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『住宅の採光規定』の緩和がメーカーに与える影響は?

23.08.01
業種別【建設業】
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2022年6月に公布された改正法により、建築基準法や建築物省エネ法など、建築に関するさまざまなルールが変わりつつあります。
それぞれ段階的に施行されているなか、2023年4月1日からは住宅の居室に関する『住宅の採光規定の見直し』が変更されました。
建築基準法では、窓の大きさに一定の基準が設けられています。
今回の法改正で採光ルールが緩和され、いくつかの条件を満たせばこれまでの基準のものより小さい窓が設置できるようになりました。
採光ルールの具体的な中身や、緩和が行われる背景などについて解説します。
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有効採光面積と日当たりについての考え方

太陽光は人が快適かつ健康的に暮らすうえで、欠かせないものです。
昼間も電気を点けないと暮らせないような部屋では、快適に過ごせないのはもちろん、住人の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

建築基準法では、居室の明るさを確保して湿気などを防ぐ目的で、採光に関して一定の基準を定めています。
居室の採光に必要な窓の広さ(面積)のことを『有効採光面積』と呼びます。
建築基準法第28条1項では、住宅や学校などの建築物で政令にて定めるものの居室には、採光のための窓その他の開口部を設け、その居室の床面積に対して、5分の1から10分の1までの間で居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない(以上、要約)、と定められています。

有効採光面積は単に窓の面積をそのまま出した数値というわけではなく、窓の面積に光の入りやすさを示す数値の『採光補正係数』をかけて求めます。
注意したいのは、有効採光面積が大きい居室は必ず日当たりがよい、というわけではないことです。
建築基準法における採光の基準は、あくまで有効採光面積で判断され、窓の方角や遮へい物は考慮されません。
窓が北向きだったり、隣家の影になっていたりして日当たりが悪くても、建築基準法の基準を満たしていれば採光面では問題ないことになります。

7分の1以上から10分の1以上に緩和

建築基準法第2条4号では、居室を「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう」と定義しており、玄関やトイレ、浴室や脱衣所、押入れやクローゼットなどは居室ではないため、窓を設置しなくても問題ないとしています。
しかし、居室には必ず窓を設置しなければならず、これまでは居室の床面積の7分の1に満たない有効採光面積の窓しか設置されていない部屋は、居室と認められていませんでした。
7分の1以上ということは、床面積が7畳の部屋であれば、その部屋の窓の有効採光面積は1畳以上必要であるということになります。

しかし、この規定は2023年4月施行の改正により、照明設備を設置すれば10分の1以上でもよいということになりました。

また、令和5年国土交通省告示第86号では「照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられている」居室にあっては、「採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合」を「十分の一とする」と定めています。
これは、窓からの採光以外に、明るさの代替装置として照明設備を設置すれば、窓の有効採光面積が居室の床面積の10分の1でも認めるということを意味しています。
たとえば、床面積が7畳の部屋に照明装置を設置すれば、有効採光面積が1畳以下の窓でも問題ないことになります。

既存の建物を末永く活用するための法改正

設置する照明装置の明るさは、令和5年国土交通省告示第86号で触れられており、床面において50ルクス以上の照度を確保することができるものとされています。
50ルクスは、一般的に廊下や階段に最適とされる明るさであり、もし照明装置を追加する場合も、そこまで大掛かりな工事は必要ありません。

今回の改正には、採光ルールを緩和することで既存の建物を末永く活用できるようにする、という国の狙いがあります。
たとえば、これまで事務所やホテルを住宅に用途変更する場合に、有効採光面積が7分の1以上という規制があるため、工事の負担を考慮して住宅への用途変更を断念するケースが起きていました。

採光ルールが緩和されたことで、窓の有効採光面積を確保するための改修工事は行わずに、照明装置の設置だけで済むケースが増えていくことが予想されます。

この採光ルールの緩和は、メーカーにとっても有用です。
部屋の構造を考える際に窓を小さくレイアウトできるため、設計の自由度が増すでしょう。
また、一般的には窓など開口部面積が小さい方が熱損出も小さいため、省エネにもつながります。

照明設備については、白熱灯やLEDなどの種別や、形状などに制限は設けられていませんが、必要に応じて国土交通省から技術的助言などで示される可能性もあります。

この緩和を受けるためには照明設備の位置などを図面に記して、確認申請を行わなければなりません。
設計を開始する前に、段取りなどを確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。