『トランプの黒幕』~日本人が知らない共和党保守派の正体~
■ チキンレースの様相をみせる米国vs北朝鮮
4月8日、『米国が米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」を中心とする空母群を朝鮮半島近海に航行』との報道以来、かつてなく米国と北朝鮮との緊張感が高まっています。
トランプ大統領は、4月13日のツイッターでも、挑発的な核・ミサイル開発を繰り返す北朝鮮への圧力強化をめぐり、「中国がうまく北朝鮮に対処するとの強い自信を持っている」と中国への協力を求める一方で、「中国ができなければ、米国が同盟国とともにやる!」ともツイッターでつぶやき、不気味なくらい、その本気度合いが伝わってくるのです。
同日のBS日テレ「深層NEWS」でも、防衛問題に精通する与野党の論客が北朝鮮情勢を議論。
石破茂・元防衛大臣
「北朝鮮が米国本土まで届くミサイルに核を搭載する能力を持つまでに、米国は叩くなり除去するなりの判断を行うだろう」
前原誠司・元外務大臣
「中国は、米国東海岸まで届くミサイルと核弾頭が合わされば米国は軍事行動を起こすだろうと判断している。
中国が武力衝突回避のために、北朝鮮を説得するかどうかがポイント」
そんな議論を聞いていると、シリアならぬ東アジアでの出来事だけに、自ずと日本としての緊張感も高まってきます。
(つづく)
4月8日、『米国が米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」を中心とする空母群を朝鮮半島近海に航行』との報道以来、かつてなく米国と北朝鮮との緊張感が高まっています。
トランプ大統領は、4月13日のツイッターでも、挑発的な核・ミサイル開発を繰り返す北朝鮮への圧力強化をめぐり、「中国がうまく北朝鮮に対処するとの強い自信を持っている」と中国への協力を求める一方で、「中国ができなければ、米国が同盟国とともにやる!」ともツイッターでつぶやき、不気味なくらい、その本気度合いが伝わってくるのです。
同日のBS日テレ「深層NEWS」でも、防衛問題に精通する与野党の論客が北朝鮮情勢を議論。
石破茂・元防衛大臣
「北朝鮮が米国本土まで届くミサイルに核を搭載する能力を持つまでに、米国は叩くなり除去するなりの判断を行うだろう」
前原誠司・元外務大臣
「中国は、米国東海岸まで届くミサイルと核弾頭が合わされば米国は軍事行動を起こすだろうと判断している。
中国が武力衝突回避のために、北朝鮮を説得するかどうかがポイント」
そんな議論を聞いていると、シリアならぬ東アジアでの出来事だけに、自ずと日本としての緊張感も高まってきます。
(つづく)
■ 「トランプの黒幕~日本人が知らない共和党保守派の正体~」
米国大統領が代わることで、これほどまでに大きく世界情勢が変わるのか!
TPPはじめ、良くも悪くも有言実行の姿勢が伝わってくるトランプ大統領は、
果たしてどこまで本気なのだろうか?
そもそもトランプ大統領って、どんな思想信条を持っているのだろうか??
日本、中国、北朝鮮も位置する東アジアを、どう見ているのだろうか???
米国の北朝鮮制裁に対する緊張感の高まりとともに、そんな疑問や不安が募ります。
その背景には、あまりにもトランプ大統領の正体を知らないこともあるように思うのです。
まさにそんな折・・・この10年来、私の選挙・政策ブレーンとして知恵袋となって支えてくれた、
同窓の後輩でもある渡瀬裕哉氏(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員)が、一冊の本を出版。
タイトルは、『トランプの黒幕~日本人が知らない共和党保守派の正体~』。
そもそも昨年の米大統領選において、安倍首相はじめ多くの日本人が
「トランプ敗北・ヒラリー勝利」との誤ったシナリオを妄信してしまった原因・・・
日本人が知らないトランプ大統領を生み出した真の姿に迫った内容です。
■ 日本人が気づかないうちに・・・米国で起きている大きな地殻変動!
