コーディアル人事労務オフィス

「女性はひとくくり」がそもそもの問題?

16.03.11
ビジネス【人的資源】
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リーマン・ショックからもう8年。日本のリーマン・ブラザーズ證券株式会社で営業職として働いていた30歳の日本人女性の話です。

社員たちは一夜にして国際的大金融会社の職を失いましたが、その人たちを引き取ろうという企業も現れました。野村證券もその1つでした。 

野村證券の担当者が来て、リーマンの社員を集めて説明会を開きました。

そのとき、ひと握りの女性社員のいることに気付いた野村マンが、「わが社は女性も大歓迎ですから…」と特別に声をかけました。それを聞いたリーマン女子は、野村には行かないことを決めたそうです。

なぜかと言うと、リーマンでは、「女性」というくくりはなかったからです。「女性を大切にする」というのは、女性差別の第一歩でもあるのです。
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<日本的経営のウィークポイント> 

日本の企業が長年、当たり前のように考えて成功要因と過信してきたのは、「人を大切にする」という終身雇用コンセプトです。現在のように変化が激しい時代、経営の採算に合うはずがありません。

人を大切にするあまり、大切にしきれない人もいました。それを大くくりにすると、女性と外国人です。

企業の規定の中には、「女性」という言葉も「外国人」という言葉もありません。けれども仕事の種類や昇進・昇格ラインに乗るかどうかの目に見えない選別があるのです。 

はっきりした色分けは、正社員と非正社員で、今日増加する「非正規雇用」が問題になっています。このなかには女性が多いのも特徴です。社会全体の中の女性というくくりがあります。しかし、ここではさらに、正社員の中の女性というくくりを問題にしたいと思います。 

<日本の文化?> 

今、日本政府が国際的に突きつけられている問題があります。

「なぜ、日本では女性の天皇を認めないのか」「なぜ、日本では夫婦別姓がいけないのか」。

いずれも、先進国のみならず世界の国々の標準をクリアしていません。もっとも中東のイスラム系の国々では女性の地位が違いますから、日本でも文化の違いをあくまでも主張するのでしょうか。 

こう考えると、女性に関する問題は根が深いです。どうすれば目に見えない選別がなくなるか、企業としてもいま一度考える時期に差し掛かったといえるでしょう。 


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


[記事提供] 

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