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ホテルで貴重品を紛失された! 宿泊先のトラブルにどう対処する?

24.05.28
ビジネス【法律豆知識】
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出張などでホテルや旅館などの宿泊施設を利用した際に、トラブルに見舞われることがあります。
預けていた貴重品を紛失されたり、部屋の衛生環境に問題があったりと、その内容はさまざまです。
ケースによっては、宿泊施設側に責任を求めることもできますが、逆に宿泊客が備品などを壊した場合には、損賠賠償を請求される可能性もあります。
また、過度なクレームは、カスタマーハラスメントとして法的にも禁止されています。
宿泊施設を巡るトラブルについて、宿泊客の立場で対応などを考えていきましょう。
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宿泊施設と宿泊客が守る必要のある義務

ホテルや旅館などに泊まる場合、宿泊施設と宿泊客の間には、宿泊契約が成立します。
普段は契約を意識することはないかもしれませんが、たとえば、宿泊先に電話で「予約をお願いします」と伝えた際に、施設側が「承りました」と返答した時点で、双方が合意に至ったこととなり、口約束であっても宿泊契約を締結したことになります。

宿泊契約が結ばれると、宿泊施設側は予約した客を泊まらせる義務が生じ、宿泊客側は宿泊料金を支払う義務と、施設側が定めている『宿泊約款』を守る義務が生じます。
『宿泊約款』とは、契約内容や施設の利用条件などについてまとめたルールブックのようなもので、政府登録以外の宿泊施設は作成が任意ですが、ほとんどのホテルや旅館の部屋に備えてあります。
宿泊先でファイリングされた宿泊約款を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

万が一、ホテルや旅館でトラブルが起きた際には、この宿泊約款をチェックしてみましょう。
宿泊約款には「寄託物等の取扱い」についての記載があることが多く、たとえば、フロントに貴重品を預けた際に、施設側の過失によって滅失および毀損等の損害が生じたときは、その損害を賠償する旨が書かれています。
ただし、損害賠償が行われるのはあくまで施設側の過失があった場合に限られ、地震や火災などの不可抗力による損害は賠償されません。
また、貴重品であることを告げずに預けていたり、損害額が明確に算出できなかったりする場合は、損害額が制限されることもあります。

逆に、宿泊約款には宿泊客の責任についても記載されているのが一般的です。
宿泊客は、故意もしくは過失によって施設に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければいけません。
2024年3月には、大学の非公認課外活動団体に所属する学生たちが、故意に天井を壊す、障子を破るなどの迷惑行為によって、合宿先の旅館に損害を与えたことがニュースになりました。
このようなケースでは、壊した備品の修理費用はもちろん、修理期間中に備品が使えないことで施設側が被った損害についても賠償を求められる可能性があります。

宿泊先でトコジラミに刺されてしまったら

近年、日本の宿泊業界を悩ませているのが、トコジラミの問題です。
人の血を吸うトコジラミは、寝具やソファ、マットレスなどに潜み、刺されると猛烈なかゆみが生じます。
国内における相談件数が増えており、近年はSNS上でも、宿泊先でトコジラミに刺されたという報告がありました。

もし、トコジラミに刺された可能性があれば、まず被害を広げないためにも、宿泊先にその旨を伝えます。
また、賠償を請求するにしても、その宿泊先に泊まったことでトコジラミに刺されたことを立証する必要があるため、報告はできるだけ早めに行いましょう。

旅館業法の第4条で、宿泊施設は「換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない」と定められています。
宿泊客がトコジラミに刺される状況は衛生的とはいえず、宿泊契約の債務不履行となることから、場合によっては宿泊費の返還や治療費などを請求できる場合があります。

ただし、安易にSNSなどに施設名を出して「トコジラミに刺された」などと投稿すると、たとえ事実であっても、名誉毀損罪などに問われることもあるので注意してください。
まずは、施設側に事実だけを伝えることが重要です。

トコジラミの問題に限らず、宿泊先で施設側の提供するサービスや内容に納得がいかず、クレームをつけてしまうことがあります。
しかし、2023年6月に改正された旅館業法が同年12月13日より施行され、施設側に過重な負担となる要求を繰り返す、いわゆる「迷惑客」の宿泊を施設側が拒めるようになりました。
この改正には、これまで多くのホテルや旅館が迷惑客のカスタマーハラスメント(カスハラ)に悩まされてきたことが背景にあります。

この改正によって、不当な部屋のアップグレードや、契約にない送迎、特定のスタッフにのみ対応を求める行為などは、すべて宿泊拒否の事由に該当します。
当然、暴言や脅迫、侮辱や中傷なども許されません。
宿泊先でトラブルが起きれば、施設側に報告して何らかの対応をしてもらう必要はありますが、その際もカスハラにならないように注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。