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カンヌライオンズ2016から、世界の最新広告コミュニケーション事例のご紹介。その1

16.10.28
ビジネス【マーケティング】
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カンヌライオンズ(旧カンヌ国際広告祭)は世界最大級の広告賞です。

その受賞作は、現在の広告界/マーケティング界の現状を如実に反映し、大きな影響力を与えています。 

今年で63回目を迎えたカンヌライオンズは全体で24部門を数え、90ヵ国以上から総計4万3,101点の作品が集まりました。

その中でも複数受賞した話題作を中心に、3つの視点から、4回にわたってレポートしていきます。
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今年の作品を解説する前に、ここ数年の作品に見る主なコミュニケーションプラン傾向を2点ご紹介します。

1点目は、“ソーシャルグッド”。

広告やブランドを通して社会に良いことをすることで、そのブランドの価値を高めるというやり方です。

2点目は、“行動で示して拡散”。「Telling からDoingへ」とも言われます。

ブランドの主張を声高に「語る」のではなく、なんらかの「行動」で示して、SNSでの拡散やニュース等で取り上げられることを目指すやり方です。 

これに対して今年の特徴としては、以下の3点が挙げられます。

(1)“現実世界での実験”を大掛かりな形で行ったもの
(2)データ&テクノロジーの、身体化・実体化
(3)デジタル時代だからこその“超アナログな実感訴求”
 

まずは、(1)から見ていきましょう。これは“行動で示して拡散”の進化版と見ることができます。

従来の作品は、10~20人の一般人を招いての、いわば"密室での実験"的な広告が多かったのに対して、今年の話題作は、大掛かりな"現実世界での実験"が目に留まりました。 

チタニウム部門グランプリ、プロモ&アクティベーション部門グランプリ他多数受賞した「REI」という米アウトドア用品店の「#OptOutside」が、その典型例です。 

アメリカには、日本で言えば年始1月2日・3日の「初売り」に相当する、「ブラックフライデー(黒字になる金曜日)」と呼ばれる年末買物商戦の激戦日があります。


この激戦日に、REIはなんと全143店を休業にし、1万2,000人の従業員たちに「アウトドアに出掛けよう」と呼びかけました。

「われわれはアウトドアライフを大事にする会社だ。自ら行動で示そうじゃないか」というわけです。

このREIの行動は多くの消費者に衝撃を与え、テレビ番組で取り上げられ、SNSでも拡散されました。 

また、メディア部門グランプリ、プリント&パブリッシング部門グランプリ等を受賞した「バーガーキング」の「McWhopper」(マックワッパー)も、“行動で示して拡散”の特徴を持った受賞作です。 

バーガーキングでは自社のハンバーガーをWhopper(ワッパー)と呼びます。

バーガーキングは、9月21日の国際平和デー(Peace One Day)に合わせて、ライバルの「マクドナルド社」に対して、「その日だけはハンバーガー戦争を休止し、ビッグマックとワッパーを合わせた“マックワッパー”を2社共同で販売しないか」と新聞広告で呼びかけたのです。

バーガーキングはマックワッパーを販売する際のパッケージや店員のユニフォームまで用意しましたが、マクドナルド社の答えは「No」。

ところが消費者がこれに反発。

自分たちでビッグマックとワッパーを購入して「自家製マックワッパー」を作製し、次々とソーシャルメディアに投稿して大評判になりました。

結果、消費者のバーガーキング商品への購入意向は25%増加したそうです。

こちらも、大掛かりな"現実世界での実験"と言えるでしょう。 

次回は「カンヌライオンズ2016から、世界の最新広告コミュニケーション事例のご紹介。その2』をお届けします。



佐藤達郎のマーケティング論 

[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 


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