山内経営会計事務所

エンゲージメント(社員満足度)調査をしても上手くいかないワケ~サーベイフィードバック

20.09.06
チームビルディング
・今、大流行の「HRテック」を導入して、
 離職を減らそう!
・社員の働きがいが生産性に直結しているらしい!
・早速、わが社でも「エンゲージメント・サーベイ」を実施しよう!

HRテックやエンゲージメントのサービスの中でも、「組織や職場のコンディションを見える化」することを目指すサーベイ(組織調査)は、近年大流行している経営ツールの1つです。


しかし、現場のメンバーが、サーベイに疲弊感を抱き、かえって仕事の生産性を下げてしまっている。


これが「コケてしまっているサーベイ」の典型です。
<参考文献>
 中原淳 「サーベイ・フィードバック入門」P.3~P6より抜粋
*今回の内容は、「サーベイ・フィードバック入門」の内容を中心に書いています。

先日、立教大学経営学部教授の中原淳先生が書いた「サーベイ・フィードバック入門」を読みました。 


中原先生は、日本に数少ない組織開発分野の研究者で、人材開発・組織開発に関する著書を多数出版されています。 


サーベイ・フィードバックとは、 

サーベイ=組織調査などで得られたデータを、 

フィードバック=現場に正しく届けて変革を導き、 

現場の変化・職場の改善を導く技術です。 


これまでの「勘と経験によるマネジメント」から脱却し、 
マネジメント層が再現性のある打ち手を打つためのツールなのです。

組織調査を導入しても上手くいかないワケ

日本でも、社員満足度調査などは多く取り入れられていますが、 
冒頭で伝えたように上手く行っていないことも多いようです。 


その理由は、 
データによる「組織の見える化」が目的化されているためです。 

残念ながら組織の現状が分かっただけでは、組織は何も変化しません。 

「見える化」は組織づくりの始まりであって、 
それ以上の何物でもないのです。 


ただ、HRテックの中には、 
組織の見える化だけを目的としたものが多いのも事実です。 


私も組織開発を生業とする者として、 
「HRエキスポ」や「働き方改革エキスポ」などに行って 
様々なHRサービスを見てきました。 


そこで感じるのは、 
そもそも組織の現場を変えるための「打ち手」を打てる人材が、 
HR「テック」企業の中に不足しているため、 
結果として「見える化だけ」が目的とされてしまうということです。 

 それでも組織調査が必要なワケ 

高度経済成長期までは、モノは作れば売れた時代でした。
大量生産・大量消費の時代なので、重要だったのは効率性でした。


そのような状況では、
組織の指示命令系統もトップダウンが有効でした。

社員も、「頑張れば豊かになる」という価値観があり、
言われたことをそのままやれば成果が出る時代でした。

どの会社の組織も、主力は、
「日本人・正社員・男性」であり、
「新卒一括採用-終身雇用」が当たり前でした。


しかし、今のビジネスを取り巻く環境は大きく変わりました。

モノは売れなくなり、グローバル化が進み、
人々の価値観は多様化し、組織の問題も複雑化しています。


女性や外国人の労働者率が増え、
ここ最近では「ジョブ型雇用」がトレンドとなっています。


このような状況では、トップダウンで組織を変えるのは至難の業です。
結果、組織を変えるマネジメントは現場の管理職に委ねられています。


現場の管理職には次のことが求められています。

多様化する人材をまとめ、
働く人々の働きがいを高めながら成果を出していく。

言うのは簡単ですが、実際行うとなると誰でも出来ることでしょうか?


しかし多くの会社では、
管理職の能力に依存しているのが現状と言えるでしょう。

しかも、管理職としての適性見ず、
ワーカーとしての成果や年功で管理者になる場合も多々あります。


「名選手、名監督にあらず。」

日本では使い古された言葉です。


では、名監督になるのに必要な能力は何でしょう?

その一つは、「己を知り、相手を知る」ことだと思います。

例えば、ID野球を標榜した野村克也監督のように、
データを使ったうえで、己や仲間の強みを活かしながら、
組織をより良いものへと変えていくのです。


組織調査は、組織の現状を見える化するための武器です。

生産性が高い組織と自社を比較することも可能です。


調査によりデータを集め、
客観的な基準により「見える化」することで、
組織のメンバーに変化する必要性を分かりやすく伝え、
肚落ちしてもらうためのツールで

テクノロジーが人を変えるという誤解

組織調査のデータで分かった課題を改善すれば、
「経営」は良くなります。

経営者層の関心は、「経営」にあるので、
当然、課題を改善しようという「選択」をします。


しかし、現実に組織調査の結果を変えるのは、
経営者層ではなく、現場の人材の行動です。


現場の人材に興味があるのは、
自分たちの「人生の質」です。

自分たちの「人生の質」が向上すると思えなければ、
行動を変えるという「選択」をすることはありません。


なぜ、そう言い切れるのでしょうか?

それは、特に日本人に備わっている
「同調圧力」「現状維持バイアス」というメンタルモデルが影響しているからです。

メンタルモデルとは、人々の潜在意識の奥底にある信条などといったもので、
これが変わらないと行動の変容の妨げになるようなものを言います。


「職場の同調圧力」

皆さんも経験があるとおり、同じ職場に長く勤めていると、
心の底では言いたいことがあっても、
人間関係を壊したくないばかりに言えないことがあると思います。

そういった空気を読む能力が、
職場の働き方を変えることを阻むのです。


「現状維持バイアス」

人は、何かを変化させることにより得られるメリットよりも、
現状を維持することによるメリットを高く見積もってしまうものです。

変わらないことに対する「快的さ」が、
変わることに対する「不快さ」を上回るために生じるバイアスです。

現状維持バイアスに囚われた人は、
どんなに危機が迫ろうとも、組織の中に不合理が起ころうとも、
変わろうとしません。


組織変革ができずに、
市場から退場していった企業の多くでは、
現状維持バイアスが働いています。


このようなバイアスを超え、
現場の人材の行動を変えるためにはどうすれば良いのでしょうか?


長くなりましたので、

『組織調査により現場が変わる4ステップ』については、

次回お伝えしたいと思います。