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エースの「空白期間」が組織を活性化させる

15.06.28
ビジネス【人的資源】
6月上旬に開幕した女子サッカーのワールドカップに、なでしこジャパンこと日本女子代表が出場している。4ヵ国によるグループリーグを3連勝の首位で通過し、決勝トーナメントに進出した。 

23人のメンバーには、36歳の澤穂希が含まれている。4年前のW杯で初優勝の立役者となった彼女は、いまなお日本女子サッカーの第一線で活躍している。 

もっとも、過去1年は代表から遠ざかっていた。佐々木則夫監督は、“澤抜き”のグループ作りを検討した。
そこにはふたつの理由がある。 

スポーツでも会社でも、組織は経験豊富な人材を中心に動く。若手や中堅に「先輩に遠慮せずに、自分で判断しなさい」と指示しても、経験と実績を持った人物が頼られるのは避けられない。 

そこで、エース格の人材を意図的に外したら? 誰にも寄りかかれなくなった若手や中堅は、自分で答えを出さなければならない。本人にとっては苦しい時間でも、自己解決の能力が磨かれていく。 

一方、決断の現場から離れたエース格の人材はどうなるか。自分以外の他者が下す判断から、“気づき”を得ることができるはずだ。最前線から退いたことで緊張感から解放され、精神的なリフレッシュも見込める。 

澤のいない1年間を経て、なでしこジャパンは若手や中堅の自立が促された。澤自身も戦いに飢えたメンタルで、W杯に臨むことができている。 

会社の規模から人事異動が望めない組織でも、人材の才能を掘り起こすことはできる。組織の底上げを図りたいなら、エースに頼らない仕組みを作ってみるのは効果的だ。 

エースを中心から外す場合は、その意図を本人に説明することもお忘れなく。 


スポーツの視点からみる人的資源 


[プロフィール] 
戸塚 啓(とつか・けい) 
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。 

[記事提供] 

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