山内経営会計事務所

従業員の安全を守る『安全衛生計画書』の作成方法

23.07.25
ビジネス【労働法】
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職場における事故や災害を防止し、従業員の安全と健康を守ることは事業者の責務です。
この安全衛生水準を向上させ継続するには、具体的な安全衛生目標を定めることが重要です。
そして、目標を達成するために厚生労働省や各都道府県の労働局は『安全衛生計画書』の作成を推奨しています。
安全衛生計画書の作成は法律で義務づけられたものではありません。しかし、場合によっては労働基準監督署に提出を求められることもあります。
職場の安全衛生を考えるうえでは欠かせない安全衛生計画書の作成方法を解説します。
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安全衛生計画書を作成する重要性

労働災害とは、業務が原因で従業員が負傷したり病気になったりすることで、一般的に『労災』と略されます。
2022年の労災の発生件数は新型コロナウイルス感染症によるものを除くと、死亡者数が774人と過去最少を記録しました。
一方で、休業4日以上の死傷者数は13万2,355人と、過去20年間で最多となっています。

労働安全衛生法はこれらの労災を防ぐための法律で、事業者にはこの法律に基づく労災対策が義務づけられています。
ちなみに安全衛生の『安全』とは従業員の負傷を防ぐこと、『衛生』は従業員の疾病を防ぐことを意味します。

労働安全衛生関係法令で事業者に義務づけられているのは、危険防止の措置、健康管理の措置、安全衛生管理体制の整備、安全衛生教育の実施です。
また、労働者数50人以上など、業種ごとに定められる一定の規模の事業場では、労災を防止するための対策について労働者の意見を反映させる衛生委員会や安全委員会、もしくは両委員会を統合した安全衛生委員会の設置が必要となります。
これらの委員会の活動には、労災を防止するための安全衛生に関する計画が必須です。
この計画をまとめたものが安全衛生計画書で、委員会は作成した計画書に沿って対策を実施していかなければいけません。

一方で、労働者数50人未満の事業場には委員会の設置が義務づけられておらず、安全衛生計画書を作成する必要もありません。
しかし、大規模の事業場と比べると、従業員数が50人未満の小規模事業場のほうが労災の発生率は高いとされています。
すべての事業者には労災を防止する義務があり、委員会の設置や安全衛生計画書の作成が義務づけられていなくても、対策が不要というわけではありません。

厚生労働省や各都道府県の労働局は事業場の規模を問わず、安全衛生計画書の作成と活用を推奨しています。
従業員が安心して働けるように、労働者数50人未満の事業場でも安全衛生計画書を作成する、もしくは職場の安全や衛生に関して従業員の意見を聞くための機会を設けましょう。

計画書を作成する前に基本方針や目標を決めておく

まず、安全衛生計画書を作成する前に、事業者は安全衛生に関する企業の基本方針を決めなければなりません。
厚生労働省の示す『労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針』では、労災の防止や安全衛生活動の実施、安全衛生に関する規程の遵守、労働安全衛生マネジメントシステムに従って行う措置の実施などを盛り込んだものを、基本方針としています。
ほかにも多くの企業が、ホームページなどで安全衛生の基本方針を明示していますので、参考にするとよいでしょう。

基本方針が固まったら、災害が発生する可能性や被害の程度などを考慮してリスクを見積もり、リスクを除去・低減する優先順位を設定(リスクアセスメント)します。
また、基本方針に基づき、「死亡事故0件と休業災害0件を達成」など、具体的な安全衛生目標を設定することも重要です。
設定した目標は、従業員や関係者に周知しておきましょう。

リスクアセスメントができたら、作業ごとに危険有害要因をピックアップしたうえで、現状の把握を行い、自社の課題を洗い出します。
課題の洗い出しには、『安全衛生マネジメント協会』や、『中央労働災害防止協会』などの各協会が提供しているチェックシートなどを活用するのがおすすめです。

基本方針や目標などが決まったら、実施する期間を設定し、安全衛生計画書に記入していきます。
「いつ、誰が、何をするか」など具体的事項を検討・決定し、先に決めておいた優先順位を考慮しつつ、実現性のある実施項目や日程などを決めていきます。
特に建設現場など、工事の進捗状況に応じてリスクが変化しやすい事業場であれば、進捗の各段階で実施する項目を検討し、決定していくことが大切です。

重要なのは、安全衛生計画書に従って安全衛生活動を実施し、常に評価と改善を行っていくことです。
安全衛生計画書は1年間のスパンで策定することが多いため、1年経った時点で実施状況を振り返り、次の計画書に活かします。
場合によっては1年を待たずに計画書を見直すというケースもあります。

労災はいつ起きるかわかりません。
日々の業務のなかでリスクや改善すべき事項が認められれば、すぐに計画書に反映するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。