中東で、中国で、日本で何が起きているのか?---今月のメッセージ(3月号)
2011年3月7日05:18:00
中東で、中国で、日本で何が起きているのか?
→行き詰まりつつある日本への処方箋は?
先日、経営者が集まる社長講座に講師として出向きました。今起きている「経済のこと」「経営のこと」「税金のこと」 を、忌憚なく率直に話して欲しいとのご依頼でした。
◆中東で、中国で何が起きているのか!
中東で起きているのは、強権的な政府VS 民衆という構図。
まさに将棋倒しのように、この構図が急速に広がっているのです。世界経済の不安定化の要因でもあり、90%以上の原油を中東に頼っている日本にとって、決して対岸の火事ではありません。
かかる民衆の蜂起は、「高失業率」と「腐敗」が重ねれば、どこでも火がつく可能性があるように思います。
エジプトでデモが勃発した時、いち早くエジプトからの情報を遮断したのは、他ならぬ中国とイラン。何をか言わんや---といった感じです。
中国の失業率は、表面的には5%。
しかしながら、民族問題をも抱える中国で火がつけば、政府が力づくでも民主化を押さえ込む危険性も指摘されているくらいです。
13億人といわれる中国から日本への難民希望は、少なくとも10%、多ければ30~40%とも言われており、台湾とともに日本にとっては難民問題も深刻な事態。
世界首脳の関心は「中東危機」⇔日本の関心は「北方領土・TPP・国内政治」などといわれないようにしなければ---。
◆日本で、何が起きているのか!
社長講座の参加者から、日本財政が破綻するのでは---という切迫した質問が事前にメールで寄せられました。
そこで、簡略にこんな計算式を紹介しました。
日本の個人金融資産1,400兆円-住宅ローン等の負債400兆円=約1,000兆円
国債残高663兆円+地方債199兆円=約862兆円
1,000兆円-862兆円=138兆円
138兆円÷44兆円=約3年しかもたない。
もちろん、44兆円(予算規模92兆円-税収38兆円-埋蔵金等10兆円)は昨年の赤字国債発行額です。
財政支出が、内需拡大につながっていない現実があります。例えば、国債発行→子ども手当→貯蓄→金融機関→国債引受というような循環。
国民は直接的には国債を買っている意識はなくても、金融機関が国債を引き受けているのです。要は、国民の預金で金融機関は国債を買っているのです。結果的には、個人貯蓄が赤字国債に吸い上げられているという構図なのです。
この点に、気づいて頂きたいのです。
◆では、日本に何ができるのか?
講演のなかで忌憚なく率直に指摘し、講演後の懇親会でも大いに熱く盛り上がったものの、では今、私たちに、日本に出来ることは何なのか、という答えを提示できないもどかしさを抱えながら、帰途に着きました。
そんな中、長年お世話になっている行徳哲男先生、そして芳村思風先生の話を伺う機会があったのです。
行徳先生の話はもとよりですが、芳村思風先生の話は、その答えを見つけるうえで示唆に富む内容でした。
今の日本には、経済革命・政治革命・社会革命が求められている、との指摘でした。
≪経済革命≫
企業を、「競争原理」から「創造原理」に変えていかなければならない。
企業は、外に向けた競争にばかりエネルギーを使うことからそろそろ脱しなければならない。
むしろ企業の自己変革・自己創造・自己変身等といった、時代の流れを読む先見力を磨き、自身が変化を創り出していく、いわば内向きにエネルギーを使うことが大事。
確かに今の日本企業を見ても、同じ市場のパイを争う経済競争には限界を感じます。消費者の要望にいかに的確に応え、さらに消費者すら知らない未来を創造・提示していくことが求められているのでしょう。
≪政治革命≫
政治を、「政党政治」から「合議政治」に変えていかなかればならない。
近代政治は、政党政治だった。しかし、いつまでも政党が政治を動かすという時代は終わりつつある。政党がある限り、政権闘争、醜い政治はなくならない。
一人一人の政治家が、全国民のための代表者として努力する時代に入るべき。
“脱政党”そして“政党のない政治”が、新しく求められる政治。
確かに、昨今のこれでもかというほどの政権・権力闘争、その挙句の国会停滞を見ていると、政党政治の限界を感じざるを得ません。
大阪府や名古屋市などで起こりつつあるうねりを見ると、 多くの国民が、“政党のない政治”への胎動を感じておられるのだと思うのです。
≪社会革命≫
社会を、「民主主義社会」から「互敬主義社会」に変えていかなければならない。
民主主義には、権利を主張する人が得をし、主張しない謙虚な人が損をするという実態がある。
不完全な人間同士が権利を主張し合ったら地獄。お互いに不完全なことを認め合い、相互に許しあい、敬う社会にしていくことが、日本の役割。
確かに、結婚生活を振り返っただけでも、権利を主張し合ったら---地獄というのは、身にしみて分かります!
そうすれば、経済も「資本主義経済」から「人格主義経済」へと変わっていく。
カネのために働く、資本主義経済の時代は終わった。カネのために働くから、人間が不幸になる。
カネ(経済)のために人があるのではない。
人のために、経済がある。
人と経済との接点が「労働」。だから「労働」の価値とは、仕事をする人が、人に喜んでもらえるような能力と人間性を持った本当の人間になること。「職業」とは、人を幸せにすることによって、その代償を得る行為であることを忘れずに。
当社も、3月そして4月と新しい社員を迎えます。
一つひとつの職場が人格形成の場となって、ひいては行き詰まりつつある日本をも変えていきたいものです。
平成23年(2011年)3月 |