TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

リンゲルマンの『綱引き実験』~社員さんの“チカラ”をどう引き出すか~

15.07.14
人事・育成・組織
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■リンゲルマンの『綱引き実験』

リンゲルマンの『綱引き実験』、ご存知の方も多いかと思います。
1913年、ドイツの心理学者・リンゲルマンが行った、『社会的手抜き』を調べるためのユニークな実験です。

1対1で綱引きをすると、人は100%の“チカラ”を発揮。
2対2になると、人は93%の“チカラ”しか発揮しない。
3対3になると、人は85%の“チカラ”しか発揮しないようになり、
8対8になると、なんと49%の“チカラ”しか発揮しないようになった
・・・という実験!! 

もちろん、意図的に手を抜いたのではありません。 
みんな自分では、“チカラ”を出しているつもりなのです。 
しかし悲しいかな・・・集団になると、無意識のうちに、いつの間にか手を抜いてしまうというのが、社会生活を営む人間が陥ってしまう『社会的手抜き』という現象!

(つづく)

本来なら、仕事や作業に携わる社員の人数が多ければ多いほど、
相乗効果で、大きな“チカラ”を発揮してくれるはず・・・
しかし実際には、集団で作業を行う場合など、参加人数が増えれば増えるほど、
一人あたりが発揮する“チカラ”が低下していく。

そんな、個人が集団のなかに埋没していってしまうことを実証したのが
『リンゲルマンの法則』なのです。

『リンゲルマンの法則』には、実際に思い当たる節があるだけに、
思わず大きくナットク!と肯かれている方も少なくないのではないでしょうか。


■リレーでは、『社会的手抜き』は起こらなかった!?

なにかここまで書くと、人間不信というか、少し悲観的な気持ちになりそうですが・・・
「綱引き実験」には後段があり、
声援を送ってくれる人がいると、個人の“チカラ”発揮は衰えなかった、
という結果も出ているのです。

当時、チアリーダーという表現が正しいかどうかはともかくとして、
チアリーディング的に「〇〇さん、頑張って!」と応援されると、
人はサボらないことも分かりました。

ただし、声援してもらった〇〇さん以外の△△さん、××さんは、
“チカラ”が落ちたそうですが。。。

そして、もうひとつユニークな発見。

それは、綱引きでは起こった『社会的手抜き』が、
同じメンバーで試したリレーでは起こらなかった!ということなのです。


■『リンゲルマンの法則』から学ぶこと!


『リンゲルマンの法則』から、学ぶべきことは何でしょうか?

仕事にしても、作業にしても、社員さんに「自分がいなければ!」と、いかに強く意識してもらえるか。
そんな仕組みづくりができるかどうか。

やはりその根底にあるのは、「経営理念」しかり、
何のために働くのか、という意識にほかならないと思うのです。

ひとりで綱引きする限りは、誰も頼ることができません。

「自分が支えなければ」
「自分が必要とされている」

という意識そのものが、社員さんの“チカラ”発揮に、どれだけ大きな影響を与えるかを、
『リンゲルマンの法則』は教えてくれているようです。

例えば、現場での仕事、社内での会議などにおいても、
自分自身で言いたいことがあっても、まあ~自分だけが発言しても、あまり変わらないだろうから。
自分ひとりが頑張っても、あまり変わらないだろうから・・・

「自分が100%の“チカラ”を発揮して綱を引っ張っても、勝敗には影響しないだろうから」
と、まさにダブって映ります。

参加人数が増えれば増えるほど、一人あたりの“チカラ”発揮度が落ちてしまうのです。

その意味では、中小企業、いや個人事業主の出番といえるかもしれません。

小規模なマイクロ・プロフィットセンターを創り上げた、京セラのいわゆる「アメーバ経営」は、
大企業が『リンゲルマンの法則』を検証しながら、自社に取り入れた経営形態だったようにも思えます。


■『最大のチアリーダー』は、経営者自身!

経営者として意識しておきたいのは、チアリーディングの存在です。

社員さんを応援する、声援を送り続けるチアリーダーは、御社にはおられますか? 

やはり最大のチアリーダーは、経営者自身なのだと思います。
朝から、現場から、大きな声で、「〇〇さん!」と固有名詞で声援を送り続ける、
頑張ってくれた社員さんに、大きな拍手をし続ける。
そのことを、すでに100年前に、リンゲルマン教授が実証してくれています。

そして最後に、「綱引き型」から「リレー型」へと、
仕事や作業をシフトしていくことも、常に意識しておきたいポイントでしょう。

社員さんという「個」が、会社集団という「マス」に埋没してしまわないように、
運動会のリレーの選手のように、一人ひとりの選手が注目され、
“一人ひとりの力”が見えやすいように“見える化”していく。

そんな観点から、常に業務フローを意識していくことも、意識づけの問題とともに大切なことだと思います。

機会があれば、秋の運動会シーズンにでも、
実際に“綱引き”そして“リレー”に参加して、是非とも体感してみてくださいませ。

                 2015年(平成27年)7月   山  崎   泰