TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

戦略ある“小国・エストニア”に学ぶ ~「保険証・免許証・印鑑・住民票・処方箋」何もない国!

18.08.10
税務・会計
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先日、会計事務所経営者が集うセミナーで、
北欧エストニアから一時帰国中の小森努氏の話を聞く機会がありました。

タイトルは「エストニアから学ぶ、電子政府がもたらす変革と会計事務所の将来」。

小森氏は、名古屋生まれ~名古屋育ち~名古屋大学工学部で原子核エネルギーを専攻した後、様々な国際事業に従事。
2015年にエストニアに移住し、同国の歴代首相の来日ミッションにも同行されています。

日本語、英語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、インドネシア語を話し、 エストニアの電子居住権でもある「e-residency」を、初めて取得した日本人!

今年1月、安倍首相がIT先進国としてのエストニアを公式訪問、
大前研一氏が「人口130万人エストニアから、税理士や会計士が消滅した理由」
というコラムを載せる(週間ポスト2016年9月2日号)など・・・
なにかと注目を集めるエストニア。
【エストニアから、税理士や会計士が消滅した理由】

先日、会計事務所経営者が集うセミナーで、
北欧エストニアから一時帰国中の小森努氏の話を聞く機会がありました。

タイトルは「エストニアから学ぶ、電子政府がもたらす変革と会計事務所の将来」

小森氏は、名古屋生まれ~名古屋育ち~名古屋大学工学部で
原子核エネルギーを専攻した後、様々な国際事業に従事。
2015年にエストニアに移住し、同国の歴代首相の来日ミッションにも同行されています。
日本語、英語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、インドネシア語を話し、
エストニアの電子居住権でもある「e-residency」を、初めて取得した日本人!

今年1月、安倍首相がIT先進国としてのエストニアを公式訪問、
大前研一氏「人口130万人エストニアから、税理士や会計士が消滅した理由」
というコラムを載せる(週間ポスト2016年9月2日号)など・・・
なにかと注目を集めるエストニア。


【「国際税制競争力」世界一にまでなったエストニア】

エストニアは、人口約132万人。 
国の広さは、約45,000㎢。

九州と沖縄とを足したくらいの面積、
人口も福岡市くらいしかない国が、
なぜここまで注目を集まるようになったのか?
そこには、国家としてのどのような戦略があったのだろうか?

今や日本人として、エストニアに精通する第一人者として、
小森氏は、かなり本質的な指摘をされます。
 
エストニアは、1629年スウェーデン領となった後、
1721年、北方戦争後、ロシア領に。
1918年、独立宣言後も、1940年にはソ連に併合。
1991年、ソ連から独立。
2004年、NATO加盟・EU加盟。
2011年、ユーロ導入という歴史をたどってきました。

他国からの侵略の歴史も経るなかで、小国ともいえるエストニアは、
「国家経営としての効率性」を目指したと、小森氏は指摘します。

その一環が、「徹底した電子化による効率化」
その延長線上に、世界第1位にまでなった「国際税制競争力」(2015年)があります。


【徹底した電子化による効率化】

例えば、国を挙げた「徹底した電子化」によって
「会社設立」に要する時間は、510分⇒30分に短縮
「付加価値税申告」に要する時間は、68分⇒7分に短縮
「社会保障税申告」に要する時間は、78分⇒10分に短縮
「投票」に要する時間は、44分⇒6分に短縮
「雇用基金サービス」に要する時間は、37分⇒13分に短縮

オンラインを利用している比率は、
所得税申請95%銀行取引99%投票30%・・・

勘違いしてはいけないのは、例えば「オンライン投票」がMUSTなのではなく、
「オンライン投票」という効率化された選択肢が、投票方法として用意されているということ。
それゆえ、投票の場合には、事の性質からも、実際に投票に行く割合も多いといいます。

でもやはり、人はより便利な方法を選ぶので、
「待ち時間ストレス」からの解放は大きな成果だと小森氏は指摘されます。  


【IT化×ルール単純化・・・税制もシンプル!】

エストニアは、北欧における近隣諸国に対して
「どのように差をつけて勝つか」という競争原理を考えたとき、
「テクノロジーで効率化する」という国家戦略をとったことを、
大きな成長要因として指摘される小森氏。

「ITを生かした付加価値の創出」さらには「IT化×ルール単純化」の徹底まで踏み込んで、
国の手続きをもできうる限り自動で出来るようにして、途中に入る人を少なくする。
それゆえ、ルールをも単純化して、司法書士・会計士・税理士が入らなければならないような
ややこしく、複雑で難しいことを排除。

小国であるがゆえに・・・
人口も人材も限られているがゆえに・・・
輸出など国際競争力を競える場面に、優秀な人材を回すためにも、
国家の経営戦略として、国における様々な行政手続きにおいても
「徹底した効率化」を目指したというのです。

だから、税制もまさにシンプル!
フラット課税を採用した、シンプルな標準ルール!!
法人税20%、所得税20%、消費税20%・・・なんともシンプル!!!

