TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

『逆ピラミッド型』という発想~「牛たん・ねぎし」にみる、『逆ピラミッド型』経営~

15.11.16
人事・育成・組織
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■ 社員さんに支えてもらって・・・

先月、『働く君に贈る25の言葉』などのベストセラー作家・佐々木常夫先生(東レ経営研究所・元社長)にお目にかかった折、近著『50歳からの生き方』をいただきました。

さすが・・・出版不況といわれるなかにあっても、数十万部のベストセラーを誇る佐々木常夫先生の著書には、引き込まれる点が多くあるのです。

◆これまでの仕事人生を棚卸して、
 「いいところを見せたい」を捨てる

◆「他人の長所」をとことん探す

◆自分の悩みをさらけ出すことで、周囲の人が
 悩みを話しやすい雰囲気をつくることができる。

◆「ええかっこしい」を捨てれば、
 自分も周囲も楽になり、
 ひいては職場全体を活性化させることにもつながる。


そういえば、50歳を過ぎた頃から、経営者としての姿勢が変わってきたようにも思います。

体力的にも、技術的にも、能力的にもエネルギッシュな次世代が頼もしく、若い社員や女性社員さんが、日々充実して、気持ちよく能力を発揮して仕事をしてもらえる環境をつくること・・・
これが自らの役割と、自覚するようになってきました。

不思議なもので、例えば朝礼などで、昨日の失敗談を語り、家内にいつも怒られてばかりいることなど、家庭での出来事も含めて自らの弱点をさらけ出し始めると、社員さんはクスクス笑いながらも、バカにするどころか、一生懸命支えてくれるようになってくれるのです。


(つづく)
■ 『逆ピラミッド型』組織

今月は、私自身、経営者として意識してきた
『逆ピラミッド型』という組織についてふれてみます。

『逆ピラミッド型』組織が依拠している、
企業としての価値観は、以下のような点にあります。

①組織の存在価値そのものを評価するのは、
   なによりも顧客であるということ。

②顧客との接点の最前線にいるスタッフこそが、
   顧客サービスを通じて顧客満足度を提供する
   最重要ポジションにあるということ。

③マネージャーなどの管理職は、
   最前線のスタッフをサポートする存在であること。

④経営陣は、組織そのものを下支えする存在に徹すべきこと。


■ 初めて入った「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」

そんななかで、出会ったのが・・・
今年2月、生まれて初めて入った「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」です。

「カンブリア宮殿(テレビ東京)」でも大きく特集されましたので、
ご存じの方も多くおいでのことかと思います。

初めて出会った・・・2月22日の私のデイリーブログに、少しだけお付き合いくださいませ。

 家内が出かけ、娘が風邪で寝込んでしまっているので、息子とふたりで外食ランチ。。。
 近くのトンカツやに行こうとしたが、既に13時30分過ぎていて、店はクローズ。

 次に向かったのは、二人してちょうど看板が目に入った・・・牛たん『ねぎし』。

 めったに肉は食べないので、まざまざとメニューを見ていると、
 牛タンの網焼きは、サーロインステーキ一人前と比べて、カロリーは約1/3、脂肪は約1/4とある。
 「とにかく、いちばんボリュームが少なく、カロリーが少ない牛タンは?」と、
 すこぶる感じの良い女性店員さんに聞いて・・・私は、うす切「ねぎし」。
 逆に息子は、ボリューム満点の厚切「たんとろセット」を注文。
 麦飯も、3杯もお替りして・・・食べ過ぎが心配になるくらい。

 久しぶりに、父子水入らずで、学校のこと、将来のこと・・・いろいろな話ができて良かったのだが、
 店のビジネススタイルを無意識のうちに評価してしまう。。。
 仕事柄、どうしても性分が抜けきらない!? 

 驚いたのが、箸袋!
 
 なんと、紙でできた箸袋の裏側に、
 経営理念が印刷されている。

 
 こんな箸袋を見たのは、これが初めて!!!
 レジカウンターには、さりげなく ”クレド” が置いてある。
 
 経営理念、ねぎしの思い、ねぎしの行動規範・・・
 ねぎしフードサービス・グループの思いがいっぱい詰まっているのが、良くわかる。

 水の差し替えひとつとってみても、ただ単にテーブルの上にボトルをボンと置いて、
 さもセルフサービスが至極当然。。。という感じではなく、
 目を行き届かせるように、先の女性店員が、コップの残量を見て、お替りを注いでくれる感じ。

 ”クレド” が単なるお題目ではなく、かなり浸透しているように思える。。。

 別に、私はねぎしフードサービスの顧問でもなく、ヨイショしても、何の得にもならないが・・・

 箸袋の裏側まで見て、深く感じたひとコマ!!!





















■ 「野球型」ではなく『サッカー型』、「機関車型」ではなく『新幹線型』

先日、念願かなって、株式会社ねぎしフードサービス・根岸榮治社長の
お話を伺う機会がありました。

企業の最大目的は『永続性』と言明されます。

永続することによって、従業員のみならず、取引先、地域社会、
ひいては国家も含めて良い関係になれると。

経営理念を内部顧客=従業員のみならず、
外部顧客、取引先、地域社会にまで理解していただく努力をという意味で、
全店のレジ後方に「経営理念」、レジ前の一番目立つ場所に「クレド」を置いている
そうです。

なかでも、「人は財産、ともに育ち、学び合い、気づき合う」
仕組みづくりを目指してこられた根岸社長が、
人材育成について熱く語られていた姿が、
とても心に残っています。

「監督の指示を待つ野球型ではなく、
 グランドに出たら全部自分で判断していくサッカー型」

「先頭車両に引っ張られる機関車型ではなく、
 全車両が稼働する新幹線型」


となる仕組みを創りあげることに、心血を注いできたとも。

PDCAサイクルも、最初のPlan段階からの社員参画を心がけ、
Do段階からだと他人事になってしまう・・・と指摘されます。


■ 徹底した『逆ピラミッド型』企業経営

ねぎしでは、
「各店長の集まりが会社」
「各店長が仕事をしやすい会社をいかに作るかが、すべて」
「お客様は各店に来ていただき、そこで売上が生じるのだから」・・・

社員重視を掲げる企業は多くあっても、
ここまで徹底した企業は耳にしたことがありません。

本部はあくまでもサポート役。
SS(ストアサポート)マネージャー、SO(サポートオフィス)スタッフ、そして経営陣にいたるまで、
すべて店長が仕事をしやすく、やり甲斐をもって店舗運営ができるか!
・・・この一点を支えることに徹した仕組みになっています。

各店長が本部を訪れる際には、気持ち的には、お客様=内部顧客がいらっしゃった・・・
という感じなのだそうです。

もちろん、役職では呼ばずに、すべて「さん」づけ。


「ヒトが成長できる仕組みをもっていることこそが、企業の価値」とまで言い切る根岸社長!

経営理念を具現化するための『仕組み』=『逆ピラミッド型組織』の採用だったのです。

サーロインステーキより、格段に低カロリーの牛たん網焼き・・・

一度、牛たんでも食べながら、『逆ピラミッド型』経営!のぞいてみますか?


                               2015年(平成27年) 11月   山  崎   泰