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『技能実習法』を理解し、外国人技能実習生を正しく受け入れよう

21.02.09
ビジネス【労働法】
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コロナ禍において、外国人技能実習生に退職を迫ったり、賃金の未払いや不当な労働を強制させたりといった問題が起きています。
外国人技能実習生は、2017年に施行された『技能実習法』によって保護されており、受け入れ側の企業は適切に技能実習を行わなければなりません。
そこで今回は、技能実習法の成り立ちや、外国人技能実習生の受け入れ方、実習の進め方などを解説します。
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『技能実習法』の成り立ち

2020年12月、外国人技能実習生をクレーンで吊り上げて作業させたとして、兵庫県姫路市にある建設会社と社長が、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されました。
この建設会社は、このほか実習生への賃金未払いの疑いでも書類送検されています。

このニュースのような、外国人技能実習生への賃金未払いや、パスポート・在留カードの取り上げ、強制労働、劣悪な労働環境や違法な作業の強要などは未だに後をたちません。
これらは全て技能実習法という法律で禁止されている行為です。

技能実習法は、『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律』の通称で、2017年に施行されました。

そもそもの始まりは、1960年代にさかのぼります。
海外進出を果たした日本企業から国に対して、現地で雇用する外国人労働者の研修を日本で行いたいという要望が寄せられ、外国人研修制度が創設されます。
その後1993年に、『技能実習制度』がスタートしました。
これにより、一定期間の研修を終えたあと、所定の評価を得た人は、企業と雇用関係を結んだうえで実習を行うことが認められました。

しかし、開発途上国等の経済発展を担う人材を育成することを目的として始まったにもかかわらず、低コストや人手不足のため外国人技能実習生を雇い、劣悪な労働環境に置いたり、賃金の未払いや強制労働を課したりといった問題が多発してしまいます。
そこで、外国人技能実習生の保護を目的とした技能実習法が2016年に成立し、2017年に施行されました。
厚生労働省の調査によれば、2019年10月末時点での日本国内の外国人技能実習生の数は、38万3,978人。
この全てが、技能実習法によって保護されているのです。


技能実習生を受け入れる流れとは

外国人技能実習生は、通常、自身の母国にある送り出し機関を経て、日本へやって来ます。
送り出し機関は、現在『送出機関』と『準備機関』に分けられており、送出機関では求職の申し込みを日本の企業や監理団体に取り次ぎ、準備機関では現地で技能実習生になろうとする人の教育・手続きのサポートなどを行っています

原則的には、日本の監理団体が認定している送り出し機関から外国人技能実習生を受け入れることになりますが、なかには認定されていない機関も存在しています。
日本の監理団体はトラブル対応の問題などから、認定されていない機関からの外国人技能実習生の受け入れを推奨していません。

送り出し機関から日本にやってきた外国人技能実習生を受け入れ、実習を行う企業を『実習実施者』と呼びます。
実習実施者が外国人技能実習生を受け入れる方法には、以下の2通りがあります。

●企業単独型:海外にある子会社や合弁企業、取引先企業などの従業員を外国人技能実習生として受け入れる
●団体監理型:企業のサポートを行う非営利の『監理団体』が主導となって外国人技能実習生を受け入れる

なお、企業単独型は一部の大手企業に向けた方法で、日本では約9割の企業が団体監理型で外国人技能実習生を受け入れています。
団体監理型では、実習実施者の常勤職員が30人以下であれば、外国人技能実習生を3人まで受け入れることができます。
また、常勤職員が31~40人の場合は4人まで、41~50人の場合は5人までと決められています。
ただし、技能実習制度を取りまとめる厚生労働省所轄の外国人技能実習機構に優良と認められた監理団体や実習実施者は、受け入れ人数を増やすことができます。

受け入れが決まった実習実施者は、技能実習を始める前に、技能実習計画を外国人技能実習機構に提出して認定を受けなければいけません。
認定がおりると、晴れて技能実習を行うことができます。


技能実習生を保護するための『禁止事項』

技能実習法では、外国人技能実習生を保護する観点から、労働安全衛生法や労働基準法に付随する形でさまざまな禁止行為が定められています。
技能実習を行う際は、これをよく理解しておく必要があります。

たとえば、暴力や脅迫、監禁等、精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、技能実習生の意志に反して実習を強制する『技能実習の強制』を禁じており、違反すると1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科されます。

また、契約の不履行についての『違約金の定め』や、損害賠償額を予定する契約をする『賠償予定』、さらには外出や私生活の自由を不当に制限する『外出制限』、『パスポート・在留カードの保管』なども禁止されています。
外国人技能実習生を労働力の需給の調整手段としてはならず、むやみに解雇してはなりません。

もちろん、賃金の未払いや、労働時間の上限超過なども労働基準法に付随する形で禁止されており、危険な労働に従事させた場合なども、労働安全衛生法違反として罰せられます。

外国人技能実習機構は、実習実施者に対して実地調査を行い、技能実習生からの相談や通報を受け付ける窓口としても機能しています。
不当な行為は必ず露見しますし、もし技能実習生の扱いが酷かった場合には、企業の社会的な信用も失いかねません。

外国人技能実習生を受け入れる予定のある実習実施者は、技能実習法をよく理解し、ルールに沿った対応を行うように心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。