さらに、法人税も、企業内に利益剰余(内部留保)している間は課税しない。
剰余金を配当した時、はじめて20%が課税される。
経費も単純化。
交際費なども、会社の外にお金を使った時に課税対象に。


【「健康保険証」「運転免許証」「印鑑」「住民票」「処方箋」すべてナシ!】

「健康保険証」も「運転免許証」も「処方箋」もない!
なぜかって?
すべてIDカードに紐付いているから・・・小森氏からは、こんな説明です。 

日本に来たエストニア人・・・
こんな印象を持つ人も少なくないらしいのです。

 「印鑑」ってなんですか?
 「住民票」ってなんですか?
 「印紙」ってなんですか?
 「お薬手帳」ってなんですか?
 「期末利益処理」って、時間の無駄でしょ?
 「決算対策で経費」のうまい使い方?
 そんなの、せこくない?


【人口が少なく、面積も狭く、資源も少ない国ゆえ・・・本業集中の国づくり】

国として、国家経営として、国民や会社が、
本来の「経営」という、本業に集中しやすい環境を作っているのです。

人口が少なく、面積も狭く、資源も少ない国ゆえ・・・
国の様々な手続き等も可能なかぎり「省力化」
税制も可能なかぎり「フラット化」、
優秀な人ほど、頑張って稼げば稼ぐほど儲かるようにして、
「国際競争力」を高めている国・エストニア!!

歴史が浅い国だからこそ、柔軟に様々な
新しい取り組みができるエストニア!!

当社にも、実際にエストニアでの個人事業スタートや法人設立の相談もあります。

エストニアが非居住者旨に電子サービスを行う「e-residency」も、
エストニア政府が、非居住者に利便性を提供する代わりに、
非居住者にも課税して、国家税収を増加させる、
ひとつの大きな国家戦略のように映ります。


【台風にも負けず・・・複雑さを理解すべく税理士会研修会】

その一方で・・・先日、台風にも負けずと開かれた税理士会研修会。
テーマは「資本的支出と修繕費」

法人税法上は・・・
自動車に取り付けられたカーナビは、
車両と一括して、その自動車の耐用年数を使用して、減価償却費を計算。

かたや償却資産税としては・・・
自動車に取り付けられていれば、
車両と一体をなしているものと考えられるので、申告の必要なし。
外の雨など、もろともせずに、
勉強熱心な多くの税理士が、研修メモを取り続けています。


冒頭ご紹介した、大前研一氏のコラムは、こんな内容でした・・・

 AIの発達により、最優先に“自動化”されるべきは「行政」の仕事。
 法律をつくる人は必要だが、役人は不要。
 法律さえ明確であるならば、役人は法律に則って仕事をしているのだから、
 役人の仕事はプログラミングできる。
 許認可などは、プログラミングされたデータに基づいて
 「YES」か「NO」かを選んで進んでいけばよく、
 役所や税務署の職員も不要になり、行政効率が飛躍的に高まる。

 自動運転ならぬ“自動行政”を進めている最先端の国がエストニア!

確かに、昨夜の出来事を思い出しても、
「なにもここまで複雑かつ判断に迷う場面を、たくさんつくらなくとも・・・」というのが、
専門家たる士業としても、偽らざるホンネでした。


【エストニアに、ご関心ある方は・・・】

日本とは、地理的にも行政手続き的にも、対極的な位置にあるかのようなエストニア。
小国であるがゆえに、「一点集中型の効率化戦略」をとったエストニア。

大きさも、人材も、資源も限られた小国が、世界の中で生き抜くためにとった戦略。

日本でも、そして日本の中小企業でも、「徹底した電子化」により、
「一点集中型の効率化戦略」をとった小国・エストニアを、
この目でしっかりと研究してみること、大きな意義があるように思えてなりません。

私自身、是非とも、一日でも早く現地に足を運んでみたいのですが、
あいにく案内された9月の日程は、都合がつかず、なんとも残念至極。。。

エストニアに、ご関心ある方は・・・
www.beneasiacapital.com


     平成30年(2018年)8月
                山  崎  泰 


◎ホンネで綴る『山崎 泰 “ズッこけ”デイリーブログ!』
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