山内経営会計事務所

運用が始まった『オンライン資格確認』を改めて理解する

23.07.04
業種別【医業】
dummy
オンラインで患者の医療情報を確認できる『オンライン資格確認』が、2023年4月1日より本格的にスタートしました。
オンライン資格確認を導入することで、窓口の受付業務の簡略化やデータに基づいた診療の実現など、医療機関にはさまざまなメリットがあります。
すでに多くの病院や診療所が運用を始めている一方で、顔認証付きカードリーダーの申込みや準備は終わっているものの、まだ運用がスタートできていない医療機関も存在します。
これから運用を開始する医療機関に向けて、改めてオンライン資格確認の仕組みやメリットを説明します。
dummy

オンライン資格確認が導入された経緯と医療機関側のメリット

マイナンバーカードを健康保険証として取り扱う、いわゆる『マイナ保険証』は政府が積極的に普及を進めている施策の一つです。
マイナ保険証への移行に伴い、現行の健康保険証は2024年度の秋までに廃止となる見込みです。

政府はマイナ保険証を諸外国に比べて遅れている日本の医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤にしようと考えており、その一環として、2022年6月7日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針 2022』において、医療機関におけるオンライン資格確認の導入の義務化が盛り込まれました。

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードに組み込まれているICチップを読み取ることによって、その患者が加入している保険などの資格情報をオンラインで確認できる仕組みのことです。

このオンライン資格確認を導入することで、医療機関にはさまざまなメリットがあります。
まず、受付業務が簡略化され、素早い資格情報の確認ができるようになりました。
医療機関は患者が来院して提出したマイナ保険証を顔認証付きカードリーダーで読み取り、即座にオンライン資格確認などのシステムを通じて、患者の加入している医療保険などの資格情報や診療情報を取得することができます。
オンライン資格確認はマイナ保険証での利用が望ましいとされていますが、現行の健康保険証などでも番号を入力することで利用することが可能です。

また、患者の同意があれば、診療情報・薬剤情報・特定健診等情報の閲覧もできるようになり、複数の情報に基づいた診療や服薬指導が可能になります。

医療機関や薬局におけるオンライン資格確認の運用状況

患者がマイナンバーカードをマイナ保険証として利用するためには、マイナンバーカードの健康保険証利用の申込みが必要です。
そして医療機関においても、オンライン資格確認のために環境を整える必要があります。

オンライン資格確認に必要な機器は、顔認証付きカードリーダー、資格確認用のパソコン、ネットワーク環境、レセプトコンピュータです。
顔認証付きカードリーダーは『医療機関等向けポータルサイト』でアカウントを作成したうえで、複数の製品のなかから選んで申し込みを行います。
すでに多くの医療機関と薬局が申し込みを終えており、厚生労働省が公表している『オンライン資格確認の都道府県別導入状況について』によると、2023年6月4日時点で医療機関と薬局の申込率の合計が91.6%に達しました。

また、オンライン資格確認の導入には現在使用しているレセプトコンピュータの改修や利用申請などを行う必要がありますが、オンライン資格確認への接続の準備を終えた医療機関と薬局の割合を示す接続率も合計81.1%と、高い数字を示しています。

1年前の2022年6月5日の時点では、全体の20.8%しかオンライン資格確認の運用を始めていませんでした。
しかし、現在ではオンライン資格確認の運用を開始している医療機関と薬局の割合を示す参加率が75.5%となっていることから、導入の義務化に伴い、多くの医療機関がオンライン資格確認の運用を始めたことがわかります。

オンライン資格確認の導入は、『保険医療機関及び保険医療養担当規則』に規定されている義務です。
個別に判断されますが、導入しないでいると場合によっては地方厚生(支)局による指導が行われる可能性があります。
まだ導入していない医療機関においては、真剣に運用を検討するほうがよいでしょう。

ただし、訪問診療のみを提供する医療機関はモバイル端末を使用したシステムの構築が必要となるため、導入まで猶予が設けられており、導入期限が2024年4月目途となっています。

また、紙レセプトでの請求が認められている医療機関や薬局は義務化の対象外となりますが、CDやDVDなどの光ディスクで請求を行っている医療機関や薬局は義務化の対象になります。

もう準備を終えた医療機関においても、自院のシステム環境や患者への周知など、正しく開始できるかを再度確認しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。