コーディアル人事労務オフィス

需要に応じて価格調整!『ダイナミック・プライシング』の活用術

24.04.30
業種別【飲食業】
dummy
ホテルや旅館の宿泊料金は、休日が高くなり、平日は逆に安くなるのが一般的です。
このように、ホテル業界では需要に応じて価格を変動させる『ダイナミック・プライシング』という仕組みが導入されています。
最近では、飲食業界においても、このダイナミック・プライシングを導入する店舗が出てきました。
時間帯によって客足の振り幅が大きい飲食店は、ダイナミック・プライシングに向いているといわれています。
ダイナミック・プライシングのメリットと、導入する際の注意点を説明します。
dummy

機会損失を防いで利益を最大化する仕組み

飲食店には1日のなかでいくつかピークとなる時間帯があります。
立地や営業形態にもよりますが、昼から夜までの通し営業を行う店であれば、一般的に12時から14時くらいまでのランチ営業と、18時から21時くらいまでのディナー営業が最も混雑する『ピークタイム』です。
逆に、このランチ営業とディナー営業の間の空いている時間帯を『アイドルタイム』といいます。

商品やサービスの需要、時間帯などによって価格を変動させる『ダイナミック・プライシング』は、飲食店のピークタイムとアイドルタイムにおける機会損失を防ぎ、店の利益を最大化する仕組みとして注目を集めています。

飲食店にとって店がにぎわうのはありがたいことですが、繁盛し過ぎるとピークタイムに機会損失が発生する可能性があります。
たとえば、オフィス街にある飲食店であれば、企業の昼休憩が12時から14時くらいに集中しているため、ランチ営業は非常に店内が混み合います。
場合によっては長い行列ができる店もあり、混雑を避けるお客から敬遠されてしまったり、オペレーションがうまく回らずに回転率を上げられなかったりといった問題が生じます。

そこで、ダイナミック・プライシングを導入し、ランチ営業のメニュー価格を高く設定することで顧客単価を高めつつも、ピークを分散し混雑を緩和することができます。
一方、アイドルタイムに近づくにつれて、メニュー価格が低くなるように設定しておけば、ピークタイム以外の時間帯の来店数を増やすことにつながります。

ある店では、同じメニューであっても、価格を11時半から12時までは1,100円、12時から13時までは1,500円、13時から13時半までは1,000円、13時半から14時までは900円、14時以降は800円と設定し、客足の分散と利益の最大化を図りました。
ダイナミック・プライシングの導入で、これまで機会損失になっていた時間帯でも売上を上げられるようになったのです。

ダイナミック・プライシング導入時の注意点

ダイナミック・プライシングの基本は、需要の高いときに価格を高めに設定し、逆に需要が低いときには価格を低めに設定することにあります。
ピークタイムは高単価で利益を出し、アイドルタイムに近づくにつれ、今度は低単価でも来店数を増やすことで利益を出すというわけです。

お客にとっても混雑や待機時間を避けることができ、オフピークであれば安価で食事ができるというメリットのあるダイナミック・プライシングですが、導入にはいくつかの注意点があります。

ダイナミック・プライシングは店とお客の信頼関係のうえで成り立つという側面があります。
この信頼関係が構築されていない状態でダイナミック・プライシングを導入すると、お客に不信感を抱かせてしまう可能性があります。
ピークタイムにメニューの価格を高くしたことで、利益優先の店ととらえられてしまうおそれがあるうえに、近隣の相場よりも高ければ他店を利用してしまう可能性もあります。
「ピークタイムは割高な店」という印象がついてしまうのも、よくありません。

「他店では食べられない看板メニューがある店」や「大勢のファンがいる有名店」などは導入が成功しやすいといわれています。
一般的な飲食店であれば、「販売メニューが少ない店」も導入に適している傾向にあります。
新たに導入するのであれば、日替わり定食など、まずは一部のメニューに絞って始めてみることをおすすめします。

また、導入の際には価格の設定も慎重にならなければいけません。
価格の変動幅については、各時間帯におけるお客の来店数に基づいて、きちんと利益が出るように計算しなければいけませんし、場合によっては導入後も調整が必要になることがあります。
設定した価格次第では、値下げしたアイドルタイムの時間帯にお客が集中し混雑してしまうケースがあるからです。
どの価格帯が最適なのか判断するために、導入後も来店状況の変化をデータで蓄積しておくようにしましょう。

さらに、注文や会計などのオペレーションが煩雑になってしまっては本末転倒です。
ダイナミック・プライシングに対応しているオーダーシステムの採用なども検討しながら、設計を具体的に詰めていきましょう。

飲食店はピークタイムに全席が埋まっていたとしても、アイドルタイムがずっと空席のままでは、思うように利益を伸ばすことができません。
時間帯による客数の偏りをできるだけ少なくすることが飲食店経営のポイントになります。
うまく組み込むことができれば、客数の平準化と利益の最大化ができるダイナミック・プライシングの導入を考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。