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相続登記の申請に必要な戸籍謄本の『広域交付制度』がスタート

24.04.30
業種別【不動産業(登記)】
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不動産を相続した際に行う相続登記の申請には、相続を受ける相続人と、亡くなった被相続人の戸籍謄本が必要になります。
これまで戸籍謄本は本籍地の市区町村の役所に請求する必要があり、本籍地が遠方にあるケースなどでは請求に手間がかかりました。
しかし、戸籍法が改正され、2024年3月1日からは本籍地ではない役所でも戸籍謄本を請求できる『広域交付制度』がスタートしました。
相続登記が便利になる広域交付制度の概要や、利用方法などを説明します。
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不動産の相続登記の際に必要になる戸籍謄本

不動産の相続には、複数の相続人が話し合って相続財産を分割する『遺産分割協議による相続』や、法律で定められた割合に沿って分割する『法定相続分の相続』、亡くなった被相続人が残した『遺言書による相続』などのパターンがあります。
相続登記の手続きには戸籍謄本が必要になります。
揃えなければいけない戸籍謄本は、『被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本』と、『相続人全員の現在の戸籍謄本』です。
なお、公正証書遺言による相続登記の場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は、公正証書作成時に確認しているので、不要です。

戸籍謄本は『戸籍全部事項証明書』や『全部事項証明書』などとも呼ばれ、これまでは本籍地のある市区町村でそれぞれ管理されていたため、発行してもらうためには本籍地の市区町村の役所で請求するか、郵送で請求する必要がありました。
本籍地が遠方にある場合はわざわざ役所まで出向かなければならず、郵送で請求する場合も、戸籍証明等交付申請書、本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒と切手を揃えて役所に送る必要があり、非常に手間がかかりました。

さらに、相続人の現在の戸籍謄本だけであれば、それほど取得はむずかしくありませんが、すでに亡くなっている被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めるのは、大変な労力を伴う可能性があります。

戸籍は婚姻や家督の相続、養子縁組や転籍などによって新しく作られます。
生まれてから死去するまで本籍地が変わっていなければ戸籍謄本の請求は1カ所で済みますが、もし、婚姻や転籍などで本籍地の変更があった場合には、被相続人が死去した時点からさかのぼって、生まれた時点までのすべての戸籍謄本を各市区町村の役所に請求しなければいけません。

相続登記の際に、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になるのは、すべての相続人の存在を確認するためです。
相続人となる親族の存在をすべて確認するという目的のため、特定の個人を証明する戸籍抄本ではなく、戸籍に記載されている全員について証明する戸籍謄本のほうが必要です。
たとえば、古い戸籍謄本を取得したことによって、親族の知らなかった婚姻外の子や養子が発覚し、相続人が増えるといったケースもあります。

広域交付制度で戸籍謄本の請求が便利に!

2024年3月1日に施行された『戸籍法の一部を改正する法律』に基づく『広域交付制度』によって、本籍地ではない最寄りの市区町村の役所などでも、戸籍謄本を請求できるようになりました。
さらに、必要な戸籍の本籍地が全国各地にある場合でも、1カ所の市区町村の役所の窓口でまとめて請求できます。

戸籍謄本の請求には、運転免許証やマイナンバーカードなど本人の顔写真付きの身分証明書と、発行にあたり1通につき450円の手数料が必要です。
除斥謄本の場合は、手数料が1通につき750円かかります。

広域交付制度は法務省の戸籍情報システムで各市区町村をつなぎ、データで戸籍謄本のやり取りを行うため、データ化されていない一部の古い戸籍謄本などは請求できません。
戸籍のうち、一部の事項を抜き出した『戸籍一部事項証明書』や、一部の人を抜き出した『戸籍個人事項証明書』」も請求できません。
広域交付制度で請求できるのは、戸籍謄本と除籍謄本(結婚や死亡、転籍などで記載されている人物が全員いなくなった戸籍)のみです。

また、広域交付制度では、本人の戸籍謄本以外に、配偶者や直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子や孫など)の戸籍謄本も請求できますが、兄弟姉妹、伯父伯母(伯父叔母)の戸籍謄本は取得できません。
死亡した夫または妻の戸籍を配偶者が請求する場合、婚姻後の戸籍のみ広域交付制度での取得が可能です。
子がいない場合の相続では、兄弟姉妹や伯父伯母が相続人になる可能性もあります。
その場合は従来通り、兄弟姉妹や伯父伯母にお願いし準備してもらうか、本籍地の市区町村の役所で戸籍謄本を取得することになります。

広域交付制度での戸籍謄本の取得は、個人情報保護の観点と役所の負担増への配慮から、本人が請求した場合のみに限られています。
司法書士や弁護士などの専門家に相続登記を依頼し、戸籍謄本の取得の依頼までした場合など、専門家による職務上請求については、広域交付制度は使えないため注意が必要です。
たとえば、広域交付制度で請求できる範囲の戸籍謄本を自分で取得し、広域交付制度で請求できない残りの戸籍謄本は専門家に依頼して、従来通りの方法で取得するといった方法も考えられます。

広域交付制度は新しく始まった制度で、対応範囲を限定しているところがあるため、ご利用の前に請求先の市区町村に確認することをおすすめします。

相続登記はケースによってかかる手間も異なるため、代理人に依頼する場合は、よく相談して進めるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。