トランプ大統領を誕生させた支持層は
「白人・低所得・低学歴・ブルーカラー」等々、客観的データに基づかない、
バイアスのかかった報道が日本で広くなされてしまったのは・・・
『米国共和党に関する基本的な知識、とりわけ共和党内で存在感を強めている共和党保守派の重要性が、
日本では十分に認知されていないことにある』と、著書の冒頭で指摘。
日本の既存のメディアや有識者の情報源が、
米国の左寄りの勢力、すなわち大手メディア、大学の有識者、それらに親和的なワシントン政治関係者など、
いわゆるリベラルな米国民主党寄りの既得権者層に依存し過ぎてきたために、
日本では米国共和党保守派に関する報道・情報がほとんど存在していないと、日本での現状を記しています。
多くの日本人が気づかないうちに、大統領選挙を通じて米国で起きている大きな地殻変動・・・
「民主党から共和党への政権交代」に止まらず、
「共和党内での主流派から保守派への勢力交代」という、
いわば『二重の政権交代』が起きているというのです。
■ 「共和党保守派」を知らずして“トランプ政権”は理解できない
渡瀬氏は、「共和党保守派」について、このように説明しています。
米国は、英国による植民地支配から自由を求めて独立した人々の国であり、
合衆国憲法は、三権分立などの基本な事項を定めた条項と、
自由主義的な諸権利を定めた修正条項によって成り立っている。
共和党保守派とは、憲法に定められた人々の権利を教条主義的に守ろうとする傾向があり、
米国における護憲派と捉えると分かりやすい。
日本では護憲派というと左派・革新勢力を意味することが多いが、
米国では右派・保守派が護憲勢力なのである。
オバマケアのような、ワシントン主導の制度が導入され、
広く米国民に財政的負担や社会的負担を強いることは、
財産権の保障に重きを置く共和党保守派の立場からは、
受け入れがたい政策ということになるのでしょう。
また、合衆国への忠誠を果たさない不法移民の排斥に関して、
日本人からみると“そこまでしなくても”と思えるような厳しい対応も・・・
教条主義的な米国護憲派からすると、
不法移民に対する容認的な政策態度こそが、
憲法を守る立場からは受け入れがたいのでしょう。
トランプ政権の方向性をひもとく渡瀬氏の分かりやすく痛快な説明は、
「なるほどな~~」と膝を打つ場面が多く、もっともっとご紹介したいのですが・・・
あまりご紹介し過ぎると、本の売れ行きに影響が出てもいけないので???
あとは実際の著書に譲りたいと思います。
■ トランプ政権の東アジア政策
渡瀬氏には許していただいて・・・
どうしても気になるトランプ政権の東アジア政策について、最後にふれたいと思います。
ティラーソン国務長官が、上院外交委員会公聴会での施政方針で、
ロシアやISISよりも中国に対する脅威を先に記していたことに、
トランプ政権の東アジア政策が象徴されると、著書で指摘しています。
商務長官・国家通商会議・通商代表部・国家安全保障会議・
アジア上級部長・駐中国大使・駐日本大使などの政権人事をみても、
近年稀にみるほどのアジア重視の政権だというのです。
人事シフトをみてみると、
トランプ政権がTPPなどの多国間交渉でアジア問題に対応しようとするのではなく、
あくまでも二国間交渉で問題解決にあたる姿勢を、同時に示しているともいうのです。
さらに驚いたのは、大統領選直後に、中国の核心的利益である台湾問題に関して、
トランプ氏が、長年暗黙の了解となっていた「一つの中国」に無条件ではコミットしないとする発言!
