申告漏れと脱税の違い、国税局はどこで判断する?
2019年10月、人気お笑い芸人・Tさんの個人会社が、
3年間にわたって得た所得を税務申告せず、
国税局からおよそ1億1,800万円もの『申告漏れ』を指摘されました。
このケースは、あくまで『申告漏れ』であり『脱税』ではないといわれていますが、
では、『脱税』と『申告漏れ』は何が違うのでしょうか。
今回は、このケースを手がかりに、企業における『脱税』と『申告漏れ』の違いや、
それぞれのペナルティについて、ご説明します。
【本文は『続きを読む』↓↓↓をクリック】
3年間にわたって得た所得を税務申告せず、
国税局からおよそ1億1,800万円もの『申告漏れ』を指摘されました。
このケースは、あくまで『申告漏れ』であり『脱税』ではないといわれていますが、
では、『脱税』と『申告漏れ』は何が違うのでしょうか。
今回は、このケースを手がかりに、企業における『脱税』と『申告漏れ』の違いや、
それぞれのペナルティについて、ご説明します。
【本文は『続きを読む』↓↓↓をクリック】
法律では『申告漏れ』と『脱税』を定義していない
実は、『脱税』や『所得隠し』について、
法律では明確に定義されていません。
あくまでメディアが便宜上、『申告漏れ』や『脱税』
を使い分けているだけで、実際には、案件の悪質度に
よって、科されるペナルティに違いがあるだけです。
そのペナルティの重さから、メディアが『申告漏れ』や『脱税』を判断しているに過ぎません。
納税額が少なかったり税金を納めなかったりした場合には、ケースによって、
4種類の加算税が課せられます。
それぞれ見ていきましょう。
・過少申告加算税
期限内に申告は行ったが、納税額が少なかった場合には、
追加で納めることとなった税金に10%相当額の税金が加算される『過少申告加算税』が
課税されます。
ただし、追加で納めることとなった税金が50万円(当初の申告納税額が50万円超の場合は
当初の申告納税額)を超えている場合、その超えている部分については15%になります。
なお、税務調査の通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
また、調査の通知後でも調査による更正等予知前までは、税率が5%(50万円超は10%)
となります。
・無申告加算税
期限内に申告を行わなかった場合には、納付すべき税額に対して『無申告加算税』が
課税されます。
税務調査の通知前に自発的に期限後申告を行えば納付すべき税額の5%ですが、
税務調査の通知後から調査による更正等予知前に期限後申告を行えば、
50万円までは10%、50万円を超える部分に関しては15%となり、
さらに調査による更正等予知後になると50万円までは15%、50万円超部分は20%となるなど、
状況により税率が異なるので注意してください。
・不納付加算税
源泉所得税の納付が遅れてしまった場合は、『不納付加算税』が課税され、
源泉所得税の10%を納めなくてはなりません。
・重加算税
虚偽の申告をしたり、隠蔽したりといった不正な行為で納税を逃れたりした場合は、
本来の納税額の35~50%にもなる『重加算税』が課税されます。
これが最も重いペナルティです。
重加算税が課される事態になった場合、ペナルティは金額だけに留まりません。
調査対象期間が延長されてしまうばかりか、税務調査の頻度も高くなるといわれています。
さらに、悪質だと判断された場合には、
刑事罰として『10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金』(法人税法159条1項)を
科されることになります。
・その他
ほかにも、税金の納付が遅れた場合には、納める期限の翌日から完納するまでの日数に応じた
『延滞税』、期限までに納付が間に合わず追って納税する場合には『利子税』が課税されます。
ちなみに、所得税および法人税の利子税は令和元年度は年1.6%で、
完納までの日数を日割して金額を導き出すことができます。
悪質だと判断されると刑事事件に発展
先般の、人気お笑い芸人・Tさんのケースの場合、
無申告だった所得税に関しては『無申告加算税』を、
経費に関しては『重加算税』を課せられ、
そのほか、消費税や源泉所得税の分も合わせて、総額1億円を超える追徴課税を受けた
ことがわかっています。
一方で『悪意がなく、意図的ではない』と判断されたため、刑事罰にまでは至りませんでした。
今回のように追徴課税を課せられただけで、刑事処分までに至らず、
いわゆる行政処分のレベルで留まっている場合には、
『脱税』とは呼ばず、『申告漏れ』と呼ぶのが一般的です。
国税局が『意図的に納税を逃れる悪質な場合』と認めて重加算税を課し、
所得税法や法人税法違反などで検察庁に告発して、初めてメディアでは『脱税』と表現します。
Tさんのニュースに関しても、一部媒体では『脱税』と報道してはいたものの、
『申告漏れ』『所得隠し』と報じる媒体がほとんどでした。
一方で、同じような案件にもかかわらず、悪質と判断され、
『脱税』と報じられたケースもあります。
2019年2月に、健康食品会社社長が、2年間で、約1億8,000万円もの法人税の納税を免れたとして、
法人税法違反などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された事例です。
この会社社長は2019年9月に懲役2年、執行猶予4年という判決を受け、
メディアは一斉に『脱税』として報道しました。
金額的にはTさんとそこまで大きな差はありませんが、
このケースの場合は、架空の広告宣伝費を計上したなどの手口が問題視され、
国税局は悪質と判断し、起訴しました。
繰り返しになりますが、国税局の捜査によって、金額はもちろん、
