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隣家から延びてきた木の枝は、勝手に切ってもよい?

24.06.11
ビジネス【法律豆知識】
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隣家から越境してきた木の枝は、これまでは木の持ち主に切ってもらうか、訴訟による強制執行しか対処する方法がありませんでした。
しかし、2023年4月の民法改正により、一定の条件のもと、みずから切ることができるようになりました。
改正に至った背景や切り取ることができる条件、そして切り取る際に注意する点について解説します。
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所有者不明土地の増加が改正のきっかけに

隣家との土地にまつわる問題は、昔からよくあるご近所トラブルの一つです。
隣家の土地との関係に関する取り決めを、民法では『相隣関係(隣り合った土地や建物の所有者相互間の関係)』といいます。
2023年4月の民法改正前までは、隣から越境してきた竹木の根については切り取ることが可能でしたが、枝については勝手に切ることはできず、その竹木の所有者に切ってもらうか、訴えを起こして切除を命ずる判決を得て、強制執行の手続きをとる必要がありました。
そのため、所有者の協力が得られる場合はよいのですが、所有者の協力が得られない場合や空き地などで所有者の所在が不明な場合は、時間と費用のかかる法的手段を講じる必要がありました。

しかし、2023年4月1日に民法が改正され、一定の条件を満たせば、越境された土地の所有者が枝をみずから切り取ることができるようになりました。
この改正の背景としては、近年、所有者不明土地が増加していることがあげられます。
所有者不明土地は相続登記がされないことなどにより発生しますが、これは相続登記の申請が義務ではなかったこと、また都市部への人口移動や人口減少、高齢化の進展などにより、地方を中心に土地の所有意識の希薄化や土地を利用したいというニーズが低下したことが要因と考えられています。
こうした所有者の所在などが不明な土地の場合は、土地が管理されず放置されることが多いことから、隣接する土地への悪影響が問題視されていました。
特に日本では今後も高齢化が進展し、ますます問題が深刻化するおそれがあり、所有者不明土地問題の解決は喫緊の課題とされ、2023年4月の民法改正もこうした流れを受けています。
法的な規制の緩和が必要とされたのは、土地所有者がより迅速にこれらの問題に対処できるようにするためといえるでしょう。

所有者が応じない、不明の場合は伐採可能に

2023年4月1日の民法改正で、越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させる必要があるという原則を維持しつつ、次のいずれかの場合には、枝をみずから切り取ることができるようになりました。

1.竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
2.竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
3.急迫の事情があるとき(台風などで枝が折れ、除去しないと危険な場合など)

なお、「相当の期間内」とは、越境した枝を切り取るために必要な時間的猶予を与えるというものであり、事案によりますが、2週間程度と考えられています。

上記のケースに該当し、越境された土地の所有者が枝をみずから切り取った場合の費用については、枝が越境して土地所有権を侵害していることや、土地所有者が枝を切り取ることで竹木の所有者が本来負うべき枝の切除義務を免れることなどから、異なる慣習などがない限り原則として、竹木の所有者に請求可能と考えられています。
また、他人の土地に勝手に入ることをためらう人も多いかと思いますが、該当する場合は越境した枝を切り取るのに必要な範囲で、隣地を使用することができるとされています。

なお、上記のケースに該当する場合でも、行政に依頼し、代わりに切ってもらうことはできません。
樹木の越境については、基本的には民事(相隣関係)の問題であるためです。
みずから枝を切る権利が認められたとはいえ、特定の条件下でのみ認められていること、切除作業は隣地に不必要な影響を及ぼさないよう慎重に行う必要があることには注意が必要です。
自分での判断がむずかしい場合、新たなご近所トラブルを避けるためにも、この分野に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

民法改正により、越境してきた木の枝について、竹木の所有者にお願いしても2週間以上対応してもらえない場合は、自分の判断で切ることができるようになりました。
所有者不明で誰に伐採を頼めばよいかわからない場合などに有効です。
樹木を所有している場合は、隣地に枝や根が越境して侵入することのないよう、管理に気をつけるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。