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カンヌライオンズ2014から、広告・マーケティングの最前線をレポート:その4

15.01.04
ビジネス【マーケティング】
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世界最高峰の広告系国際賞として知られ、毎年6月に南仏で開催されるカンヌライオンズ。
今年のキーワードの4つ目は「おバカ・パワー」です。

「えっ! おバカ・パワー?」と拍子抜けした方もいらっしゃるでしょう。
確かに今までの3つのキーワードが新しい傾向を示していたのに対して、広告における「おバカ・パワー」は昔からのものと言えます。
しかし、データ活用や行動喚起が進むこの時代でも、それでも「おバカ・パワー」は相変わらず強いのだ、という意味で取り上げたいと思います。
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佐藤達郎のマーケティング論

一つ目の代表的な例は、オーストラリアの銀行AZNの事例。
この銀行は「ゲイ=GAY(同性愛)に市民権を」という運動に賛成を表明し、そのことによって先進的な銀行であることをアピールしようと考えます。
何をしたか?
なんと同行のATM(自動預金機)を“G”A“Y”TM(ゲイTM)という呼び名に変え、カラフルな模様で色取りました。
ATMとGAYTM。ダジャレです。おバカです。
それでもこのおバカ・パワー全開の施策でイメージを大幅にアップしました。

二つ目の例は、アメリカのボディスプレーOld SpiceのテレビCM、MomSong。
若い男性向けの商品で“いい匂いで女性との交際を促進しよう”というもの。
このCMでは女性と交際し始めの男性が何人も登場。
女の子とデートを繰り広げるのですが、そのすべてのシーンにそれぞれのママが登場。
「可愛い息子が自分には目もくれずに女の子に夢中になっている、OldSpiceのせいで!」と嘆く歌を歌い継いでいきます。
時にレストランのお掃除オバサンに扮し、時にビーチの砂の中に身を潜め、時にクルマの後ろに引きずられ、まるでゾンビのように! くだらないんです。
でもそのおバカ・パワーに思わず笑わされ、商品の効能も覚えてしまいます。

三つ目の例は、ドイツで国際宅配サービスDHLが仕掛けた事例。
他の宅配サービスよりDHLは速い! と訴えるために、でかでかと「DHL IS FASTER」と書かれた身体ほどの大きさの荷物を用意。
“温度が低いと真っ黒になり温度が高くなると文字が現れる特殊な冷凍技術”を使って真っ黒な状態にしたこの荷物の配達を、競合の宅配サービスに依頼します。
依頼を受けた時は真っ黒な状態の荷物。
ところが運んでいるうちに文字が浮き出てきます。
結果として競合社の配達人が「DHL IS FASTER(DHLの方が速い)」と書かれた大きな荷物を、人目につく道路上で運ぶハメになるというもの。
もうほとんどドッキリ・カメラです。

さて、カンヌライオンズの事例、皆さまの参考にしていただけたでしょうか。
次回からは趣向を変えて、いま広告&マーケティング業界で話題の「コンテンツ・マーケティング」について、オンライン動画コンテンツを中心にご紹介していきましょう。


[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

[記事提供]

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