力を入れています。
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かかりつけ医が複数の生活習慣病を有する患者の継続管理を図る観点から、2014年度の診療報酬改定で包括点数の「地域包括診療料」、再診料の「地域包括診療加算」が新設されました。

ところが、これらの点数が届出がされていない状況です。

昨年11月時点の地方厚生局への届出は、地域包括診療料が202件、地域包括診療加算が5,303件と全診療所数の1割を満たしませんでした。

今年6月に公表された中央社会保険医療協議会の資料によると、届出をしていない理由としては「施設基準を満たせないから」が最も多く、次いで「他医療機関の通院状況の把握など、負担が大きいから」が続いています。

「2人以上の常勤医の配置」や「24時間対応の薬局との連携」など、施設基準は厳しい要件となっています。特に1人医師での開業が多い診療所にとって大きなハードルといえるでしょう。

とはいえ、複数疾患に対する療養上の指導や服薬管理、健康指導といった包括的かつ継続的な取り組みは、患者や地域からの信頼を獲得していくうえで大きな武器となります。

地域包括診療料にいたっては全国でも200施設しか届出されていないわけですから、取得すれば他院との大きな差別化を図れるのは間違いありません。

地域包括診療料(地域包括診療加算)を算定するにあたり、まず2人医師体制にしていくことが不可欠です。その場合、どのような組織体系を目指すかが大きな問題となってきます。

実際に見受けられるパターンのひとつは「総合診療と専門診療の2つの医療の提供」、もうひとつは「外来診療と在宅診療の同時展開」です。

前者はプライマリケアを中心にされていた診療所で専門医を雇用するパターンと、専門クリニックがプライマリケア医を雇用するパターンの2つがあります。

人口減少をたどるなか高齢者は今後増加すると予測されます。この状況に対応していくために、自院の診療の幅を広げていくことが必要になってくるかもしれません。

もう1つの外来診療と在宅診療の同時展開については、こんな事例があります。

神奈川県のAクリニックでは外来への通院が困難になった患者に対応するため、在宅専門の医師を招いて患者宅の訪問診療を行っています。
このクリニックのユニークな点は、外来診療と訪問診療の集患や効率化を狙い、在宅医が施設や集合住宅に訪問する際は、ほかの入所者の健康状況もチェックしているところです。

通院できる患者は自院への外来診療へ、できない患者は在宅医療で対応しているといいます。
地域の患者を積極的に獲得していくために外来と在宅を上手く使い分けた事例でしょう。

このように地域のニーズに合わせていく、あるいはニーズを発掘していくことで、地域包括診療料を算定できる診療体制を構築できるのではないでしょうか。

地域包括ケアシステムの波に乗ってみることが、自院の成長につながるかもしれません。



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