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役員と従業員、会社との法律上の関係性の違いとは?

22.05.10
ビジネス【企業法務】
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株式会社においては、取締役等いわゆる役員と従業員が働いており、いずれに対しても会社から給与が支払われます。
しかし、同じ会社で働いていても、法律上における株式会社と役員間の関係性と、株式会社と従業員間の関係性はまったく異なります。
具体的には、前者は委任契約、後者は雇用契約が締結されているのが通常です。
今回は、2つの違いについて説明します。
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株式会社と役員は委任関係にある

会社法は、株式会社と役員の法律関係を委任関係であると明記しています。
これは、両者の間には、民法上の委任契約の規定が適用されることを意味します。

では、委任契約とはどのような契約なのでしょうか。
委任契約の特徴は『使用者に従属していない』という点にあります。
会社から、業務上の指揮命令を受けないため、受任者が行う業務内容には裁量が認められています。
たとえば、役員は出勤時間が明確に決められているわけではなく、その結果、残業代も発生しません。
また、就業規則の適用もなく、原則として無償です。
ただし、契約によって報酬が発生するよう定めれば、報酬を発生させることも可能です。
株式会社は通常、株主総会の決議において役員の報酬額が決定されます。
多くの会社では、株主総会で総額だけ定めて、各役員への報酬の内訳は取締役会で決めています。

役員は、株主総会の過半数の同意があれば解任できるため、法的地位は必ずしも強固というわけではありません
また、会社に対し、善管注意義務や忠実義務といった法的責任を負っており、各種義務に違反した場合は、重い損害賠償責任を負う可能性もあります。

一方、会社と従業員の法律関係は雇用関係です。
これは、株式会社と役員間において民法上の雇用契約の規定が適用されていること、その他の各種労働法(労働契約法等)の適用があることを意味します。

雇用契約の特徴は、委任契約と逆で『使用者に従属している』という点にあります。
勤務場所や勤務時間は雇用契約締結時において確定し、使用者から指揮命令も受けます。
また、就業規則の適用もあり、勤務時間を超過して勤務した場合は残業手当が付きます。
使用者からの解雇が労働契約法上極めて難しいとされていることから、法的地位はかなり強固だといえます。

役員と従業員の法的地位は、一見矛盾するように思えるのですが、必ずしもそうではなく、両者の地位を併せ持つような法的地位もあります。
いわゆる『使用人兼務役員』と呼ばれているものです。
これは役員のうち、従業員としての身分も併有し、実際に従業員として職務に従事している人のことをいいます。

役員のなかでも、代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人、副社長、専務、常務そのほか、これらに準ずる職制上の地位を有する役員、委員会設置会社の取締役、会計参与および監査役並びに監事、同族会社の役員のうち一定の要件を満たす人は使用人兼務役員になれないものとされています。

使用人兼務役員は、役員の法的地位と従業員の法的地位を併せ持つため、善管注意義務や損害賠償責任といった会社法上の役員としての義務や責任を負います。
役員として解任された場合や任期満了後に再選されなかった場合でも、従業員としての法的地位に残る点が特徴だといえるでしょう。

また、法人税との関連で、使用人兼務役員への報酬は、通常の役員と同様に、原則として損金参入が認められています。
しかし、役員としての報酬と従業員としての報酬の総額が不相当に高額な場合は、損金参入が認められません。

さらに、従業員としての賃金請求権は、2020年4月1日以降に発生したものについては3年で消滅時効にかかりますが、役員報酬請求権については、商事債権として時効期間は5年になります。
たとえば、未払賃金請求や未払役員報酬請求について訴訟を行う場合、訴状提出時に役員報酬のみ請求していたが、実際は賃金請求部分があるとされた場合に賃金請求部分が時効消滅してしまうリスクがあるのです。
そのような場合は未払賃金請求部分について、時効を中断しておく必要がある点に注意しましょう。

このように株式会社と役員あるいは従業員の法律関係は、場合によっては混在することもあり、税法上の処理や時効中断の対応の仕方が変ってくることがあります。
役員と従業員の法的地位を正しく理解して、それぞれの義務や権利を尊重した経営を行っていきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年5月現在の法令・情報等に基づいています。