コーディアル人事労務オフィス

患者情報共有のメリット

15.12.04
業種別【医業】
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医療ジャーナリスト・福原麻希さんの著書「チーム医療を成功させる10か条~現場に学ぶチームメンバーの心得」に掲載されていた、抗がん剤治療で大学病院に入院中のある患者さんの話です。
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副作用の嘔気が強く、強い船酔いにかかっているような状態で、寝ているだけで精一杯。ベッドサイドに、担当看護師が来て「お食事、食べられましたか」と訊いたので、患者さんは昼食も朝食も食べられなかったと話しました。 

次に回診の医師が同じことを訊き、その後、薬剤師、食事管理担当の別の看護師、管理栄養士と、合わせて5人のスタッフが別々にベッドサイドに現れて同じことを訊いていったそうです。嘔気に悩まされながらも同じことを答えた患者さんは、5人目の管理栄養士が帰ったあとに、たまらず枕をドアに投げつけたとか。

最後の管理栄養士が「では、医師や看護師と相談して夕食を止めますね」と言って去っていったのに、夕食には鶏肉のソテーが出てきたというオチまでついたそうです。 

ご存じの通り、チーム医療はひとりの患者さんに多職種でかかわることが要諦なのですが、このエピソードのように、スタッフ間の情報共有がうまくいっていないと、単なる「たらい回し」になってしまいます。情報共有をシステム化せず、スタッフ間の個人的なコミュニケーション任せにしていると、漏れも生まれるし、スタッフ間の個人的な人間関係が、情報共有の質を左右することになってしまうのです。 

ではもうひとつ、こちらは最近、著者の身近に起こったクリニックの事例をご紹介しましょう。 

脚のけがで整形外科クリニックに通院している患者さんが、院内のリハビリ室での電気治療を受けることに。院長が「できれば毎日でもよい、なるべく頻繁に通ってほしい」と言うので、週2~3回通うこともあったそうです。

ところが、担当の理学療法士に「痛いのはどちらの脚ですか?」「どの辺が痛いのですか?」と毎回同じことを訊かれる。「このクリニックはカルテも見ずに治療するのか?」という不信感から、「治療の意味があるのかわからなくなって」通院をやめてしまいました。 

院長がカルテという基本的な患者情報をスタッフと共有していないことが問題でした。患者の不信感を招くだけでなく、医療スタッフを単に医療機器の操作者として扱うことにもなります。スタッフは目の前の患者さんに医療者としてかかわれず、成長のチャンスをも奪いかねません。モチベーションにも影響しそうです。 

患者情報の共有はチーム医療の根幹です。情報共有のシステム化は患者満足度だけでなく、スタッフのモチベーション向上にもつながることが期待されます。


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[プロフィール] 
中保 裕子(なかほ・ゆうこ) 
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。  
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