コーディアル人事労務オフィス

一人でサロンを経営する際のメリットとデメリット

23.07.04
業種別【美容業】
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美容院のなかには、オーナーが一人で経営している一人サロンが少なくありません。
また、これまで従業員を雇用していたものの、店を縮小して一人の経営に戻るオーナーもいます。
これら、いわゆる一人サロンは資金面の負担が軽く、顧客に向き合った丁寧な接客ができるというメリットがあります。
一方で、「自分以外に代わりがいない」「一定数しか顧客を受け入れられない」「顧客の確保がむずかしい」などのデメリットもあります。
メリットとデメリットを交えながら、一人サロンを経営するうえでのポイントと注意点を説明します。
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一人経営なら開業・運転資金を抑えられる

厚生労働省が2023年1月19日に公表した『令和3年度衛生行政報告例』によれば、全国の美容院の店舗数は前年度から6,333店増の26万4,223店と、過去最高を記録しました。
また、『平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査について』によると、平成27年度末時点で「個人経営」している美容室は、調査対象の284店のうち252店(88.7%)でした。
さらに、従業員が経営者一人であるサロンは92店と、全体の約3割であることもわかりました。

一人サロンの一番のメリットは、開業のコストを抑えられることです。
複数の従業員を抱える大型サロンであれば、人件費や設備費、家賃などの固定費が高くなります。
店舗経営において積み重なる経費はリスクであり、開業したばかりであればできるだけ最小限に抑えなければいけません。

固定費の一つである家賃は、施術者が一人ならそのぶん小さい面積で済むため、大型サロンより安く抑えられます。
サロンを新規開業するには、地域ごとに定められている構造設備基準に基づいた保健所の認可を受ける必要があります。
たとえば、東京都目黒区で美容院を開業する場合、最低必要作業室面積は13 ㎡(3.93坪)以上で、美容イスは6台までに制限されており、1台増やすごとに3㎡追加しなければいけません。

ほかにもさまざまな要件がありますが、一人サロンの場合、最低限でワンルームマンション程度の広さがあれば、美容院を経営できることになります。
居住用賃貸マンションでは営業できませんが、店舗契約ができるSOHOタイプの物件なら営業可能です。
マンションで開業するとテナントを借りるよりコストを抑えることができ、美容イスやシャンプーユニットなどの設備費も最小限で済むというメリットがあります。

デメリットを理解して対策を考えておく

一人サロンにはほかにも、1対1で接客を行うため、顧客のニーズに合わせた丁寧な接客ができるというメリットもあります。
顧客それぞれが求める細かなサービスを提供することができれば、リピート率は高まるでしょう。

また、スタッフの採用や教育に時間を割かなくてよいのも大きな利点です。
大型サロンでは、採用活動や作業マニュアルの作成、新人教育など、美容師本来の仕事以外の業務が発生します。

多くの従業員を雇用するサロンでは、経営方針や労務関係をめぐるトラブルも起きがちです。
美容業界は美容師の約半数が勤めていた美容院を3年以内に辞めるといわれている、離職率の高い世界です。
長時間労働や待遇の悪さなど、離職の理由はさまざまあるなかで、職場の人間関係に悩んで辞める人も一定数存在します。
その点、一人サロンであれば人間関係についての心配もありません。

このようにメリットの多い一人サロンですが、デメリットもあります。
その一つが、一人経営ゆえに、施術できる顧客数が限られていることです。
厚生労働省の調査によれば、全国の美容業関連(エステやネイルなども含む)の店舗の一日平均客数は10人ほどですが、一人サロンでは10人を下回る可能性があります。
当然、収益に影響してくるため、将来的に事業の拡大を考えるのであれば、どこかのタイミングで美容師の雇用や広い店舗への引っ越しなどを視野に入れなければいけません。

また、自分以外に代わりがいないという問題もあります。
オーナー兼施術者である自分が怪我や病気などで休むと、収入がゼロになってしまいます。
長期休業すれば、顧客離れが起きてしまう可能性もあるでしょう。
そもそも、一人サロンは顧客の確保がむずかしいという問題があります。
独立前の店舗で複数の担当顧客がついていたとしても、開業後にそのまま自分のサロンの常連になってくれるとは限りません。
店舗の立地や知名度などから、大型サロンに比べると一人サロンは集客がむずかしく、PRに力を注ぐ必要があります。

一人サロンの経営を検討している場合、まずはこれらのメリットとデメリットを踏まえたうえで、店舗開発に臨むことが大切です。
すでに成功している一人サロン経営者から指南してもらうのもよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。