手口や状況などから意図的かどうか、悪意があるかどうかが判断されます。
その結果、刑事事件にまで発展したがゆえの『脱税報道』でした。
その点が、2019年に起きた二つの税金にまつわるニュースの
大きな分かれ道だったのではないでしょうか。
ただ、悪意がなかったとしても、
『申告漏れ』も大きなペナルティを科されることに変わりはありません。
税金の仕組みを理解し、納税の義務を果たすことが大切です。
※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。
実は、『脱税』や『所得隠し』について、
法律では明確に定義されていません。
あくまでメディアが便宜上、『申告漏れ』や『脱税』
を使い分けているだけで、実際には、案件の悪質度に
よって、科されるペナルティに違いがあるだけです。
そのペナルティの重さから、メディアが『申告漏れ』や『脱税』を判断しているに過ぎません。
納税額が少なかったり税金を納めなかったりした場合には、ケースによって、
4種類の加算税が課せられます。
それぞれ見ていきましょう。
・過少申告加算税
期限内に申告は行ったが、納税額が少なかった場合には、
追加で納めることとなった税金に10%相当額の税金が加算される『過少申告加算税』が
課税されます。
ただし、追加で納めることとなった税金が50万円(当初の申告納税額が50万円超の場合は
当初の申告納税額)を超えている場合、その超えている部分については15%になります。
なお、税務調査の通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
また、調査の通知後でも調査による更正等予知前までは、税率が5%(50万円超は10%)
となります。
・無申告加算税
期限内に申告を行わなかった場合には、納付すべき税額に対して『無申告加算税』が
課税されます。
税務調査の通知前に自発的に期限後申告を行えば納付すべき税額の5%ですが、
税務調査の通知後から調査による更正等予知前に期限後申告を行えば、
50万円までは10%、50万円を超える部分に関しては15%となり、
さらに調査による更正等予知後になると50万円までは15%、50万円超部分は20%となるなど、
状況により税率が異なるので注意してください。
・不納付加算税
源泉所得税の納付が遅れてしまった場合は、『不納付加算税』が課税され、
源泉所得税の10%を納めなくてはなりません。
・重加算税
虚偽の申告をしたり、隠蔽したりといった不正な行為で納税を逃れたりした場合は、
本来の納税額の35~50%にもなる『重加算税』が課税されます。
これが最も重いペナルティです。
重加算税が課される事態になった場合、ペナルティは金額だけに留まりません。
調査対象期間が延長されてしまうばかりか、税務調査の頻度も高くなるといわれています。
さらに、悪質だと判断された場合には、
刑事罰として『10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金』(法人税法159条1項)を
科されることになります。
・その他
ほかにも、税金の納付が遅れた場合には、納める期限の翌日から完納するまでの日数に応じた
『延滞税』、期限までに納付が間に合わず追って納税する場合には『利子税』が課税されます。
ちなみに、所得税および法人税の利子税は令和元年度は年1.6%で、
完納までの日数を日割して金額を導き出すことができます。
悪質だと判断されると刑事事件に発展
先般の、人気お笑い芸人・Tさんのケースの場合、
無申告だった所得税に関しては『無申告加算税』を、
経費に関しては『重加算税』を課せられ、
そのほか、消費税や源泉所得税の分も合わせて、総額1億円を超える追徴課税を受けた
ことがわかっています。
一方で『悪意がなく、意図的ではない』と判断されたため、刑事罰にまでは至りませんでした。
今回のように追徴課税を課せられただけで、刑事処分までに至らず、
いわゆる行政処分のレベルで留まっている場合には、
『脱税』とは呼ばず、『申告漏れ』と呼ぶのが一般的です。
国税局が『意図的に納税を逃れる悪質な場合』と認めて重加算税を課し、
所得税法や法人税法違反などで検察庁に告発して、初めてメディアでは『脱税』と表現します。
Tさんのニュースに関しても、一部媒体では『脱税』と報道してはいたものの、
『申告漏れ』『所得隠し』と報じる媒体がほとんどでした。
一方で、同じような案件にもかかわらず、悪質と判断され、
『脱税』と報じられたケースもあります。
2019年2月に、健康食品会社社長が、2年間で、約1億8,000万円もの法人税の納税を免れたとして、
法人税法違反などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された事例です。
この会社社長は2019年9月に懲役2年、執行猶予4年という判決を受け、
メディアは一斉に『脱税』として報道しました。
金額的にはTさんとそこまで大きな差はありませんが、
このケースの場合は、架空の広告宣伝費を計上したなどの手口が問題視され、
国税局は悪質と判断し、起訴しました。
繰り返しになりますが、国税局の捜査によって、金額はもちろん、
手口や状況などから意図的かどうか、悪意があるかどうかが判断されます。
その結果、刑事事件にまで発展したがゆえの『脱税報道』でした。
その点が、2019年に起きた二つの税金にまつわるニュースの
大きな分かれ道だったのではないでしょうか。
ただ、悪意がなかったとしても、
『申告漏れ』も大きなペナルティを科されることに変わりはありません。
税金の仕組みを理解し、納税の義務を果たすことが大切です。
※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。