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税務調査が実施されづらくなる? 書面添付制度とは

21.10.26
ビジネス【税務・会計】
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課税対象者に対して行なった2019事務年度の税務調査の件数は、法人税で約7万6,000件、所得税で約43万件(文書、電話などによる簡易な接触も含める)、相続税で約1万件にのぼります。
納税者にとってはできれば避けたい税務調査ですが、これを拒否することはできません。
しかし、税理士に『書面添付制度』の利用を依頼することで、税務調査の行われる確率を下げることはできます。
税理士が取り扱うことができる書面添付制度とは、いったいどのようなものなのか、解説していきます。
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税務調査の前に税理士が意見陳述できる制度

書面添付制度とは、税理士が依頼者の税務申告等を行う際に、申告書類が税務の専門家の立場からどのように調製されたかをまとめた規定の“書面”を作成し、添付することで、もし依頼者が税務調査を受けることになった場合に、税理士に意見陳述の機会が与えられるというものです。
相続税・所得税・法人税などの税務申告の際に利用できる税理士法に基づいた制度で、税理士だけに利用する権利が認められています。

つまり、書面添付制度を利用すれば、いきなり税務調査が行われるのではなく、その前に意見を述べる場が一つできるということです。

添付する書面の様式は財務省令で定められており、税理士は項目ごとに税務に関して計算・整理したことや、依頼者から相談を受けた内容などを記入します。
また、申告書類だけではわかりづらい部分を補足説明として記入する場合もあります。

税務調査の対象となった際は、税務署は添付された書面に従って、税理士から意見を聴取します。
その結果、問題点や疑問点が解消されて、税務調査が必要ないと判断されれば、税務調査そのものが省略されることになります。


添付する書面は“質の高い書面”であること

事業者としては、負担のかかる税務調査はできるだけ避けたいもの。
そのためには、書面添付制度を利用するにあたり、“質の高い書面”を作成する必要があります。
ここでいう質の高い書面とは、記載してある内容がきちんと申告書類の不明点を補っており、なおかつ正しい決算であることが証明できている書面のことです。

そのために、事業者は税理士に包み隠さず財務状況を伝える必要がありますし、経理も偽りなくきちんと行わなければいけません。
基本的に書面は税理士が作成しますが、事業者もその内容を把握し、共に質の高い書面を作るという意識で、顧問税理士には全面的に協力しましょう。

そもそも書面添付制度は、税務調査を逃れるための制度というより、“正しい決算”を行うことを目的とした制度なのです。


税務調査の省略以外のメリット

書面添付制度には、税務調査を回避する以外にも、金融機関に対しての信頼性を高める効果があります。

金融機関は企業に融資を行う際に、その企業の財政状況や将来性や課題などを把握しておく必要があります。
書面添付制度を利用していれば、決算の数字だけではわからない細かな情報を得られるため、透明性の低い企業よりも信頼性が高まるというわけです。

また、書面添付制度の利用は、そもそも正しい決算に基づいた申告であることが前提なため、健全な会社経営を行っているとみなされ、結果として、融資の際に金利や返済期間などの面において、優遇される可能性もあります。

このようにメリットの多い書面添付制度ですが、いくつかのデメリットも存在します。
事業者が顧問税理士に書面添付制度の利用を依頼する場合、通常の顧問料のほかに、書面添付のための費用が発生する場合がありますし、税理士と連絡をとる回数も多くなるため、負担が増す可能性もあります。

また、書面添付制度を取り扱っていない会計事務所もあり、税理士によっては依頼しても断られてしまうこともあります。
そうなると、そもそも書面添付制度の利用を諦めるか、別の会計事務所に申告書類の作成から依頼しなければなりません。

いずれにせよ、書面添付制度を利用するには、前提として健全な経営を行っていることが必須です。
日頃から正しい経理・決算を行っていきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年10月現在の法令・情報等に基づいています。