東アジア政策の要でもある中国に対しては、
主要閣僚には対中強硬派を据えつつ、その裏では習近平国家主席を主眼に置いた対中人脈を構築する人選をするという・・・
「常に硬軟併せ持ちながら“取引”を重視する、トランプ流の経営スタイル」と、
トランプ政権の外交政策は大いに整合すると、渡瀬氏は捉えています。
■ 緊張感の高まりは、対北朝鮮ならぬ対中国
「常に硬軟併せ持ちながら“取引”を重視する、トランプ流の経営スタイル」
という視点の延長線で考えると、今の北朝鮮とのチキンレースも、
少しはひもとけるかもしれません。。。
朝鮮半島近海ギリギリまで空母艦隊を集結させて、
徹底した強硬策を取り続ける。
北朝鮮が混乱・崩壊することにより、
在韓米軍と隣接することになることをもっとも嫌い、
恐れる中国を、北朝鮮との交渉の場に引き出す。
さらには、中国のみならずロシアをも北朝鮮カードの中で外交に引き出していく。
最後の最後に、北朝鮮との緊張感というカードを、中国とのどのような“取引”をもって収めていくか・・・
実は緊張感が高まっているのは、対北朝鮮ならぬ対中国のようにも思えてきます。
北朝鮮を外交カードに、トランプ政権のしたたかなアジア政策、
いやアジア各国との“取引”が始まっているのかもしれません。
平成29年(2017年)4月
山 崎 泰
米国大統領が代わることで、これほどまでに大きく世界情勢が変わるのか!
TPPはじめ、良くも悪くも有言実行の姿勢が伝わってくるトランプ大統領は、
果たしてどこまで本気なのだろうか?
そもそもトランプ大統領って、どんな思想信条を持っているのだろうか??
日本、中国、北朝鮮も位置する東アジアを、どう見ているのだろうか???
米国の北朝鮮制裁に対する緊張感の高まりとともに、そんな疑問や不安が募ります。
その背景には、あまりにもトランプ大統領の正体を知らないこともあるように思うのです。
まさにそんな折・・・この10年来、私の選挙・政策ブレーンとして知恵袋となって支えてくれた、
同窓の後輩でもある渡瀬裕哉氏(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員)が、一冊の本を出版。
タイトルは、『トランプの黒幕~日本人が知らない共和党保守派の正体~』。
そもそも昨年の米大統領選において、安倍首相はじめ多くの日本人が
「トランプ敗北・ヒラリー勝利」との誤ったシナリオを妄信してしまった原因・・・
日本人が知らないトランプ大統領を生み出した真の姿に迫った内容です。
■ 日本人が気づかないうちに・・・米国で起きている大きな地殻変動!
トランプ大統領を誕生させた支持層は
「白人・低所得・低学歴・ブルーカラー」等々、客観的データに基づかない、
バイアスのかかった報道が日本で広くなされてしまったのは・・・
『米国共和党に関する基本的な知識、とりわけ共和党内で存在感を強めている共和党保守派の重要性が、
日本では十分に認知されていないことにある』と、著書の冒頭で指摘。
日本の既存のメディアや有識者の情報源が、
米国の左寄りの勢力、すなわち大手メディア、大学の有識者、それらに親和的なワシントン政治関係者など、
いわゆるリベラルな米国民主党寄りの既得権者層に依存し過ぎてきたために、
日本では米国共和党保守派に関する報道・情報がほとんど存在していないと、日本での現状を記しています。
多くの日本人が気づかないうちに、大統領選挙を通じて米国で起きている大きな地殻変動・・・
「民主党から共和党への政権交代」に止まらず、
「共和党内での主流派から保守派への勢力交代」という、
いわば『二重の政権交代』が起きているというのです。
■ 「共和党保守派」を知らずして“トランプ政権”は理解できない
渡瀬氏は、「共和党保守派」について、このように説明しています。
米国は、英国による植民地支配から自由を求めて独立した人々の国であり、
合衆国憲法は、三権分立などの基本な事項を定めた条項と、
自由主義的な諸権利を定めた修正条項によって成り立っている。
共和党保守派とは、憲法に定められた人々の権利を教条主義的に守ろうとする傾向があり、
米国における護憲派と捉えると分かりやすい。
日本では護憲派というと左派・革新勢力を意味することが多いが、
米国では右派・保守派が護憲勢力なのである。
