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給与体系の見直しは一大プロジェクト

15.05.17
ビジネス【人的資源】
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日本の給与制度はごくごく単純化すれば、「職能給」と言われます。これは給与を決めるのに、人の「能力」と「仕事」と「努力」という3つの要素をカウントするもので、そのブレンド具合はケースバイケースです。

実際は、えてして年功賃金に流れやすく、企業からも働く人たちからも不平不満がよく聞かれます。長期勤続者が高給になり、人件費がかさみやすい。能力のある人にとっては不公平。超過勤務による長時間労働の慣習化。そして、成果主義を取り入れるべきだという声が消えません。

果たして、いまの給与体系を、よりよいものにするにはどうすればいいのでしょうか。
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給与の中でも変動幅が大きいのはボーナスです。そして給与の安定的な部分は基本給です。一般的に、基本給は入社したときの格付けによって決められ、順調に行けば昇給があります。そして、その見通しによって、人は将来設計を考えるでしょう。それゆえ、給与体系は、アルバイトで働く場合を除いて、企業の構成員にとってはきわめて重要な問題です。

ということは企業にとって、給与体系は簡単に変更できるものではなく、大きな企業であるほど手直しするのは大事業なのです。たとえば、練りに練って何十年に一度というような長期計画となります。それゆえに、年功賃金と悪口を言われても、しぶとく生き残っています。

成果主義は、企業内労働市場に競争原理を取り入れるための一つの突破口であり、その方向性を否定する企業はありません。管理職や研究職を別建てにするなど、全社的な人事変革を目論む企業もあるでしょう。

また、年功的昇給をフラット化させるために、昇進昇格のルールを変更している企業も見受けられます。ほとんどの企業では、高齢者の昇給を頭打ちにし、役職を回転させて中高年者の基本給の引き下げを実施しています。

そして人件費の重心を若年者へ移しつつありますが、全体への効果はすぐに表れるものではありません。これは、給与体系の変更ではなく、「運用」の変更なのです。それくらい、給与体系は直接変えることが難しいということでしょう。


企業成長のための人的資源熟考


[プロフィール]
佐野 陽子(さの・ようこ)
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。


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