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業績アップの配置換え、業績ダウンの配置換え

15.11.13
ビジネス【人的資源】
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「どちらにお勤めですか?」と訊かれることがあります。日本では「就職」ではなく「就社」だからです。それは、1つの会社に長く勤めようとするからで、そのためには企業の事情に合わせて仕事を換えることは、当然と思われています。

企業が必要あって従業員の配置を換えるのであれば、業績にはプラスになって当然です。規模が小さい場合は異動が少ないですが、従業員にとっては1つの仕事を安定して続けることができるというメリットもあります。
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<業績アップをもたらす配置換え> 
プラスの面を見ると、次のような場合があります。 

従業員のスキルや知識を高めるための配置転換は、中途採用をあまりしない場合、また、外部のベテランに頼らない場合、つまり自前でやろうとするなら必須です。それ以外にも配置換えは、職場や取引先との人間関係を変えることにより、職場を活性化させる効果もあります。 

<業績ダウンにつながる配置換え> 
しかしながら、企業がよかれと思う配置換えも、人によっては迷惑ということもあり、望まない配置換えは、マイナスの効果をもたらします。 

通信の仕事がしたくてNTTに入社したある幹部候補生は、転勤のたびに地方の労使紛争に巻き込まれるのがいやで、退職しました。出世コースほどいろいろな仕事を覚えるために、配置換えが多いのです。

また、我慢をして次の異動まで待て、という手もありますが、その間は業績アップというわけにはいかないでしょう。

なぜこのような行き違いが起こるかというと、人事が本人の希望を聞かないからです。それを防ぐために、社内公募制や自己申告制を実施する企業が増えています。

また、異動の少ないコースを準備する場合もあり、育児や介護に配慮するようになりました。日本の人事に多かった一方的なやり方は、働く人の満足感を阻害することがあり、最悪の場合は退社につながります。 

<人事の責任と権限> 
リストラやいやがらせ人事、または窓際という言葉もありますが、これが業績を下げる配置換えとは限りません。会社にとって能率の悪い従業員を摩擦のないように遇するのは、業績を上げることにもなるからです。

人事権というのは、従業員全体をもっとも効率よく、そしてやりがいのある満足感の高い集団にするための武器と言ってもいいでしょう。 


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


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