憲法に定められた建国の理念を守ろうとする立場から、
「財産権の保障=減税」
「信教の自由=中絶反対」
「武器を保有・携帯する権利=銃規制反対」
など、自由主義的な政治思想を主張する共和党保守派の政治行動が生まれてくることになる。
米国を米国たらしめる根幹となる思想を共和党保守派は信奉しており、
その原理原則に反する妥協を他勢力との妥協によって行うことは難しい。
理念的なレベルでの政治思想の一致を求める政治集団が共和党保守派であり、
その行動原理を理解することで、初めてトランプ政権の方向性を理解することができるようになる。
「財産権の保障=減税」
「信教の自由=中絶反対」
「武器を保有・携帯する権利=銃規制反対」
など、自由主義的な政治思想を主張する共和党保守派の政治行動が生まれてくることになる。
米国を米国たらしめる根幹となる思想を共和党保守派は信奉しており、
その原理原則に反する妥協を他勢力との妥協によって行うことは難しい。
理念的なレベルでの政治思想の一致を求める政治集団が共和党保守派であり、
その行動原理を理解することで、初めてトランプ政権の方向性を理解することができるようになる。
オバマケアのような、ワシントン主導の制度が導入され、
広く米国民に財政的負担や社会的負担を強いることは、
財産権の保障に重きを置く共和党保守派の立場からは、
受け入れがたい政策ということになるのでしょう。
また、合衆国への忠誠を果たさない不法移民の排斥に関して、
日本人からみると“そこまでしなくても”と思えるような厳しい対応も・・・
教条主義的な米国護憲派からすると、
不法移民に対する容認的な政策態度こそが、
憲法を守る立場からは受け入れがたいのでしょう。
トランプ政権の方向性をひもとく渡瀬氏の分かりやすく痛快な説明は、
「なるほどな~~」と膝を打つ場面が多く、もっともっとご紹介したいのですが・・・
あまりご紹介し過ぎると、本の売れ行きに影響が出てもいけないので???
あとは実際の著書に譲りたいと思います。
渡瀬氏には許していただいて・・・
どうしても気になるトランプ政権の東アジア政策について、最後にふれたいと思います。
ティラーソン国務長官が、上院外交委員会公聴会での施政方針で、
ロシアやISISよりも中国に対する脅威を先に記していたことに、
トランプ政権の東アジア政策が象徴されると、著書で指摘しています。
商務長官・国家通商会議・通商代表部・国家安全保障会議・
アジア上級部長・駐中国大使・駐日本大使などの政権人事をみても、
近年稀にみるほどのアジア重視の政権だというのです。
人事シフトをみてみると、
トランプ政権がTPPなどの多国間交渉でアジア問題に対応しようとするのではなく、
あくまでも二国間交渉で問題解決にあたる姿勢を、同時に示しているともいうのです。
さらに驚いたのは、大統領選直後に、中国の核心的利益である台湾問題に関して、
トランプ氏が、長年暗黙の了解となっていた「一つの中国」に無条件ではコミットしないとする発言!
東アジア政策の要でもある中国に対しては、
主要閣僚には対中強硬派を据えつつ、その裏では習近平国家主席を主眼に置いた対中人脈を構築する人選をするという・・・
「常に硬軟併せ持ちながら“取引”を重視する、トランプ流の経営スタイル」と、
トランプ政権の外交政策は大いに整合すると、渡瀬氏は捉えています。
■ 緊張感の高まりは、対北朝鮮ならぬ対中国
「常に硬軟併せ持ちながら“取引”を重視する、トランプ流の経営スタイル」
という視点の延長線で考えると、今の北朝鮮とのチキンレースも、
少しはひもとけるかもしれません。。。
朝鮮半島近海ギリギリまで空母艦隊を集結させて、
徹底した強硬策を取り続ける。
北朝鮮が混乱・崩壊することにより、
在韓米軍と隣接することになることをもっとも嫌い、
恐れる中国を、北朝鮮との交渉の場に引き出す。
さらには、中国のみならずロシアをも北朝鮮カードの中で外交に引き出していく。
最後の最後に、北朝鮮との緊張感というカードを、中国とのどのような“取引”をもって収めていくか・・・
実は緊張感が高まっているのは、対北朝鮮ならぬ対中国のようにも思えてきます。
北朝鮮を外交カードに、トランプ政権のしたたかなアジア政策、
いやアジア各国との“取引”が始まっているのかもしれません。
平成29年(2017年)4月
山 崎 泰