山内経営会計事務所

建設業経営者なら知っておきたい! 資金調達成功のコツ その1

18.12.25
業種別【建設業】
dummy
建設業の会計は、他の業種と比べて複雑になりがちです。
理由としては、工事1件当たりの金額が大きいことに加え、工期が長期間に渡る、下請けなどの外注が多いといった、業界の特殊性があげられます。
工事が完成して初めて収支が見えることもあり、帳簿上は黒字であってもストックが足りず、黒字倒産が起きやすい業界ともいわれています。
堅実な資金繰りはもちろんですが、いざという時のため、運転資金を確実に調達する手段も知っておきたいもの。
今回から2回に分けて、資金調達の種類と窓口をご紹介します。
dummy
低金利が魅力の『日本政策金融公庫』 

日本政策金融公庫は、2008年に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が統合して生まれた政府系の金融機関の一つです。
融資といえば、ここを思い浮かべる人も多いでしょう。
建設業の経営者が資金調達を考えるときには、まず選択肢に入れておきたいところです。 

日本政策金融公庫の大きなメリットは、なんといっても金利が低いところです。 
たとえば、常時雇用の従業員が20人以下なら申し込みができる『小規模事業者経営改善資金』であれば、金利は1.11%(2018年11月現在)となっています。 

融資審査では、新規性よりも事業の継続性や安定性が重視されますが、建設業は既存のビジネスモデルであり、どのように売上を上げていくのかがわかりやすいため、審査の際に有利といわれています。 

ただその一方で、自己資金がある程度なければ審査に通りにくいというデメリットがあります。 
また、金利が低く高額融資が可能なため、それだけ審査にも時間がかかります。 
「このビジネスモデルで本当に収益が見込めるのか」を慎重に判断するため、しっかりとした事業計画を立てるなどの準備も求められます。 


融資の保証人になってくれる『信用保証協会』 

自己資金や担保がない場合には、『信用保証協会』を利用して資金調達をするというのも一つの方法です。 
信用保証協会は、信用保証協会法に基づいて、中小企業などの円滑な資金調達支援を目的として設立された公的機関で、事業者が銀行などから融資を受ける際の保証人になってもらうことができます。
賃貸物件を借りるときの保証会社をイメージするとわかりやすいかもしれません。 
同じ公的機関ですが、日本政策金融公庫が審査から融資実行まですべて行うところであるのに対し、信用保証協会は、保証に特化した機関といえるでしょう。 
信用保証協会を利用すれば、金融機関から融資を受けるときに債務者の信用保証を担保してもらうことができ、もしも債務者が融資資金を返済できず、返済が滞ったときには、信用保証協会が金融機関に代位弁済を行うことになります。 
取引金融機関のプロパー融資とは別枠で融資を受けられるところも特徴で、うまくいけば、普通に金融機関で融資を受けるよりも高額の融資を実現させることもできます。 

この『信用保証協会付き融資』を受けるためには、協会の保証を利用する対価として、信用保証料を支払う必要があります。
保証料は融資額などによって変動しますが、保証料率としてはおおよそ0.5%~2%の間となっています。 


現金化がスピーディーな『ファクタリング』 

建設業の資金調達として、これも押さえておきたいのが『ファクタリング』です。 
取引で発生した売掛金を債権として売却し、支払期日前に現金を得る資金調達方法のことで、建設業の場合は、工事請負代金債権をファクタリング会社に売却して資金化することが一般的です。 
ファクタリングは債権売買であって借り入れではないため、返済の義務はありません。 
また、資金化までの期間が短いところも特徴で、業者によっては即日現金化が可能だと謳っているところもあります。 

建設業では手形取引が少なくありませんが、手形にも対応しているファクタリング会社もあります。 
「売上は上がっているのに入金が数カ月先で手元に現金がない」というようなときには、ファクタリングを利用するのも一つの手です。 

このときに注意しておきたいのが手数料です。 
一般的には、10%前後が手数料の相場とされており、5,000万円の工事請負代金のファクタリングであれば、500万円前後が手数料として割り引かれることになります。 

また、ファクタリング会社によっては、債権者(建設業者)との2社間ファクタリングではなく、債務者(建設業者の取引先)も交えた3社間ファクタリングのところもあります。 
3社間ファクタリングでは、債務者に工事請負代金をファクタリングすることが知られてしまうため、「資金繰りが厳しいのだな」という印象を与えかねないという点も知っておいたほうがよいでしょう。 


次回は、『地域建設業経営強化融資制度』と『下請セーフティネット債務保証事業』の2つについて、要件や資金化までの流れををご紹介します。