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従業員への『ため口』は不適切?『敬語』がおすすめの理由

24.07.09
ビジネス【人的資源】
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事業の運営には、従業員や取引先とのコミュニケーションが必要不可欠です。
そして、コミュニケーションで重要になるのが、言葉遣いです。
経営者のなかには、従業員や下請け会社の担当者などに『ため口』を使ってしまう人もいるのではないでしょうか。
ため口は親密な者同士が使う親しさの表現ではありますが、ビジネスの場においては、ため口ではなく、『敬語』が推奨されています。
経営者がため口を使うとどういった弊害があるのか、敬語を使うとどんなメリットがあるのか、考えてみましょう。

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対等で平等な関係だからこそ敬語を推奨

敬語とは相手に敬意を示し、尊重するための言葉遣いのことで、『尊敬語』『謙譲語』『丁寧語』といった種類があります。
敬語はビジネスマナーの基礎でもあり、社会人であれば必ず身につけておかなければいけないものの一つです。
しかし、組織においては、部下や新入社員に対して、敬語ではなく、ため口を使ってしまうケースが多々あります。
そして、経営者のなかにも、従業員に対して、ため口で会話をしてしまう人が少なからず存在します。

ため口は敬語よりも、相手との距離を縮められるような気がするため、あえてため口で話しかけるようにしているという経営者もいます。
しかし、ため口はあくまで家族や友人などの親しい間柄で使用するもので、労使の関係で使うのはふさわしくないでしょう。

使用者である経営者は「雇用する側」であり、労働者である従業員は「雇用される側」であることから、経営者と従業員の間には確かな上下関係が存在します。
しかし、役務を提供する労働者と役務の対価として賃金を支払う使用者の立場は対等であり、平等であるというのが労使関係における原則です。
労働契約も双方が対等の立場で締結されることを前提としています。
経営者に対してため口を使う従業員がほとんど存在しないのと同様に、対等で平等な関係だからこそ、経営者も従業員に対してため口を使わないようにするほうがよいでしょう。

また、関係が対等で平等なのは、企業間においても同様です。
発注者・元請け・下請けとそれぞれに立場はありますが、初めて会ったときなど、まだ関係性が構築できていない状態で、取引先の担当者に対してため口を使うのは、相手を下に見ている行為と受け取られかねません。
本人が意識している・していないにかかわらず、ビジネスにおいてのため口は「自分の立場が上」であることを示唆することにつながります。
よかれと思ってしたことだとしても、社外関係者へのため口はわだかまりやしこりを残すことにもなりかねないので、注意しましょう。

経営者のため口が企業価値を下げてしまう?

よほど親しくなければ、ため口は横柄で傲慢な態度に映ることがほとんどです。
相手と信頼関係を築くことがむずかしくなりますし、相手によってため口と敬語を使い分けているのであれば、相手を見て態度を変える差別的な経営者や会社だと捉えられてしまうかもしれません。
たとえば、自社の社員が同僚社員には敬語を使い、派遣社員にはため口を使うケースなどは、周囲から差別していると思われるでしょう。

会社の雰囲気や社風は、経営者の考え方や言動に大きく左右されます。
クライアント企業には敬語を使い、下請け企業や従業員にため口を使う経営者の態度は、その人のもとで働く従業員にも影響を与えます。
経営者がため口を使う会社では、従業員も部下や新入社員、派遣社員や下請け企業などにため口を使い出すようになるかもしれません。

また、従業員や取引先だけではなく、たとえばタクシードライバーやショップの店員などにも、「◯◯へ(行って)」「◯◯(をちょうだい)」など、ため口やぞんざいな口調で話しかけていないでしょうか。
そんな不遜な態度を取る経営者の姿を、意外に従業員はよく見ているものです。

逆に、年齢や立場、役職や社歴などにかかわらず、誰にでも敬語で接する経営者であれば、相手を敬うという常識的で健全な職場環境が構築されていくはずです。
丁寧な敬語が使える従業員ばかりであれば、企業価値も上がっていくでしょう。

さらに、敬語を使ったコミュニケーションは、ハラスメントが起きづらいともいわれています。
敬語には根底に尊重と配慮があり、相手と一定の距離感を保つ役割もあります。
厚生労働省が定めているパワハラの類型には、優位性を背景に、相手のプライベートに干渉する『個の侵害』があります。
他者のプライベートに踏み込みすぎた結果、パワーハラスメント(パワハラ)に認定されてしまうことも少なくありません。
意識的に敬語を使うことで、パワハラの抑制効果が見込めるでしょう。

経営者が敬語で話すようになれば、管理職や従業員も同じようにふるまうようになり、社内に相手を敬うよい文化が定着していく効果が期待できます。
まずは経営者がお手本として、敬語を使うようにしてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。