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インボイス制度開始に向け、新たに発表された負担軽減措置とは

23.01.23
ビジネス【税務・会計】
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2022年12月16日に公表された政府・与党の『令和5年度税制改正大綱』に、インボイス制度で影響を受ける事業者への負担軽減措置がいくつか盛り込まれました。
その一つが、小規模事業者の税負担を減らすための措置です。
今回の大綱では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の企業や個人事業主が課税事業者になったなどの場合は、課税売上高にかかる消費税のうち、一律2割のみを納めることとできることが発表されました。
また、課税事業者の事務負担を軽減するための措置も盛り込まれています。
今回は、新たに発表された軽減措置について解説します。
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小規模事業者の税負担が3年間軽減される

インボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式に関する制度です。
正式名称を『適格請求書等保存方式』といい、適用税率などが記された『適格請求書』のことをインボイスと呼ぶことから、インボイス制度と呼ばれています。

通常、課税事業者は、原則として売り上げ時に受け取った消費税額から、仕入れにかかった消費税額のうち一定の計算により算出した金額を差し引き、その差額分である消費税額を税務署に申告・納税します。
この仕組みのことを『仕入税額控除』といいます。

インボイス制度が始まると、買い手側の事業者は仕入税額控除を受けるために、売り手側の事業者が発行したインボイスの保存などが必要になります。
売り手側の事業者がインボイスを発行するためには、税務署に登録申請を行い、『インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)』として登録しなければなりません。
つまり、買い手側の事業者は、インボイス発行事業者ではない事業者からの仕入れに係る消費税の額は仕入税額控除ができないことになります。

これまで消費税の納付が免除されていた基準期間の課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者も、登録申請をしてインボイス発行事業者になることで、課税事業者として消費税を納める必要が出てきます。
たとえば、消費税率10%の場合、400万円(税抜)で仕入れ、、年間800万円(税抜)を売り上げた場合、売り上げ分の消費税80万円から仕入れ分の消費税40万円を差し引いた40万円を申告・納税する必要があります。

しかし、インボイス制度は、新たにインボイス発行事業者となる免税事業者への影響が大きいため、政府・与党はこれまで負担軽減策を設けるための調整を行ってきました。

今回の税制改正大綱に盛り込まれたのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者になったことまたは課税事業者選択届出書を提出したことにより免税事業者でなくなった場合は、仕入れで払った消費税がいくらであっても、売上にかかる消費税額の2割を納税額にすることができるというものです。
この場合、たとえば年間800万円(税抜)を売り上げた場合、その消費税80万円の2割、つまり納税額は16万円で済ませることができるようになります。
この負担軽減措置は、インボイス制度の開始から3年間適用されます。


少額の取引や値引きに対する事務負担が軽減

消費税の納税額が一律で売上税額の2割になるということは、複雑な計算を必要としないため、事務的な負担の軽減にもなります。

今回の大綱では、事務負担の軽減策として、インボイスを受け取る側に対する措置も盛り込まれました。

インボイス制度の施行後、課税事業者は、課税仕入れについて、インボイス発行事業者と、インボイスを発行できない事業者に分けて、会計処理を行うことになります。
しかし、制度の定着までは会計業務に大きな負担がかかることが予想されます。
そこで、基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者に限り、施行から6年間は1万円未満の少額の取引について、インボイスがなくても、これまで通り一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が行えることになりました。
また、基準期間の課税売上高が1億円超あったとしても、前事業年度開始の日以降6カ月の期間(個人事業者は前年1月1日から6月30日までの期間)の課税売上が5,000万円以下の場合は、対象となります。

さらに、制度の施行後は、インボイス発行事業者には、インボイスの交付と共に、値引きなどを行った際にその値引き額や消費税額などを記載した『返還インボイス(適格返還請求書)』の交付も必要になります。

返還インボイスは売り手と買い手の税率や税額を一致させるためのものですが、買い手の都合で差し引かれた振込手数料などを売り手が値引きとして処理するためには、売り手側が新たな返還インボイスを作成する必要があります。
そのため、インボイス発行事業者の事務負担の軽減を考慮し、1万円未満の少額な値引きについては、返還インボイスの交付義務が免除されることになりました。

今回の改正では、インボイス制度の円滑な施行と定着に向けて、事業者の負担を減らすための措置が講じられました。
それでも、制度の施行後はこれまで必要のなかった会計業務が増えることになるため、事前に準備をしておかなければいけません。

特に重要なのが、インボイス発行事業者の登録申請です。
免税事業者ではなく、すでに課税事業者であっても、インボイス発行事業者の登録をしていないとインボイスが発行できません。
忘れずに申請をしておきましょう。

また、仕入税額控除を受けるために、取引先についてインボイスを発行できる事業者とできない事業者に分け、発行できる事業者に対しては登録番号の確認を行っておくことをおすすめします。

インボイス制度によって納付する消費税額の計算に影響があるため、事業者によっては会計システムの見直しや新しい会計ソフトの導入なども検討する必要があるでしょう。
新たに決定された軽減措置を含め、税理士などの専門家とも相談しながら、2023年10月1日からスタートするインボイス制度に備えておくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年1月現在の法令・情報等に基づいています。