コーディアル人事労務オフィス

職場の人間関係を円滑にする『QCサークル活動』の進め方

23.11.28
ビジネス【人的資源】
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製造業やサービス業などを中心に、『QCサークル活動』を取り入れる企業が増えてきました。
QCサークル活動とは、『小集団改善活動』とも呼ばれ、サービスの改善や品質管理の向上のために従業員が少人数でグループを組んで取り組む活動のことを指します。
QCサークル活動は品質管理の向上が主な目的ですが、副次的に職場のコミュニケーションを活発にし、人間関係を円滑にするというメリットもあります。
一方で、活動が従業員の負担になってしまうといったリスクもあります。
QCサークル活動を上手に進めるためのポイントについて解説します。
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日本企業に定着したQCサークル活動の効果

QCサークル活動のQCとは『Quality Control(クオリティコントロール)』の略で、日本語では『品質管理』と訳すことができます。
もともと、1950年代にアメリカの統計学者であるW・エドワーズ・デミング博士によって、基礎となる品質管理の考え方や統計的手法が提唱され、それらの概念が日本に伝わってからは、品質管理を向上するための活動として各企業にQCサークル活動が定着しました。

ビジネスにおけるQCサークル活動は日本企業だけに見られる活動で、日本製品の発展や世界への進出などに大きな影響を与えてきたといわれています。
たとえば、トヨタ自動車では1960年代から、技能系の職場単位でチームを組みながら、品質の改善や従業員の意識向上、さらにはチームワークの醸成などを目的にQCサークル活動が行われてきました。

昔からQCサークル活動に力を入れている企業がある一方で、QCサークル活動を廃止してしまった企業もあります。
理由は、QCサークル活動には従業員の自発性が求められるため、通常の業務に追われるなかで、惰性で取り組んでしまうようになったり、形骸化してしまったりといったことが起きるためです。
したがって、QCサークル活動を形骸化させずに進めるには、目標とするものを明確にすることが大切です。
目標がないまま漠然と取り組んでいるだけでは、成果を出すことができません。
現場に潜む問題を解決したいのか、それとも製造工程を効率化させたいのか、目標を明らかにしたうえで、参加者の目的意識やモチベーションを保つことが重要になります。

また、気をつけなければいけないのは、QCサークル活動を会社主導で行う場合です。
QCサークル活動には、従業員が自主的に行う自由参加のものと、会社主導のものがあり、会社主導で行う場合は活動時間が労働時間となり、参加者に給与が発生します。
QCサークル活動を自由参加としつつも、参加することが暗黙の了解となっていたり、参加が人事評価の対象となっていたりする場合も、労働時間とみなされる可能性があるため注意が必要です。

人材育成にもなるQCサークル活動の流れ

QCサークル活動を継続していけば、サービスの改善や品質管理の向上を図れると同時に、組織の団結力のアップにもつながります。
小集団改善活動とも呼ばれている通り、QCサークル活動は現場単位の5~10人ほどの少人数の従業員で行うのが一般的です。
上司と部下や同僚同士のコミュニケーションの場にもなるため、活動に取り組むうちに結束力が高まるといったメリットもあります。
また、部門や部署の垣根を越えた横断的なQCサークル活動であれば、普段は関わらない従業員とのコミュニケーションが生まれ、組織全体の活性化も期待できます。
活発な議論のなかから、サービスの改善や品質管理の向上を実現するための斬新なアイデアが生まれるかもしれません。
このような団結力の向上のほかにも、課題に取り組むなかで、従業員の問題解決能力や会社への帰属意識などの向上を図ることができます。

QCサークル活動を行うには、メンバーの選定が重要になります。
あくまで主となる目的は、サービスの改善や品質管理の向上なので、原則として同一の業務に携わる従業員や、共通のプロジェクトに関わる従業員を選定します。

続いて、目指すべき具体的な目標を細かく設定し、現状を把握したうえで改善のための検討を重ねていきます。
たとえば、ある製造業において従業員一人当たりの生産数の1割増を目標とした場合、現状の生産数を割り出し、削減できる工程はないか、作業時間は適正かなど、改善のための検討を行なったうえで実行していくという流れになります。

このように、QCサークル活動は共に一つの目標に向かって突き進んでいくため、仲間意識の醸成につながり、連帯感も生まれます。
生産性の向上や人材育成にも役立つQCサークル活動の導入を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。