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高齢者を雇用する企業は対応が必要! 『高年齢雇用継続給付の縮小』

23.09.12
ビジネス【労働法】
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一定の要件を満たす60歳から65歳までの雇用保険の被保険者の賃金が減少した際に雇用の安定を図るため、国から支払われる給付金を『高年齢雇用継続給付』といいます。
これまでもその給付額の縮小が行われてきましたが、2025年4月から再度縮小され、将来的には廃止することが決定しました。
高齢労働者が増えるなか、なぜ縮小されるのでしょうか。今回は、その理由と企業側の対応について解説します。
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2025年から給付額割合は最大15%から10%に

高年齢雇用継続給付は雇用保険法に基づく給付制度で、被保険者だった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者が対象になります。
対象となる被保険者は、会社から支給される賃金が下がった場合に、この高年齢雇用継続給付を受けることができます。

では、どのくらい賃金が下がったら、高年齢雇用継続給付の給付金が支給されるのでしょうか。
給付金を受け取ることができる受給資格が発生するのは、60歳のときまたは、60歳を超えて被保険者期間が5年以上となったときに会社から支給されていた賃金と比べて、今の賃金が75%未満となっている場合です。

たとえば、60歳時点の賃金が50万円で、62歳になった今の賃金が35万円だった場合、50万円の75%は37.5万円なので、給付の条件を満たしていることになります。
今の賃金が受給資格発生時の賃金と比べて75%を超えている場合は、給付金を受け取ることができません。

給付される額は、原則として受給資格が発生した後の各月に支払われた賃金の15%までです。
2025年4月1日からはこの割合が縮小され、原則10%になります。
ちなみに、賃金の低下率によって、10%を上限に支給率も変動します。
高年齢雇用継続給付が創設された1995年時点では、給付額が今の10%よりも多い25%でした。
2003年の法改正によって25%から15%に縮小されており、今回の見直しで、2025年からさらに10%に縮小されることになります。

なぜ、このように高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されていくのでしょうか。
そこには高齢者に対する就労環境が整備され、高齢者の雇用が安定しつつあるという背景があります。

理由は高齢者の就労環境が整備されたこと

高齢者の増加や労働者人口の減少などに伴い、日本ではこれまでにさまざまな高齢者の就業機会の確保や就業の促進などが行われてきました。
2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、

(1)70歳までの定年引上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約する制度
(5)社会貢献活動に継続的に従事できる制度
※(4)(5)は労使で同意したうえでの雇用以外の措置

以上のなかから、いずれかの措置を講じることを事業者の努力義務としました。
また、この改正前から、65歳までの雇用機会を確保するために高年齢者雇用確保措置を講じることが義務づけられています。
ほかにも、複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者に雇用保険を適用するセーフティネットの整備や、70歳未満で退職する高齢者へ事業者が再就職援助措置を講ずる努力義務など、高齢者の就業をサポートするための法整備が複数進められています。

こうした取り組みによって、昔よりも65歳以上の高齢者が働きやすくなり、高齢者の雇用を継続させるという目的で創設された高年齢雇用継続給付は役目を終え、縮小されることになったのです。

事業者としては、引き続き高齢者が安心して働ける環境の整備を行っていく必要があります。
まず、これまで高年齢雇用継続給付をふまえた賃金設定を行っていた企業は、「雇用形態によらない不合理な待遇差」を是正するための、基本的な考え方(職務の範囲、責任の程度など)をふまえて見直す必要があります。

2021年に施行された働き方改革関連法では、前年の大企業に続き、中小企業でも雇用形態に依らない不合理な待遇差の解消を求める『同一労働同一賃金』が定められました。
制度見直しの際には、高齢従業員の待遇が不公平にならないように注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。