6. 2「CSV(共有価値の創造)」の考え方による経営革新(第2部・第6章・第2節)
永続を目指し続ける~非上場・中堅・中小企業のための「持続可能な経営の設計技法」~
今回は、青字の部分です。
第2部:4バリュー実現のための経営技法(各論)(ToDo)
6. 会社の永続
6.1社長と社員の「お金の●●」をそろえるキャッシュフロー経営
6.2「CSV(共有価値の創造)」の考え方による経営革新:ビジネスモデル・ビジネスプロセス・商品サービス
6.3よりよい条件での資金調達と公的資金の有効活用
※本記事の無断引用・転載・複製・配布等はご遠慮ください。
※予告なく記事内容の訂正・修正・補足等を行うことがあります。
6.2「CSV(共有価値の創造)」の考え方による経営革新:ビジネスモデル・ビジネスプロセス・商品サービス
CSRとCSV。
前節に続き、似ているけれど、同じではない概念です。
CSRはこれまでにも時々触れていますが、Corporate Social Responsibiltyの略で、企業の社会的責任(と訳されていますが、私としては、Corporateは「法人の」と訳した方が、個人(自然人)との対比で、より意味が明確になると考えています)。
※2.2CSR(企業の社会的責任)のC(コーポレート)の意味 ほか参照
CSVは、もちろん、エクセルのファイル形式のことではなく、
Creating Shared Valueの略です。
共有価値の創造、あるいは共通的価値の創造と訳されますが、
Shareという言葉の「分け合う」という意味合いからすると、
共有価値とするのが適切ではないかと思います。
しかし、共有価値の創造という言葉だけでは何のことかわかりませんね。
2011年に発表された
Michael E. Porter and Mark R. Kramer,”Creating Shared Value”
で提唱された考え方です。
筆頭著者のマイケル・ポーター博士は、「競争優位の戦略」(1985年)で、
マーケティング論「界隈」では有名な方です。
ちなみに、あらためてこの本の原著タイトルを確認したところ、副題にCreateとSustainの言葉が入っていました。
Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance
(赤字は引用者による)
1985年→2011年、26年の時を超えて2つの著作のタイトルに、私は、問題意識・着眼点の連続性・一貫性を感じます。
アカデミックなことを論じたいわけではないので、文献的なことはこのくらいにしておいて。
2011年論文を読んでみて、CSV論の主要な論点は次の2点かな、と私なりに考えています。
①社会課題を解決するビジネスは、競争力が高い(競争力を高める)
②①のほうが、社会貢献活動的なCSRより、社会のためになる(CSVはCSRのより優れた形態)
①かつ②、つまり、1つの活動で、会社にとっての価値(利益)と社会にとっての価値(課題解決)を生み出すので、Creating Shared Value(「超訳」すると、会社と社会で価値を分け合う活動を創出する、といったところでしょうか)。
CSRとCSVは対立する概念ではなく、CSVはCSRをより持続的に(Sustaining)行う仕組み、と考えられます。
こっちの方が儲かり続けて競争優位だよ、ですから、ある意味、身もふたもないですね。ただ、単なる儲け至上主義ではなく、こっちの方がより多くの人に喜んでもらえるよ、を起点とするところが重要でしょう。
20年以上もNPO活動等をしていると、CSRの観点からの支援や寄付は、業績が良いときにお話が持ち込まれ、悪くなると打ち切られる、といった経験をします。これが、利益の中から社会課題にお金を出すCSRの限界です。しかし、赤字でもCSRにお金を出し続けることもできないですね。その事情はよくわかりますが、結果的に「金の切れ目が縁の切れ目」という残念な終わり方になります。そうなると「Rはどこに?」という疑問が生じてしまいます。
一方、CSVは、そもそもが社会課題を解決することをビルドインしたビジネスを創るので、社会課題解決への費用は利益計算に織り込み済みということになります。もちろん、ただ、「環境にいいから」「社会にいいから」だけで成功するわけではありません。QCD(品質・価格・納期)の要求を満たしながら、社会課題を解決するビジネスモデル・ビジネスプロセスを構築する必要があります。
わかりやすいビジネスモデルのひとつが、フェアトレードです。
---
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
(フェアトレード・ジャパンWEBサイトより)
---
コンサル・フレーム的に整理すると、こんな感じです。
---
■社会課題の解決=「立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す」
■ビジネスモデル=「貿易のしくみ」
■ビジネスプロセス=「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入する」■商品サービス=具体例として、実際にユーザーが購入するコーヒー・紅茶・チョコレートなど
---
手前みそながら、実例として、ガラパゴス勝手大使として、100%ガラパゴス産認証マーク付コーヒー豆のご紹介をしておきます。
とはいえ、そんな特殊なことでなければCSVはできないのか、というと、そうではありません。
マーケティングの大家であるポーター博士の論文ではネスレなどの大企業の例が紹介されていますが、大企業でなければできないのか、というと、そうではありません。
コーヒー・紅茶・チョコレートなどの嗜好品・toC商品でなければできないのか、というと、そうではありません。
(これらの嗜好品のフェアトレード品が多いのは、それだけ、通常のトレードがアンフェアな構造になっている、ということの「投影」です)
グリーン購入ネットワーク(GPN)が運営する「エコ商品ねっと」は、環境配慮製品の日本最大級のカタログサイトですが、本日時点で13165件の商品が掲載されています。サプライヤーは大企業に限りませんし、toB商品・サービスも含まれています。エコ商品を供給する側が、環境問題にフォーカスしたCSVビジネスを営む事業者となります。
※こちらも、グリーン購入勝手大使(GPN理事)として、手前みそです。
さきほどのフレームに戻ると、これは、CSVの考え方でビジネスを考えるための必要最小限の論点です。
---
■社会課題の解決:なぜその商品サービスを提供するのか
■ビジネスモデル:どのように稼ぐのか
■ビジネスプロセス:どのように商品サービスを提供するのか
■商品サービス:実際、何を買っていただくのか
---
そして、社会課題というと漠然としてしまうので、ここで思い出していただきたいのが「自社ワールド」です↓。
---
5. 社会の繁栄(第2部・第5章・リード)より再掲
---
Creatingを考える前に、ValueをShareするのは誰なのでしょうか?
それは、自社ワールドの中の人々(いわゆるステークホルダー)です。
その人々の「本当は○○したいけど、●●が理由で、できない」の「●●」をなくす商品サービス(☆☆)を、あなたの会社が新たに提供できるようになったら、どうでしょうか?
「あなたの会社の☆☆のおかげで、●●が解消されて、○○ができた」になりますね。結果、「ありがとう」とともに、商品サービスの代価をいただくことになりますね。
より多くの人々の「●●」をなくす=より多くの☆☆が売れる=より多くの「ありがとう」と代価をいただける。
そう考えると、あらゆるビジネスの本質と起点はCSV、と言えるのではないでしょうか。
自社ワールド、解像度をあげて注意深く観察すると、そこにビジネスの種子や芽が見つかりますよ。
あなたの会社は、自社ワールドの中の誰の問題を解決したいですか?
最後に。CSVを具体化するビジネスは、今行っていないことなら、中小企業庁の定義する新事業活動の5類型のいずれかに該当することになるでしょう。
①新商品の開発又は生産
②新役務の開発又は提供
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入
⑤技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
というわけで、CSVを考えることは、経営革新の入り口の一つになるのです。