社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

小規模事業者は要確認! 資材高騰分を価格転嫁するための交渉術

26.09.01
業種別【建設業】
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資材価格の高騰が続くなか、建設業界では多くの小規模事業者が「値上げをお願いしたいが、元請けとの関係が悪化して仕事を失うのが怖い」という悩みを抱えています。
従来の価格のまま、赤字覚悟で仕事を受けているという事業者も少なくありません。
しかし、下請けという立場にあっても自社の経営を守るためには、しわ寄せをそのまま受け入れるのではなく、適切な価格転嫁の交渉を行う必要があります。
資材高騰のあおりを受けている小規模事業者に向けて、取引先と信頼関係を保ちながら交渉を進めるためのアプローチを説明します。

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長引く資材高騰がもたらす経営への影響

2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻を契機とする資材価格の高騰は、今も収束していません。
中東情勢の緊迫化やナフサ価格の上昇なども重なり、2026年に入ってからも各種値上げや受注制限が相次いでいます。

国土交通省が公表している主要資材価格の推移を見ると、たとえば、生コンクリート(10立方メートルあたり)は、2022年9月の14万9,500円から2023年9月には19万7,000円、さらに2025年8月には23万7,000円まで高騰しています。
セメント(10トンあたり)も、2022年9月の11万9,000円から、2023年9月の15万9,000円、2025年8月の17万9,000円と上昇しました。

こうした資材価格の急激な上昇に加え、人手不足に伴う賃金水準の引上げなども重なり、事業者の支出は増え続けています。
多くの小規模事業者は、経営努力によってコスト増を吸収しようとしてきましたが、すでに限界に達しています。

しかし、採算が取れないとわかっていても、重層下請け構造が根付く建設業界では、元請けに具体的な交渉を切り出せないまま経営難に陥るケースもみられます。
会社を存続させるためには、これ以上の負担を自社だけで抱え込まず、発注者や元請け企業に対して適切に価格転嫁を求めていく必要があります。

国も価格転嫁の交渉を後押し

小規模な建設会社にとって、上位の企業に対して値上げの交渉を持ちかけることは簡単ではありません。

しかし、国も価格転嫁のための交渉を促進する対策を進めています。
たとえば、国土交通省は下請け企業が適切に価格転嫁を行えるよう、元請け企業に対して原材料費の上昇分を請負代金へ反映させることを促す通達を出し、下請け企業が価格について協議しやすい環境を整えています。

さらに、元請けが下請けからの交渉に一切応じなかったり、客観的な根拠を示さずに一方的に単価を据え置いたりする行為は、独占禁止法上、問題となる可能性があります。
現在、国はこれらの法律違反に対する取り締まりを強化しており、元請け企業も下請け企業から合理的な提案があった場合には、誠実に協議することが法的に求められています。

交渉を成功に導くための実践的なアプローチ

実際に元請け企業に対して価格交渉を行うのであれば、まずは、契約を結ぶ前の見積もり段階で交渉を始めましょう。
契約後や工事が始まってからの金額変更は元請け側でも社内手続きなどに手間がかかり、拒否される要因になります。
契約前の適切なタイミングで切り出すことが重要です。

また、客観的なデータや資料を揃えて、交渉の根拠を示すことも大切です。
先述した国土交通省の公表データや、仕入れ先からの「価格改定通知書」のコピーを根拠資料として用意します。
見積書も「一式」でまとめず、資材費や労務費を細分化し、どの項目が何%上昇したのかを示し、値上げの理由と金額を明確にします。

さらに、値上げを要求するだけでなく、代替資材や工法の見直しなど、コストを抑えるためのVE提案も行いましょう。
たとえば、性能を保ちつつコストを抑えられる代替資材の提案や、工法を見直して工期を短縮する工夫を提示します。
元請け企業への協力的姿勢を示すことで、値上げへの理解を得ることにつながります。

そのほか、設計変更による追加工事の費用や、建設キャリアアップシステム(CCUS)の運用費など、これまであいまいになりがちだった費用も、切り分けて交渉を進めることが望ましいとされています。

もし、自社だけでの交渉がむずかしい場合は、国が設置している「建設業フォローアップ相談ダイヤル」の活用も有効です。
専門のアドバイザーから、法律や取引ガイドラインに基づいた具体的な助言を無料で受けることができます。

資材高騰が長期化するなか、価格転嫁は事業の存続に関わる重大な判断です。
「立場が弱いから」とあきらめるのではなく、客観的なデータを揃え、論理的に対話を重ねることで、元請けとの良好な関係を保ちながら、適正な価格での合意を目指すことができるでしょう。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。