社会保険労務士法人長谷川社労士事務所

『局所麻酔薬』が足りない!? 供給不足の原因や対応策をチェック

26.06.02
業種別【歯科医業】
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歯科診療において、局所麻酔薬はなくてはならない存在です。
むし歯治療から抜歯、根管治療、外科処置に至るまで、痛みを抑え、患者の不安を取り除くために欠かせません。
しかし、2022年頃から断続的に発生し、2025年末から再度深刻化した「局所麻酔薬の供給不足」は、現在も全国の歯科医院に影を落としています。
なぜ、当たり前に使えていた薬が届かなくなってしまったのでしょうか。
そこには、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
供給不足の要因を紐解きながら、歯科医院における対応策を解説します。

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歯科用局所麻酔薬が不足している主な原因

歯科用局所麻酔薬の供給不足の背景には、パンデミックの影響がありました。
新型コロナウイルスのワクチン製造が世界中で本格化した際、一部では他医薬品との資材競合が影響したとも指摘されています。
このあおりを受け、歯科用麻酔薬の生産量が一時的に落ち込み、メーカーが出荷調整を行わざるを得ない状況に陥りました。

この混乱は一度収束したかに見えましたが、2023年から2025年にかけて、今度は医薬品業界全体の供給不安が追い打ちをかけました。
現在も続いている品薄状態の背景には、製薬メーカーにおける生産体制の見直しや、想定外の生産停止、製品の自主回収、さらには深刻な人員不足や原材料費の高騰が重なっています。
鎮痛薬や抗生剤、咳止めなど、幅広い分野で、慢性的な薬不足が続いているなか、麻酔薬も例外ではありません。

特に歯科用局所麻酔薬は、製造・供給を担っているメーカーが少なく、供給不足に拍車をかけています。
参入障壁が高く、限られた製薬会社が市場を支えているため、一社でトラブルが起きると代替品を探す医療機関が他社に殺到し、市場全体がパンクしやすい傾向にあります。

また、日本の医薬品製造は、その「原薬(原材料)」の多くを海外に依存しています。
麻酔薬をつくるために必要な原薬もその多くを輸入に頼っていますが、近年の不安定な国際情勢の影響などにより、輸出を制限する国も出てきています。

さらに、2025年には主要な麻酔薬の製造過程に不具合が生じ、出荷が一時制限されるというトラブルも発生しました。
現在は出荷が再開されているものの、一度崩れた需給バランスを立て直すのは容易ではありません。
「また足りなくなるかもしれない」という不安から、多くの医療機関が在庫を通常よりも多めに確保しようとする動きを見せたことも、結果として市場の不足感を助長したといわれています。

麻酔薬不足のなかで歯科医院ができる工夫

不安定な状況下で、歯科医院が取り組むべきは「発注」と「在庫管理」の適正化です。
在庫がなくなることへの不安から過剰なストックを持ちたくなりますが、一つの歯科医院が抱え込みすぎれば、本当に必要としているほかの医院へ薬が届かなくなります。
平均的な使用量を正確に把握し、過不足のない適正量を維持することが、結果的には自院への安定供給につながります。

次に、仕入れルートの多様化も検討しましょう。
これまで特定の一社とのみ取引をしてきた場合、そのルートが詰まれば診療が止まってしまいます。
これを機に、複数の業者から調達できる体制を整えておくことが、効果的なリスクヘッジになります。

また、特定の製品にこだわりすぎず、複数の麻酔薬を使い分ける柔軟性も求められます。
成分や特性を再確認し、もしメインで使っている製品が入手困難になったとしても、別の製品でスムーズに代用できるよう、体制を構築しておくことが重要です。

さらに、治療の優先順位を見直すことも対応策の一つです。
供給が極めて逼迫した際には、緊急性の高い抜歯や急性炎症への対応を優先し、急ぎではない処置については時期を調整するなど、患者側への丁寧な説明を前提としたスケジュール管理が求められるかもしれません。

厚生労働省の発表によれば、政府による増産支援などもあり、数字上は普段通りの出荷量に戻りつつあるとされています。
しかし、原材料の調達リスクや、製造現場のトラブルによる供給不足は、今後も繰り返し発生する問題だと考えておきましょう。

特に、資本力や交渉力で大病院に劣りがちな小規模な歯科医院ほど、こうした供給不足の影響を受けやすい傾向にあります。
日頃から複数の仕入れ先と信頼関係を築き、正確な在庫データに基づいた経営を行うことが不測の事態から医院を守る土台となります。


※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。