TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

“接触”を経営に活かしたい! ~“接触頻度”と“単純接触効果”~

16.04.14
経営全般
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■ “接触頻度”

4月は、まさに入学・入社シーズン。
様々な出会い、ふれあいがある季節です。

そこで今月は、お客さまはじめ大切な方との“接触”について考えてみたいと思います。

弊社でも特に会計事務所部門では、毎月、お客さまのもとに巡回監査訪問して、経営者や経理担当者の皆さまと、しっかりとコミュニケーションがとれているどうか、いわゆる“接触頻度”を、毎週のミーティングで確認しています。

各担当者は、前週にコンタクトしたお客さまの業務報告を一生懸命してくれるのですが・・・
実は私自身が目を凝らしてチェックしているのは、担当者から報告がない、いわば接触していないお客さま、前回訪問から時間が空いてしまっているお客さまがいないかどうか!です。

会社でも、特に営業部門等に関しては、既存や新規見込みのお客さまとの“接触”に留意されていることが、多いのではないでしょうか。

■ “単純接触効果”って?

“接触頻度とともに考えてみたいのが、“接触効果です。

“単純接触効果”とは、人間は対象物と繰り返し接触していると、
初めは興味がなかったり、好きではなかったものでも、
何度も見たり聞いたりしていくうちに、警戒心が薄れ、
次第に好感を持つようになるという効果のこと。

1968年、アメリカの心理学者、ロバート・ザイアンス氏が
発表したことから、ザイアンスの法則とも呼ばれる、
人間の認知心理学のひとつ。

ザイアンス氏は、ある言語をまったく知らない人たちを
治験者として、知らない言語の単語を、0回~25回まで、
回数を変えて提示し、単語に対する印象を評価したところ、
提示された回数の多い単語ほど、好感度が高い
という結果が出ました。

言語のみならず、顔や名前、写真や音などに関しても、
回数に応じて好感度が高まるという、同じ結果を得たといいます。 


■ 何度も接触しているうちに・・・別れがたくも

4月は、まさに入学・入社シーズン。

初めて教室や会社で出会ったときの、何ともいえない緊張感・・・
旅行も然りです。
業界の団体旅行などで、初めて知らない人と同じ部屋になってしまったときの、
拭いようのない警戒心。長時間のバスで隣り合わせになってしまった居心地の悪さ・・・

初めはどうしても、そんな感情を抱いてしまいます。

しかしながら、同じ空間で何度も何度も接触していると、次第に打ち解け、警戒心が消えるどころか、
最後は「なんて良い人なのだろう」「別れがたい旅行」「涙の卒業式」にまで、
好感度が高まっていくことすらあるわけです。

どなたもが、そんな経験がおありかと思います。 


■ 「好き」「嫌い」の感情が生じる前に

ただし、注意していただきたい大事な点!があります。

“単純接触効果”は、「好き」「嫌い」という感情が生じる前段階で有効な法則だということ。

未知との遭遇で、まだ「好き」でも「嫌い」でもない商品などに対して、
「好き」という感情を抱いてもらうためには、“単純接触効果”は有効に働きます。

昔のコカ・コーラではありませんが、新商品を発売して、まだ見たことも聞いたこともないものに対して、
テレビCMを重ねて流すことにより、認知度が上がり、警戒心が薄れ、
店頭等でその商品を見たとき、いつか見た商品のように「これっ、好き!」・・・と、
購買行動に結びつくというのが、“単純接触効果”です。

何度も見たから、好きになったのです。好きになったから、何度も見るのではないのです・・・

紙媒体による商品宣伝しかり、営業訪問しかり、
ビジネスの上でも“単純接触効果”を有効に活かしていける場面は、少なからずあると思います。


■ 「嫌い」な人には、逆効果?!

裏を返せば、すでに「嫌い」という感情を抱いてしまっているものに対しては
“単純接触効果”は活かせないということです。

嫌いなものを、いくら何度も見せられても、余計嫌いになるだけ。

選挙の連呼など、まさに好例・・・
嫌いな政党の候補者名を、選挙カーから何度も呼びかけられても、
ただうるさいだけ。
最後には、うるさいっ!と怒鳴りたくなるだけかもしれません。

時折、ストーカー被害が報道されることがありますが、
“単純接触効果”を勘違いしてしまった挙句の出来事かもしれません。

ビジネスの上でも“単純接触効果”を考えていく場合には、
この点には十分留意しておかなければなりません。


■ 出会いの季節、大切な皆さんとの“接触”を考えてみませんか

冒頭、私どもは“接触頻度”を大事にしていると書きました。

しかしながら、決してテクニックとして大事にしているわけではないのです。

社内会議では、時折、抜き打ち検査のように、担当者にお客さまの誕生日を聞くことすらあります。
会議時に配布される関与先一覧には、関与先の経営理念をも記すようにしています。

なぜ、こんなことまでするのか?

それは・・・大切な人の誕生日、大切な人が叶えたいと思っている夢は、知っているからです!

親、奥さん、お子さんの誕生日を答えられない人?
自分自身の誕生日を覚えてない人??
そういう方を探すのは、およそ難しいでしょう。

なぜか???
とても大切な人の誕生日は、覚えようとしなくても覚えているからです。

だから、本当にお客さまのことが好きで大事に思っているのならば、
黙っていても、お客さまの誕生日を気にしているはず・・・
少なくとも手帳に、スマートフォンにメモして、忘れないようにしていて欲しいからです。

当社は、駅まで至近なのですが・・・
駅まで歩く1分の間に、お客さまに一本電話を入れてはどうだろうか!
と社員には問いかけています。
なぜか? 大切な人なら、気になるだろうと。。。

用事のあるときだけ電話するのではなく、
用事のないときでも、気になる大事な人なら、「どうですか?」と電話したくなるよねと。。。

出会い、ふれあいの季節・・・大切な皆さんとの“接触”を考えてみませんか。


    
            平成28年(2016年) 4月
                      山  崎  泰